「余談」
「余談」と名付けられたこの曲に出会ったのは高校2年生の秋だった。
ドラムメンバーが脱退した後のたった2人のライブ映像がとてつもなくかっこよくて、同時に儚くて消えてしまいそうで、そんなアンバランスに引き込まれたのだ。
この曲はずっと、名前のない瞬間を歌っているのだと思う。
例えば学校の帰り道、電車で隣に座った友達と話す時間、部活終わりの更衣室までの会話、ご飯を食べる時にする雑談。
僕たちの一生の大半はこういう名前のない時間で、この曲はそれこそが本質だと歌っているような気がする。
そして同時にこれは愛の歌でもあると思う。
どうでもいい話をできる関係値ということは、そういうことかと思わされる。
"恋をする瞬間を知ってる? 私は知らない
恋をしてる自分を知ってる? 私は知らない"
この節だけが恋愛を仄めかしているようだけど、「深く愛する人に向けたどうでもいい話の曲」のように聞こえて仕方がない。どうしてそう思うかはうまく説明できないけど、きっとこの曲が音楽の形をしているからだろう。メロディ、リズム、コード、弾き方、歌い方。それらがそうだと言っている気がする。
来月この曲を演奏することが決まっている。愛するすべての人と、どうでもいい話をしていたい。そういうことを音楽で言いたい。その瞬間を知ってる? 私は知らない。
YOJHO
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