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水引に見る、日本文化の画一化

地域によって時期にズレはありますが、お歳暮の季節になりました。

清課堂では御進物品に対して、熨斗掛けをうけたまわっております。ここで大事にしているのは、お客様がお住まいの地域の習わし。冒頭でも触れさせていただいたように、贈り物には日本全国津々浦々、さまざまな形態があります。私どもでは、お祝い事の熨斗は基本的に「あわじ結び」です。

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ところが昨今、「ネットでこう書いてあったから」と、地域性を無視したご注文をいただくことが多くなっています。せっかくマナーをお調べになり、受け取られる方を想って贈り物をされるのに、届いた先の風習にそぐわないのでは、もったいないというもの。先様の土地柄を尊重するのも心づかいでしょう。

かく言う私も、間違ってしまったことが…

東京のお客様より「蝶結びで」とご依頼いただいていながら、うっかり京都式の「あわじ結び」を掛けてしまったのです。東京ではあわじ結び=結び切り。一度結んだらほどけないことから、人生に一度きりであってほしい婚礼などの場面にのみ用いられるのだとか。あわじ結び=正式な結び方として、どのようなお祝いにも使用する京都とは意味合いが違ってきます。ご迷惑をおかけしてしまい、後でお叱りを受けました。

熨斗掛けに限らず、古くからの風習や伝統行事の有りようが、土地ごとに異なるというのは多々あること。お分かりにならなければ、標準的なマナーを参考にするのではなく、地域の結納屋さんにお尋ねになるのが確実です。

地域性を顧みなければ、その地で育まれた伝統が失われ、文化が画一化されてしまう恐れも。風土に根差したしきたりを守り、大切にしていきたいですね。

手仕事の次世代を担う若者たち、工芸の世界に興味をもつ方々にものづくり現場の空気感をお伝えするとともに、先人たちから受け継がれてきた知恵と工夫を書き残してゆきます。ぜひご支援ください。