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枝先の柿/職工を目指すために~おまけ

進路に悩む学生たちの”好きなことを仕事にしたい”という言葉について、なかなか簡単にお悩み解決とはいかないのですが、先人たちの残した言葉にそのヒントがあると思います。うまく言い得た言葉をいくつかご紹介します。

「高い目標を設定し、日々できること、しなければいけないことを地道にやる。それが苦にならないのは、好きなことをやっているからだ。by イチロー
好きなことをやっているから苦にならない、というのは解りやすいですが、高い目標設定と習慣づけ・地道な修練は、工芸にもそのまま当てはまると思います。

「すばらしい仕事をする唯一の方法は、自分のやっていることを好きになることだ。まだそれを見つけていないのなら、探し続けなければいけない。安住してはいけない。by スティーブ・ジョブズ」
これもフカイイ言葉で好きです。やっていることを好きになる⇒素晴らしい仕事のくだりがグッときます。単なる”好き”じゃなく”好きになる”ことは、仕事だけじゃなく恋愛や結婚にも活かせる思考かも。自分自身に言い聞かせています。

好きと得意のちがい

”好きなことを仕事に”を題材に取り上げていながらこんなことを書くのは本末転倒なのですが(笑)、私自身は”好きなことを仕事にする”ことには懐疑的に思っています。”好きなこと”よりも”得意なこと”を仕事にする方が、格段に幸福な人生を送れるのではと考えています。”好きなこと”と”得意なこと”は同じように思えますが、ちょっと違っていて(その違いをすでに解っている人はナカナカの人!?)

・知らないこと、もしくは経験値が低いことは、好きじゃない
・よく知ること、慣れたことはたいがい好きになる
・これまでの人生で良い体験をしたことは好き
・好きなこと(もの)は他人の意見に左右されにくい
・直感的に好き、生理的に無理など思考と違う側面もある
といったように、自分に軸足を置いた主観的なもの。

一方、得手不得手はどちらかというと対比的で、人と比べて強かった、早かったなどと感情とは別にあることが多いと思います。もしくは過去の自分や自分の持つ他の才能と比べて、滞りなくすんなり出来たという場合もあります。感情と違って自信につながりますし、スキルや才能は人から評価や重用されるので達成感や充実感を得ることにもなるでしょう。なので、”得意なことを仕事にする”ことから始めてみてはどうでしょう?

最後に、

「私はイチゴクリームが大好物だが、魚はどういうわけかミミズが大好物だ。だから魚釣りをする場合、自分のことは考えず、魚の好物のことを考える。by デール・カーネギー

カーネギー氏の世界で1500万部読まれた『人を動かす』をご存知の方は多いと思います。”自分”が好きなものと、”他者”が好きなものとは全く別もの。イチゴクリームとミミズの違いを例えた言葉が秀逸です。”好きなこと、好きなもの”という自分のうちにあるものと、社会が求めているものとは大きなギャップがあることのたとえかもしれません。”好きなこと”を続けることは大変有意義ですが、一方で社会とのかかわりの中で他社の好物のことも考えなくてはいけないときもある、というのも、工芸の世界で生きてゆくことのヒントになるかもしれません。

経験則でいろいろ語ってきましたが、人間万事塞翁が馬なんですけどね。

手仕事の次世代を担う若者たち、工芸の世界に興味をもつ方々にものづくり現場の空気感をお伝えするとともに、先人たちから受け継がれてきた知恵と工夫を書き残してゆきます。ぜひご支援ください。