本社倉庫のパンク。Vol.54
第4話
本社の隣が実家だった。
この実家がすごいデカい。とにかくでかい。
どれぐらいデカいかというと
テレビのCMの間にトイレから帰ってこれないぐらいデカい。しかも平屋。
だから父がインターホンと電話を間違えるのも
致命的だが
表玄関と裏玄関を間違えて出て行くのは
もっと致命的だ。表から裏にまわるのに大体100m。家の中を通らず外を回った方が早い。
インターホンを押した人は前からではなく
後ろから登場されて
大体びっくりして悲鳴をあげる。
本社の隣が家ということもあり
365日24時間 諏訪商店とともに生活があった。
・会社に誰もいなければ訪問客が来る
・セールスは当たり前
・宅配便も荷物が届く
・本社の鍵の開け閉めも当たり前
・売上の現金も営業マンが家に届ける
・おわらない商品のパッキングは家に持ち込まれる
正月もなければお盆もない。
生まれた時からこうだったから
それが普通だと思っていた。
実家はいつも諏訪商店とともにあった。
会社の隣に自分の家を建てるって経営者は
多いと思うけど やっぱりその覚悟って
スゴいと今になってさらに強くおもう。
そして時は大きく20年後、父はとうに引退。
会社は拡大を続ける。
次々と作られる新商品に置場がなくなり
本社倉庫はキャパオーバー、限界が近づいていた。
どうする?
どうする?
どうする?
兄 寿一社長が
「実家を壊して倉庫を拡大する。父と母には
出ていってもらおう」と言ってきた。
なんて非道な‼️
自分は反対だった。
思い出がいっぱいある。
思い出が詰まってる。
何より歳をとった両親の引越しは
負担が大きいのでは?
そして世間体だ。兄弟が会社が大きくなったからと
調子にのって両親を追い出した的なウワサが
広まったらどうする?とか。
兄は父が引退して
社長室をなくし
経営理念もガラっと変えた。
会社のありとあらゆるものを整理整頓、
ほとんどの思い出を捨てていった。
残したのは社長室にあった商売一路の額と
やますマークのみ。
とにかく父を否定するかのような勢いで
いろいろなものを壊し捨てていった。
そして倉庫の件も
兄は迷うことなく父に相談にいく。
「本社倉庫を拡大するから実家を壊す」
父は👨
「良いね」
とあっさりと承諾。
ガーン😨
思い出した。
これが会社とともに生きる生き方だった。
小さい頃から知らずのうちに商売人として
とことん鍛えられていた感覚だ。
人生の全てが会社とともにある。
きっと商売をしていない人にはわかってもらえない感覚だとおもう。
商売のためにならその身の全てを捧げる。
兄は父が作りあげてきたものを
迷いなく壊していく。
それは否定からはできない。
最大の敬意をもって進化させていく覚悟だ。
父と兄の絆というか
自分には入り込めなかった創業者の父と
それを承継した兄との暗黙の世界。
悔しいけどその関係には入り込めないな。
でもさ!全てを捧げる覚悟は
俺だって負けてないだろ?
『諏訪聖二、どうする父さん』Vol.51-Vol.60(全10話)
その引越しを手伝わなかったせいもあり
自分が実家に置いてあった思い出は
ほとんど捨てられました‼️笑
過去に固執しない!というのも
ココで教わったのかもしれない。
過去は笑って語るもの。
過去の栄光にはすがらない。
前へ!前へ!!前へ!!!
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