見出し画像

アカデミー株式会社(鳥取市立川町)

【事業所めぐり37】アカデミー株式会社(鳥取市立川町)


昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年8月15日号より、アカデミー株式会社の記事をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。



 石油ショック以降の不況に加えて韓国、台湾などの追い上げにあい、厳しい環境下にさらされている縫製業界。全国的なスポーツ熱の普及によるスポーツ用製品と、幅広い年齢層にまで広がった婦人用ハダ着は順調な伸びを見せているほかは全体に低迷気味。とりわけカッターシャツ、ズボンといった製品は途上国から逆に輸入しているほど。全体的には、春先よりはやや上向いているものの、好調のスポーツ用製品も現在、生産過剰気味でダブつきが出始めており、見通しはまだまだ暗い。

 そんななかで、同社は婦人用中間着、上着などの縫製加工を事業主体としているが「現実を注視して、ファッションなどを含めた業界全体の流れを見極めると共に、得意先とのコミュニケーションを大切にし、あらゆる意味で信用を得る」という社長の経常方針の下に、オンワード樫山、鈴屋といった専門店、百貨店など15社の得意先から納期はもちろん、製品の仕上がり具合などで信用を得て、受注の確保を図っている。ここ数年、年間加工賃は毎年10%程度アップを維持しており、昨年の年商は7億円。

 とはいえ、同社の現在までの歩みは、業界同様、単調なものではなかった。昭和35年から個人創業していた現社長が、39 年アカデミー㈱を設立、高度経済成長期の波に乗り、42年のピークまで「加工すれば売れる」という大量生産の時代を経験したが、42年を境に受注、生産量とも徐々に下降線。ドルショック、繊維規制、石油ショックなど厳しい時期を経た後、49年10月に岩美アカデミー㈱を設立したもの、同社を取り巻く環境はまだまだ厳しいものがある。

 同社では、高度成長期の設備投資が今になって受注量に対して工場規模が大きいという過剰投資の形となって表面化。しかし、規模の縮少はなかなか難しく、かといって現在の規模を維持させるためには、それに見合った受注量の確保が必要で経営管理が最大の課題。このため現在、優良でしかも良心的な得意先の開拓が急務となっており、「そうした得意先を持つことに努めたい」としている。

 一方、県内の場合、足利のくつ下、岡山の学生服など業界を代表するような地場産業はなく、歴史も短い企業が多いため、技術が遅れぎみ。その上、加工製品が多岐にわたっており、同じ製品を作っている企業が少なく、協業化による構造改善ができにくいという難点がある。

こうした現状のなかで、49年以降10%程度は確実にアップしていた加工賃がことしは15%もダウン。「これからは能率アップを図り、加工期日を短縮するほか小ロットでもファッション性のある高付加価値製品を多種多様に加工していきたい」と、低成長時代を乗り切る意欲を見せた。(昭和52年8月15日号)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?