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目に見えないコミュニケーションで人々をつなぐ無線機販売代理店(前編)

製品を右から左に移動させるだけの卸売業や販売代理店の存在意義が低下している。そんな時代に、製品とサービスを組み合わせ目に見えない通信を陰で支えている、無線機販売代理店の松本社長にお話をお聞きした。


株式会社グローバルメディア 代表取締役 松本利之氏
聞き手:
北村真吾/中小企業診断士

取材日:2017年7月11日 掲載:旬刊政経レポート2017年9月5日号)


株式会社グローバルメディアの成り立ちについて教えてください。

 当社は無線機の販売代理店です。機器の販売に加え、制御システム設計、設備工事を伴う基地局の設置や保守サービスも行っています。私はこの会社を設立するまでは、日本モトローラ(当時)で働いていました。
 モトローラはアメリカの通信機器メーカーで、トランシーバーや携帯電話など無線機の世界トップシェアを誇るグローバル企業です。その日本法人で私は近畿の新聞社や放送局のマスメディア系企業、コンビナートや電力、ガスなどのインフラ系企業への営業をしていました。
 当時の日本ではモトローラの知名度もシェアも低く、テレアポしてもカタカナの社名をなかなか覚えてもらえなかった思い出があります。
 私が46歳の時、日本モトローラは、今後は官公庁のみをターゲットとし、法人顧客は販売代理店に任せるとの方針に転換します。ならば自らが販売代理店になり、苦労して信頼関係を築いた法人顧客との仕事を続けようと同社を退社しました。
 最初は私たった1人の販売代理店でした。でも、それまでの人脈があったため、新聞社・放送局・石油精製など大手企業とすぐに取引を始めることができました。
 さらに設立翌年の1995年、阪神淡路大震災で非常時の通信の重要性に注目が集まり、近畿に加え山陽、北陸、四国へと一気に商圏が拡大しました。

製品を仕入れて売るという販売代理店のスタイルで、利益が獲得できるものなのでしょうか。

 ご心配のとおりです。特に大企業が相手となると購入する無線機の数が多くなるので売上が大きくなります。その分、ライバルも増えるので値下げ競争に陥り、結果として販売代理店は利益が獲得しにくくなるものです。
しかし、単に製品を販売するだけのライバルが多い中で、当社は無線機を通信システムと組み合わせて提供しているので、値下げ競争に巻き込まれにくいのです。

通信システムとはどのようなものでしょうか。

 本社の各部署と多数の無線機が、基地局を介して相互に情報をやり取りする仕組みです。当社が実際に携わった日本海テレビジョン放送の例で説明しましょう。
 今回のケースでは、山陰全域をカバーするため、毛無山、枕木山、大麻山などの高所に基地局を設置しました。これらを鳥取市にある日本海テレビ本社が遠隔操作し、事件現場に行った報道担当者たちと音声やデータのやり取りをします。ヘリコプターとの通信も可能です。特に隠岐の島の基地局は日本海有事の際の重要な報道拠点です。
 音声とデータ通信ならスマホで事足りるのではと思われるかもしれません。しかし、そもそもスマホは複数人の同時通信には向きません。さらに、報道が必要とされる災害時には同じエリアに連絡が一気に集中することから、通信が混み合い使えなくなることがあります。
 そのためマスメディアは、電波の混雑に耐えられる通信システムを独自に構築する必要があるのです。
 会社員時代に培った法人顧客との関係性と、通信システム構築技術を備えていることが、一般的な販売代理店と異なる当社の特徴です。

後編では、創業から23年に渡り御社が顧客に支持され続けている秘密をお聞きします。


グローバル2

(後編につづく)



【企業情報】
株式会社グローバルメディア
代表取締役:松本利之
事業内容:無線機販売代理業
所在地:大阪府豊中市北条町3-2-35
従業員数:9人
資本金:1000万円


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