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【政経東北】自分の言葉で答えない知事|巻頭言2023.10

 内堀雅雄知事は、都合の悪い質問には自分の言葉で答えることをしない。既に分かり切ったことではあったが、最近起きた二つの出来事を通してその思いを強くした。

 一つはジャニーズ事務所の性加害問題。震災後、県は人気アイドルグループ「TOKIO」と連携し県産農林水産物のPR活動を展開してきたが、大手企業が所属タレントの広告起用を停止する中、県がどのように対応するのか注目が集まった。

 問題発生後、ある自民党県議は「これは知事マターだ」と語っていたが、最初にマスコミ取材にコメントしたのは風評・風化戦略室(スポーツ報知9月12日配信)。続いて農産物流通課が取材に応じ(河北新報同13日配信)、県としての「正式な考え方」が公表されたのは同15日だった。

 内堀知事がようやく口を開いたのは、それから10日後に開かれた知事定例記者会見。内堀知事はTOKIOを「家族」と表現したが、県政の重大案件について最初に現場がコメントし、そのあとに公式見解が出され、最後に知事が会見という流れは違和感がある。新CM発表会ではメンバーと並んで壇上に上がり、軽やかな口調で取材に応じる姿とは正反対だ。

 もう一つは8月24日から始まった汚染水(ALPS処理水)の海洋放出。この間、放出を決定した政府には厳しい物言いをせず「慎重に対応方針を検討してほしい」と繰り返すばかりだったが、放出後に県産海産物が広く応援されている話題には「オールジャパンで一緒に支え合う取り組みを是非やっていきたい」、中国から相次いだ放出をめぐる迷惑電話については「大変遺憾。政権幹部には早期の鎮静化を強く求めたい」と饒舌だった。

 「知事は海洋放出に賛成か、反対か」と自身の考えを問われても最後まで答えようとせず、国にお任せの姿勢をとってきた内堀知事だが、いざ放出が始まると、それに伴う風評被害には「しっかり対応してもらわなければ困る」と政府に言い放つのだからシラけてしまう。

 本誌昨年8月号で、ジャーナリストの牧内昇平氏が「内堀話法」についてリポートしているが、その記事を読み返すと都合の悪い質問には一切答えない姿があらためて浮き彫りになる。そんな内堀知事が、福島民報と福島テレビによる最新の県民世論調査では支持率76・5%を叩き出しているのだから、不思議でならない。

 政治家は言葉が命。内堀知事には都合の悪い質問にこそ自分の言葉で答えていただきたい。(佐藤仁)

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