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死にたがりな少女、書籍化計画 第二話〜表紙イラスト編〜

ついに「死にたがりな少女の自殺を邪魔して、遊びにつれていく話。」の表紙イラストが公開されました!(宝島社文庫より3月4日発売!)

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めっちゃいい……!

というわけで、第二回は「表紙イラストはどうやって決まったのか」を書いていきたいと思います。ちなみに担当編集者の岡田さんの許可を得ています。得ていなかったら、前回で終わっていました。

※ここから先は若干、作品の中身に触れるので注意!(ネタバレと言えるほどのことは書いていません)(でも、web版読んでいる人じゃないと楽しめないかも)


1、ヒトデ、苦悩する。

「前回と同じじゃねーか!」「お前、いつも悩んでいるな!」と思われそうですけど、表紙イラストはタイトル以上に悩みました。

この作品はタイトルが独特すぎるので、イラスト次第では相乗効果を狙えると思ったのです。

例えば恋愛小説だと、淡いピンク色を基調としたイラストにすれば、タイトルが短くても表紙で「あ、恋愛小説だな」って分かるじゃないですか。ライトノベルなら、キャラクターを目立たせるために背景を白にして、キャラを大きく描けば、「キャラクター要素の強い作品(ラノベ)なんだな」って分かりやすいですし、大半は作品に関するものを足す感じになると思うのです。

しかし、死にたがりな少女は恋愛小説だけど恋愛以外にもアピールしたい部分が多いし、売り場もラノベコーナーから離れている(年齢層が高い?=キャラ押しは悪手?)。ただでさえ正解が見えないのに、あの長いタイトルをどう表紙にまとめるのか。とても悩みました。


2、ひとまず候補を考える。

悩んでいても仕方ないので、とりあえず「どのシーンを使うか」を考えました。いろいろなことを考えて、いろいろと悩んだ結果、候補を二つまで絞りました。(超省略している)

・橋の上にいる相葉(主人公)と一之瀬(ヒロイン)
・シャボン玉を吹いている一之瀬

まず、「橋の上にいる相葉と一之瀬」について。
橋は作中で何度も出てきますし、二人の物語はここから始まった……!的な重要な場所ですので、単純に作品を象徴するシーンとしては最適だと思いました。担当編集者の岡田さんも同じことを考えていて、背景を白にすることでタイトルを読みやすくした方がいいんじゃないかと提案してもらっていました。

次に「シャボン玉を吹いている一之瀬」について。
第二章のシーンですね。遊びに行くシーンは他にも候補があったのですが、一番イラストで見てみたいのはここかなーと。実際にTwitterで「表紙イラストを予想してみてね!」とツイートした時、読者さんの予想で一番多かったです。

というわけで、最初はこの二つのどちらかになるだろうと思っていました。

最初に岡田さんとイラスト案を軽く話し合った時は、シャボン玉が第一希望、橋が第二希望でした。タイトルに「死」「自殺」「邪魔」などのマイナスワードが入っているので、イラストの方は出来るだけ明るくしたかったのが理由です。このときは明るすぎてもいいんじゃないかと考えていたんですよね。このタイトルなので、「えっ!? この表紙の子が自殺するの!?」みたいなタイトルとのギャップで印象に残ってもらえればなーと。

ただ、シャボン玉の方は背景が必要なシーンなので、タイトルが読みにくくなるんじゃないかという心配がありました。実際に岡田さんの方から「橋&白背景でタイトルを読みやすくした方が~」といった提案をいただいたので、「橋の方がいいのかも」と思ったことも多かったです。

それから一週間後。本格的にイラスト案を決める打ち合わせを行いました。

岡田さん「あれから考えてみたのですが、シャボン玉もアリだと思いました」

と言ってもらえたのに対して、

ヒトデ「俺……やっぱり駅のホームがいいっす……」

そう、このヒトデ野郎は一週間前とは全然違うことを言いだしたのである。


3、時代は駅のホーム。

突然、出てきた第三の選択肢。何故、こんなことになってしまったのかを一言でまとめると、第一希望だったシャボン玉に弱点が見つかったことが原因でした。

弱点その1 明るすぎる。
確かに明るくするのは正解なんですが、明るすぎるとラノベ寄りのラブコメ作品と勘違いされてしまう可能性が出てきます。僕としては、ほのぼのとシリアスのアンバランスを楽しんでほしいので、「シリアス要素ゼロな作品」と読む前から判断されるのは避けたかったです。

弱点その2 よく考えたらタイトルと噛み合っていない。
最初はタイトルとのギャップで相乗効果が狙える(キリッ)と思っていたのですが、よく考えると悪手に思えてきました。本作は興味を持ってもらいやすいタイトルですが、それは「自殺を邪魔するってどうやって?」「遊びにつれていくってどこに?」といった疑問を抱くから気になるわけです。自分は本を選ぶ時、表紙→タイトルの順で見るのですが、このシャボン玉案だと、「シャボン玉を吹いている一之瀬」を確認した後にタイトルを見ることになります。要するに「遊びにつれていくってどこに?」の解答を確認した後にタイトルを読むことになるわけです。そうなると、「イラストは自殺を邪魔した後で、こんな感じでほのぼのハッピーエンドになる話なんだろうな」と判断されて興味を持ってもらえなくなる可能性が高くなります。

