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【高橋ユキ】のこちら傍聴席17|死体遺棄地と化す北関東・福島

 4月16日の午前8時ごろ、栃木県那須町の河川敷で「マネキンのようなものが燃えている」と同町に住む男性から通報があった。県警那須塩原署員が現場に駆けつけると、焼損した2名の遺体が見つかった。福島県から遠くないこの場所で見つかった遺体の身元は、栃木県にも福島県にも無関係な、東京・上野で飲食店を営んでいた夫婦であることがのちに発覚する。さらに関係者が次々と出頭あるいは逮捕されてゆき、この事件は現在のところ、夫妻の娘の内縁の夫が主犯であると目されている。那須町から始まった事件は、東京近郊に住む者たちによるものだった。

 今回の件と同様に、凶悪事件において遺体が北関東あるいは福島の人通りの少ない場所に遺棄され、地元住民が遺体を発見、事件が明るみになることがある。そんな遺体の発見地から事件を振り返りたい。

 2022年6月上旬、東京都に住む20代女性が行方不明となった。警視庁が捜査を進めたところ、神奈川県南足柄市の会社員、三瓶博幸(当時33)が同月18日に監禁容疑で逮捕された。三瓶は少年時代、郡山市内の中学校に通っていた。茨城県に別荘を持っており、そこに女性を監禁したとされる。さらに女性の遺体は茨城県と福島県の県境にある別荘近くの林道で発見された。のちに女性の殺害容疑でも逮捕されたが、裁判員裁判はまだ始まっていない。

 昨年10月には、栃木県上三川町に停められたレンタカーに女性の遺体を遺棄したとして男が逮捕された。白いブラウスや緑のスカートなど制服のようなものを着ていた女性は、千葉県に住む15歳の高校1年生であると判明。女子高校生は首に数カ所のあざがあったほか、背中以外の全身に爪ほどの大きさのあざが複数あった。現行犯逮捕された男は栃木県在住ではなく、埼玉県熊谷市に住む職業不詳の28歳であり、ふたりはSNSを通じて知り合ったとみられる。男は死体遺棄のほか、女子高校生への性的暴行や殺人罪でも起訴。逮捕当時は女子高校生の首を絞めて殺害したことを認め、女子高校生のスマホを川に投げ捨てたと供述していた。

 そして、同じくインターネットを介して出会ったこの男女の事件も、発端は茨城県だった。2019年1月31日、神栖市の空き地から女性の遺体が発見された。前年11月から行方不明になっていた東京都在住の18歳の女子大生・Aさんだった。死体遺棄容疑で逮捕されたのは、同町に住む広瀬晃一(当時35)。自宅アパートから数十キロ離れた遺棄現場は、人通りも街灯もない畑だった。「騒がれたので車の中で殺してしまった」と供述していた広瀬は殺人罪でも起訴され、翌年10月、東京地裁で裁判員裁判が開かれた。そこで明らかになったのは広瀬が「金を払う」と嘘を言い、Aさんを都内から呼び寄せていたということだった。

 広瀬はSNSを介し出会ったAさんに「金を払う」と言い、神栖市に呼び寄せる。Aさんを車に乗せ、目隠しをして自宅に連れ込み、性行為に及んだが、広瀬は金を払わず、Aさんを近くの神社に置き去りにした。ところがAさんは自力で広瀬のアパートに戻り、金を払うよう追及。金策がうまくいかず、広瀬はAさんを車中で殺害し、人けのない畑に穴を掘り遺体を埋めたという。過去にも「金を払う」と騙して女性と性行為に及んだとして執行猶予中の身だった広瀬には殺意はあったと認められ懲役14年の判決が言い渡されている。


たかはし・ゆき 1974年生まれ。福岡県出身。2005年、女性4人で裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。以後、刑事事件を中心にウェブや雑誌に執筆。近著に『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』。

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