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人の行為を見つめ社会を豊かにするプロダクトデザイン会社(後編)

 有能な個人が自らの技能を武器に事業を成功させる例はよくある。しかし時の経過とともに、地域貢献、後進育成、技能伝承など、彼らの立場なりの新たな目標を抱くようになる。世界的な成功をおさめたデザイナー、村田氏は次なる目標に向かってどんな取り組みをしているのだろう。
(※掲載時の内容です)(前編はこちら)

株式会社ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役 村田智明
聞き手:
北村真吾/中小企業診断士

取材:2018年2月5日 掲載:旬刊政経レポート2018年3月15日号)


会社名「ハーズ」の由来を教えてください。


 大学を卒業し三洋電機のデザイン部門で働いていた時のことです。ラジカセの試作を作ったことがありました。女性に愛用してもらえるよう「HERS(彼女のもの)」と名付けました。当時の同僚はデザインを専門で勉強してきた者ばかり。その中で応用物理出身の僕にデザインをさせてもらう機会は少なかったのです。そんな中、このラジカセが大阪で開催された国際デザイン展でイタリアから来日していたデザイン誌DOMUSの編集長の目に留まり紹介されたのです。これをきっかけに、上司がようやく僕に目を向けてくれました。
 僕のデザイナー人生の転機となった名前なので、社名にしたというわけです。


27歳で創業してから、どのような仕事をしてこられましたか。


 家電ばかりではなく身の回りのあらゆるモノを手がけたいとの思いで創業しました。
 創業してすぐ、資生堂の指名コンペに参加しました。目で見てすぐに使い方が分かるピクトグラムデザイン(絵文字)とセルフバイに対応した店頭で選びやすい陳列提案で、6社コンペを勝ち抜き受注したのが当社の始まりです。
 僕の実績としてマクロソフトの家庭用ゲーム機、XBOX360が取り上げられることは多いですが、当社のクライアントは大手メーカーやグローバル企業ばかりでなく、中小製造業の自社商品開発のお手伝いもしています。

村田智明4

村田社長のデザインと思考方法は海外からの関心が高いですね。鳥取県はどうでしょうか。


 鳥取県の企業に参画してもらい開発したMETAPHYS TOTTの商品シリーズ、医療機器のデザイン開発、防災用のシャッターガード、白兎神社のうさぎの耳の付いたお守り、南部町のイメージ戦略、弓ヶ浜絣のプロジェクト、湖山池のウォーキングイベント、鳥取スタートアップキャンプのメンターなどに携わってきました。

 僕は鳥取県が好きだからこそお伝えしたいことがあります。製造業は、自社商品開発のリスクを取ってでも下請けから脱却してほしい。接客業は、県外から訪れた人に感動してもらえるよう視点を「外から内へ」切り替えてほしい。そのために自ら外の視点を勉強するのか、もしくは外部の意見を聞くのか。デザインが今を変えると信じて自らを変革してほしいのです。


個人技で事業展開している同世代に村田社長からメッセージをお願いします。


 若手に機会を与えるべきです。それが僕たちベテランの役目です。当社でも若手デザイナーがクライアントの役に立つ人材に育ってもらうよう、彼らをどんどん起用しています。
 しかし一方で、僕たちは年齢を理由に自分のやりたいことを辞める必要はまったくありません。死ぬまで好きなことを続け、それにより社会から必要とされる存在であるといいですね。

(終り)



【企業情報】
株式会社ハーズ実験デザイン研究所

代表取締役 村田智明
事業内容:プロダクトデザイン、デザインコンサルティング
所在地:大阪府豊中市向丘1−5−22
従業員数: 10人
資本金:3,000万円
【メタフィスHP】


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