司法試験と予備校 勉強方法 その3

前回までのあらすじ

 前回は、「予備校は勉強しなくても良いことを教えてくれるところ」というお話をさせていただきました。
 今回は、予備校についてもう少し考えてみようと思います。

予備校が教えてくれること

 繰り返しになりますが、予備校は「勉強しなくても良いことを教えてくれるところ」です。そんな次第ですから、予備校の講義をただ漫然と視聴する、予備校の答練をただ書き散らかすだけでは、普通の人は合格はできません。
 何を勉強しなくて良いか、が多少分かったところで、当然合格なんてできないわけです。

 この私の見解に対しては、少々予備校を過小評価し過ぎではないか、とのご指摘があるかも知れません。「実際に自分は予備校で勉強をして実力が伸びたんだ」「予備校だけで合格できたんだ」と、そう仰る方もいると思います。
 しかし、ここは初学者もしくは普通の人であることを捨て去った天才が思い違いをしやすいところです。

 予備校は、必要最低限の知識・論述方法を教えることを通じて、どのような知識は不要なのか、またどのような論述方法では評価されないのか、を伝えているところです。そのため、必要最低限の知識がない、論述方法が身に付いていない場合には、ただ漫然と予備校で勉強するだけでも実力が伸びます。

 それに、予備校も商売ですから「我が校のテキストを読込み我が校の答練を受けてさえいれば合格できる」かのような宣伝をします。素直な人ほどこの宣伝を額面通りに受け取ってしまい、予備校以外での勉強は不要であると考えてしまいがちです。

 もちろん、実際には予備校も「他所での勉強は不要」とまでは言い切っていません。「他所での勉強は不要」というのは、生徒側の「できるだけ楽したい」という甘えが生んだ勘違い、という面があるのは否定できません。
 とはいえ、司法試験予備校はどこも結構高額です。司法試験受験生といったって、裕福なお金持ちの子供ばかりでは無いわけです。
 高額な受講料を取る割には不誠実な宣伝だな、と個人的には感じてしまいます。

予備校の売り文句

 では実際に、予備校の売り文句、その真偽はどうなのでしょうか。
 予備校のテキストと答練について、それぞれ考えてみます。

予備校のテキスト

 たしかに、予備校のテキストに書かれている知識だけで、司法試験は十分に合格できます。これは本当です。
 でもこれ、当然ですよね。

 だって、考えてもみてください。
 予備校のテキストって、まぁ結構分厚いほぼ鈍器なわけですよ。時々「え?薄いっしょ」とか言い切っちゃうアレな凄い人もいますが、普通の人にとっては分厚いと感じるはずですよ。
 そんな鈍器分厚いテキスト持ち出してきて「ここに書かれている知識だけで大丈夫」と言われましてもね。
 そりゃそうでしょうね、としか言いようがありません。

 それに、そもそも合格者の中にだって、予備校のテキスト内の知識を網羅している人はほぼいません。少なくとも私の周囲には一人もいません。
 ですから、仮にいたとしても全体の数%程度であり、おそらくその人達は超上位合格でしょう。
 もともと、予備校のテキストは(予備校のテキストに限りませんが)ややオーバースペックなのです。

予備校の答練

 また、予備校の答練を受けているだけで合格できる人、というのもいます。これも本当です。少なくとも、そう豪語している人はいました。
 しかし、その人は多分予備校の答練を受けていなくても合格できたと思います。

 予備校の答練は、その性質上、既存の知識や理解を確認するための問題しか出題することができません。これは、司法試験のように「未知の問題」を出題してしまうと、誰も採点や解説ができなくなるためです。

 予備校の解説には、必ずその根拠となる文献の指摘があります。
 これは当然ですしもし無かったら即刻受講料払戻してもらった方がいいです。一予備校講師、予備校スタッフの独自の見解に基づく解説なんて、何の役にも立たないどころか極めて有害な代物だからです。

 予備校側も当然そのことをよく理解していますから、文献の根拠のない解説は絶対にしません。そうすると、根拠となる文献がないような問題、つまり「未知の問題」は絶対に出題されない(できない)、ということになります。

 いくら知識や理解を確認したところで、それだけではもちろん司法試験は合格できません。司法試験とかいうクソは、当たり前のような顔して「未知の問題」も出題してくるからです(ただし、「未知の問題」が出題されること自体は、本当は大した障壁ではありません。この点は、別の機会に指摘します。)。
 結局、予備校の答練を受けているだけで合格できる人というのは、合格に必要な力をすでに持っている、もしくは自力で身につける力を持っていた人だけだ、ということになります。

結論

 結論として、予備校の売り文句は嘘ではありません。
 実際に、予備校のテキストを読み答練を受ければ、合格に必要な程度の知識や理解は得られます。また、予備校のテキストと答練だけで合格している人がいるのも事実です。

 ですが、普通の人は、予備校だけでは合格できません。
 司法試験合格のために本当に必要な力は、予備校のテキストを読み答練を受けるだけでは得られないからです。

 誤解の無いように付け加えると、予備校を批判したいのではありません。
 予備校は合格のための超強力なツールです。上手に使うことさえできれば、法科大学院と違いこれほど頼りになる存在はありません

 次回は、予備校の使い方について考えてみようと思います。


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