以上のことからシャボン玉を諦めて、橋で決まりかなーと思うようになりました。ですが、シャボン玉にあったギャップのようなインパクトが欲しくて、第三の選択肢も考え始めるようになりました。

そこで思いついたのが、駅のホームです。

本作のタイトルと合わせて、「これから電車に乗って遊びにいくのか、それとも……?」といった感じにイラストに対しても「どっちだろう?」と疑問を持ってもらえると考えたのです。

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↑は打ち合わせで使えると思って買った模型です。このクオリティで700円前後だから凄い。打ち合わせで全く活躍しなかったので、これで脳内イメージしていたイラストを説明していきます。

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最初はこんな感じのイラストをイメージしていました。赤い丸に一之瀬、青い丸に相葉が立っていると想像してください。黄色い線付近(画像の模型には黄色い線ないけど)に一之瀬が立っていることで、明るいイラストだけど、不穏なところもある……といった初見の人にもどういうシーンなのか想像してもらうようなイラストを考えていました。

ただ、これだと横に長いので文庫本だとなかなか難しい構図になります。

そこで……

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こんな感じに横向きにする案を考えていました。(雑な編集ですまない……)

こうすることで、縦のまま見たときに線路が下側になり、一之瀬が線路に落ちてしまいそうな雰囲気を出すことができます。そもそもどれだけインパクトのあるタイトルだろうと、表紙を見てもらわないとタイトルを読んでもらえないので、あえて横向きにすることで、「なんだあの横向きの本は!?」と目立つことにも期待していました。手に取ってもらえれば、タイトルも一緒に読んでもらえるはずなので、タイトルを大きく書く必要がない(その分イラストが目立つ)というメリットもありますね。

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あとはこんな感じで相葉目線の表紙も考えていました。赤い丸に一之瀬が立っていて、体は線路の方を向いているけど、こちら(相葉)に振り向いているイメージです。黄色い丸付近に制服姿のモブ女子を配置することで、私服姿の一之瀬が目立つかも???みたいなことも考えました。ちなみにこの相葉目線の案は(今回表紙イラストを描いていただいた)さけハラス先生も考えていたようで、聞いた時にビックリしました。

岡田さんとの打ち合わせでは、横向き案を推して、駅のホームでいくことが決まりました。担当イラストレーターの方も希望していたさけハラス先生に描いてもらうことが決まり、三人で直接会って打ち合わせ&ロケ地に行くことになりました。


4、打ち合わせ

都内某所のお店に入って、三人でランチを食べながら打ち合わせをしました。どこまで話していいのか分からないので、超省略して書いていきます。

さけハラス先生に提案してもらい、岡田さんが答えて、僕はオレンジジュースを飲んでいました。(作者いる必要あった?)

「僕としては一之瀬に黄色い線を踏ませたいですね……(難しい顔)」みたいなことを複数回言っているうちにロケ地が決まり、三人で行くことになりました。(作者いる必要あった?)

様々なアングルから写真を撮って「これいいんじゃないですか?」と話し合う二人を後ろから見ていました。(作者いる必要あった?)

それから「この写真なら横向きじゃなくてもよさそう」「というか相葉いなくてもいいんじゃ??」といった流れで話が進んでいき、今回の表紙イラストになりました。

ほとんど役に立っていませんでしたが、打ち合わせは楽しかったです。(作者いる必要あった?)(役立たずで申し訳なかったです)


5、表紙イラストについて。

僕としてはこれ以上ない完璧な表紙イラストだと思っています。

最初は「いろんなシーンを見たいし、どのシーンを選んでもあっちにしておけばよかったなーって後悔するんじゃないだろうか」なんて心配していたのですが、そんなことありませんでした。

結果的に横向きではなく、縦向きの表紙イラストになりましたが、このイラストなら本屋で目立つと思います。相葉に関してもタイトルの情報量が多いので、「一之瀬だけの方が分かりやすいし、正解だったなー」と。(相葉を見たかった人はごめんなさい)

ちなみにイラストが傾いている理由は、横向き案でやりたかった「一之瀬が線路の方に落ちてしまいそう感」を出すためです。(トリビア)

既にタイトル文字や帯が入ったデザインラフの方も確認していますので、近いうちに公開されると思いますので、是非楽しみにしていてください!

それと今回表紙を描いていただいた、さけハラス先生は他にも素敵なイラストを描かれていますので、気になった方は是非Twitterやpixivで検索してみてください!

書籍版「死にたがりな少女の自殺を邪魔して、遊びにつれていく話。」は宝島社文庫より3月4日発売となります。一般文芸(と呼べばいいのか分かりませんが)として出るので、ライトノベルコーナーとは違う売り場になります。ご注意下さい!

また許可を得られたら、発売日辺りに第三話を投稿したいと思います!

それでは、今日はこの辺で!

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