日ノ丸ハイヤー株式会社(鳥取市扇町)
昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年12月25日号より、日ノ丸ハイヤー株式会社の記事をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。一部数字を漢数字から英数字に変更。
【事業所めぐり64】日ノ丸ハイヤー株式会社(鳥取市扇町)
県内ハイヤー業界の草分け。まだ、”クルマ“の珍しかった昭和5年、㈱日ノ丸自動車発足と同時に同社のハイヤー部として産声をあげた。ホロ付き6人乗りという懐かしい車両30台でスタート。無論、メーターなしだから、鳥取市内どこまで走っても50銭―は古き良き時代のエピソード。
終戦後は約10台という苦しい再スタートだったが、朝鮮動乱を契機に飛躍的な伸びを見せ、昭和31年11月、現在、日ノ丸自動車㈱の米原穣社長が法人化。以後、高度成長の波に乗り、45年7月には1000万円から2000万円に増資するなど業績は順調に推移してきた。
業界全体に狂いの出てきたのは48年のオイルショックから。車の動力源であるガソリンの高騰が激しく、業界は料金値上げなどで対処したが、このため利用者の激減という結果に。同社でも49年は対前年比20%減の売り上げという苦境に立たされ、100人もの希望退職を募ったほどだった。ダイヤの変更、諸経費の節減など合理化に手を尽くした結果その後、徐々に回復基調をたどり、ことし5月の料金値上げも心配されたほどの混乱もなく、今期は前年比約6%減程度の9億円に抑えられそうだ、と長石社長。
「大都市の”流し“のタクシーと違って、ハイヤーは電話などによるお客さんの注文が営業の基本ですから、地域に密着―ということを切実に感じています」(長石社長)というように”親切、安全、確実“をモットーに乗客サービスに努めている。ただ、社員教育についてはダイヤの関係で全員が顔を合わせることが少ないため、月に1、2回できるだけ集まって”話そう会"を開き、問題点などについて話し合っている。
4年が耐用といわれる車両の更新は各社とも頭を痛める問題だが、同社の保有台数は現在、130台。毎年、30台平均を更新しなければならず、48年当時に1台が80万円だったものが52年には120~130万円にも高騰。この資金繰りも頭痛のタネだ。
そのうえ、新たに8社が開業を申請しており、過当競争にさらに拍車をかけようとしている。
このように同社を取り巻く環境には厳しいものがあるが、諸経費の合理化―部品、タイヤなどの節減―など思い切った”減量経営“でこの難局を乗り切りたい、としている。「料金値上げもことし5月のような上げ方はできないでしょうし、これからはよほどアップ率を考えないと…」。来年は”老舗“の意地にかけても、と意欲を見せた。(昭和52年12月25日号)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?