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熟年世代に増える前立腺がんー耳寄り健康講座①

今月のアドバイザー
常磐病院 新村浩明 院長

 公益財団法人ときわ会常磐病院の新村と申します。今月から毎月当院の医師による健康コラムを掲載していきます。よろしくお願いします。初回のテーマは「前立腺がん」です。

 近年、前立腺がんの罹患者数は年々増加しています。男性の10人に1人は一生の間に前立腺がんに罹患するといわれています。以前より欧米での高い罹患率が知られていましたが、わが国でも、生活の欧米化で前立腺がんの罹患数の増加を認めていて、男性のがんの中では、最も多い罹患数となっています。俳優の西郷輝彦さんが前立腺がんでお亡くなりになられて、最近も話題になっていました。

【前立腺がんの特徴】

 1、血液検査(PSA)で早期発見が可能

 血液中のPSA(前立腺特異抗原)というタンパクを測定し、高い値を示す場合前立腺がんが疑われます。

 2、他のがんよりも進行が遅い

 多くの前立腺がんは進行が遅いことが特徴です。

 3、治療法が多様で個人の状態に応じた治療法の選択が可能

 前立腺がんの治療法は、手術療法、放射線療法、ホルモン療法などがあり、いずれも治療効果が非常に高いことがわかっています。

【前立腺がんと診断されたら……】


 まず、前立腺がんが「限局性前立腺がん」か「進行前立腺がん」かの診断を画像診断で受けてもらってください。

 「限局性前立腺がん」とは、がんが前立腺の内部にとどまっていて転移のないがんのことです。逆に「進行前立腺がん」とは、がんが前立腺の被膜を超えて広がっていたり、リンパ節や骨などに転移しているがんのことをいいます。

【前立腺がんの治療法】

 限局性前立腺がんの場合

 ①無治療

 悪性度が低く、その前立腺がんが生命に影響がないと判断されれば無治療で経過をみる場合があります。

 ②手術療法

 手術で前立腺を摘出します。現在は、ロボット手術にて前立腺摘除を行うことができ、傷も小さく痛みが少ないため早期に社会復帰できます。合併症として尿失禁や勃起障害がありますが、術式を工夫することで、これらの合併症を最小限にすることができます。

 ③放射線外照射

 放射線を前立腺に照射することにより前立腺がんを死滅させる治療法です。外来通院で治療が可能で、合併症のある方や高齢者の方に適しています。副作用として直腸潰瘍、皮膚潰瘍、勃起障害などがあります。

進行前立腺がんの場合


 ①ホルモン療法(内分泌療法)

 前立腺がんは、男性ホルモンの存在によって増殖します。そのため、抗男性ホルモン薬で男性ホルモンを抑えることによって、前立腺がんの増殖を抑制します。長期のホルモン療法を続けていると、ホルモン療法では抑制されない前立腺がん(去勢抵抗性前立腺がん)が発生することも知られています。

 ②化学療法

 ホルモン療法後に去勢抵抗性前立腺がんを認めた場合、抗癌剤により治療します。

 以上簡単に前立腺がんの主な治療法を進行度によって説明しました。これらの治療法以外に、重粒子線治療など新しい治療法があります。いずれの治療法もそれぞれの患者さまの状態にあわせて治療する必要がありますので、是非主治医の先生とよく相談してみてください。

しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。

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