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万博問題で露わになった維新の正体|横田一の政界ウォッチ24

 万博を主導する維新が失速している。京都市長選の前哨戦と報じられた「京都・八幡市長選」(11月12日投開票)で、維新公認候補が自民・公明・立民推薦候補に敗北。4月の統一地方選では議員1・5倍増の目標を達成、奈良県知事選でも勝利したが、その勢いは半年で消え去ったのだ。

 理由は明白。八幡市長選敗北を紹介した11月14日の読売新聞は「万博建設費用増額でイメージダウン要因か」と銘打って、こう報じた。

 「会場建設費が当初の想定の2倍近くに膨らみ、建設工事の遅れも深刻化している。巨額の負担は、『身を切る改革』を看板としてきた維新には、イメージダウンにつながっている」

 実際、会場建設費は当初の1250億円から1850億円に上振れしていたが、今秋に2350億円へと二度目の上振れをした。しかも吉村洋文・大阪府知事と横山英幸・大阪市長は、11月1日に500億円増額を容認したのだ。

 ちなみに2005年の「愛・地球博」(愛知万博)では、上振れ分を予算のやりくりで抑えたことから、野党は「コストダウンで国民負担を避けるべき」と主張。しかし吉村知事と横山市長(ともに万博協会副会長)は、国民負担を回避する「縮小万博」を決断しなかった。定例会見で聞いても、従来通りの万博開催にこだわる発言を繰り返したのだ。

 横山市長は11月2日の会見で中止や縮小万博の声があることは認めたものの、「僕たちは万博の趣旨をもう一度しっかり訴えていきたいと思っている」と強調、さらなる趣旨説明に努めると宣言して批判を交わした。吉村知事にも9日に同じ質問をしたが、「今回の増額については、この3年で資材も1・3倍に高騰している中で、計画の変更よりはどうしても物価、資材の高騰、人件費の高騰があった。その分の増額分は必要だと判断した」と説明、上振れ追認の回答しか返ってこなかった。

 具体的な削減案を示しても両者は無反応だった。知事会見で「世界最大級の無駄」という批判が噴出している350億円の大屋根(リング)について質問したが、「別に全部完成させなくても、半分ぐらい商店街のアーケード方式にしてコストダウンができるのではないか」。それでは納得できず「自見英子(万博担当)大臣も『夏の熱中症対策、日よけ』と発言。日よけだったら、あんな凝った建物にしなくてもいいではないか」と設計変更を迫ったが、吉村知事は万博の意義を延々と訴えていく回答に終始したのだ。

 「(大屋根は)国宝の清水寺の舞台にも採用されている日本の伝統建築技術で、釘を使わずに安全で強い木造の建造構造物を建てる。その魅力を世界に発信していく」

 万博予算を聖域化する維新と、中止や縮小万博を望む人が半分以上の国民世論とのギャップは大きい。そこで知事会見で「(万博の)意義を感じる人だけでお金を出してやればいいではないか。吉村知事が『ボーナスを返上、給与を3割カットして、その分を寄付する』と呼び掛ければ、クラファンで500億円ぐらい集まるのではないか」とも聞いたが、これも吉村知事は拒否した。

 「なんで、そこだけクラファンをするのか。『(万博は)基本的に必要がない』というスタンスに立っているから、そういうふうに言うわけでしょう。でも我々は必要があると思っている」

 維新の正体が露わになっていく。さらなる国民負担を避けるための抜本的コストダウンを拒み、クラファンも否定する。「身を切る改革」は看板倒れで、「国民に身を切らせるバラマキ政党(第二自民党)」という実態が鮮明になるのだ。フルスペックの万博開催にこだわる維新が今後、どこまで支持者離れを招くのかが注目される。


よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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