司法試験の勉強方法 その9 予備校の機能

今までのあらすじ

前回前々回は「論パの記憶と崩し方を学ぶには、予備校が結構使えるよ」という話でした。
こんな話になったのも、本を正せば「予備校は良いツールだけど、あくまでツールの1つにすぎないので、ただ予備校に行くだけではもちろん合格できないし、使い方を良く考えないとかえって危ないよ」という考えを説明したかったからです。

今回は「そもそも、予備校の利用が必要か」というお題と絡めて、さらっと予備校に関する自論を書こうと思います


予備校の必要性

「司法試験合格には予備校の利用が必要か」

良く耳にする問いの一つです。

予備校に何らかのプラス効果があるのは当然です(でないとこの世から消滅してます)。
そのため、問題となるのは費用対効果です。
なにしろ、予備校に割かれる時間は多く、また、予備校の費用は阿呆のように高額ですから。

そこで、予備校の効果を①地図②知識のインプット③思考のアウトプット④人間関係の構築、という4つの機能に分けて考えてみます。

予備校の機能

①地図としての機能

学ばなくても良いことを教えてくれる機能です。
司法試験合格との関係では最も大切な機能だと考えています。
初学者はもちろん、相当勉強が進んでいる人にとっても役立ちます。
特に、勉強方針に迷いがある場合には、地図としての機能が役立つでしょう。

ところで、この機能に関する考え方は、予備校によってかなり違うようです。
膨大な厚みのテキストの中から覚えるべき箇所のみを指摘する予備校もあれば、合格に必要だと考えた知識だけを厳選しテキスト化する予備校もあります。

個人的には前者が好みです。
後者の場合、確かに、その予備校に素直に従っていれば合格できる形にはなっています。
ですが、これでは目的地へのルート以外が黒塗りされてしまっているようなものです。
テキスト外の問題を全く知らないまま合格することになりますし、一度ルート外へ飛び出してしまった場合には修正が難しくなると感じます。

もちろん「合格と無関係なことはできるだけやりたくないし知りたくもない」という人もいると思います。
そのような人は、後者が合っているでしょう。

②インプットとしての機能

基礎的な知識をインプットする機能です。
初学者であれば非常に役立ちます。
多くの人は、この機能を重視して予備校を選択されるのではないかと想像します。

司法試験の勉強範囲はかなり広いうえ、覚えるべきこともそれなりに多いです。
そのため、基礎知識を一通りインプットするだけでも中々苦労します。
予備校がその苦労を軽減してくれるのは、ほぼ間違いありません。

インプット方法としては、自社テキストを使用しての講義形式、自社テキストを使用しての動画視聴方式、テキストオンリーの3パターンが多いように思います(調べた訳ではありません)。
ご自分のスタイルに合った方法を選択すれば良いと思います。
ただし、初学者の場合、勉強に自信がある方以外はテキストオンリー非推奨です。


*なお、講師に質問をしないのであれば、インプット機能に関して講義形式と動画視聴形式に差はありません。差が生じるのは人間関係構築機能のみです。


③アウトプットとしての機能

基礎的な知識を確認する機能です。
通常は答練という形で行われます。
初学者だけでなく、相当勉強が進んでいる人にも役立ちます。
また、再三このブログで語っている「伝える力」を確認し向上させる場にもなります。

アウトプット機能に関する考え方も、予備校によってかなり異なるようです。
可能な限り本番に近い問題を出題しようとする予備校もあれば、論点の確認にのみ焦点を絞った問題を出題する予備校もあります。

どちらが良い悪いではなく、好みの問題です。
自分がアウトプット機能に何を求めるか、ということになるでしょう。

なお、個人的には後者が好みです。
知識と論証の確認の場として割り切っていたからです。

ただ、予備校を選択する際に、アウトプット機能の良し悪しを判断することは通常難しいです(判断できる能力がないのが通常です)。
そのため、内容は余り気にせず、あるかないかだけで判断すれば十分でしょう。

④人間関係の構築機能

平たく言えば、友達を作る機能です。
周囲に司法試験合格を考えている友人知人がいない人は、積極的に活用したいところです。

合格者の中には「司法試験はチーム戦」という人もいます。
実際に、あるグループはほぼ全員合格、あるグループはほぼ全滅、ということが良く起きます。
共に切磋琢磨できる勉強仲間の存在は、非常に強い味方です(私にはいませんでしたが)

また、合格後を見据えた場合にも、友人知人の存在は非常に重要です。
法曹界が閉鎖的なためか、司法試験合格後の情報は多くありません。
インターネットで検索してみると分かります(Google先生の頼りない姿が拝めるかも知れません)
そのような状態の中で、相互に情報を交換できるような仲間の存在はとても心強いものです(私にはほとんどいませんが)

結論

というわけで、「そもそも、予備校の利用が必要か」という問いへの私の結論は

「人によるから自分で考えて」

という、非常に無責任なものです。
やはり、ご自身で考えていただくより他はないということです。

繰り返しますが、予備校にプラス効果があるのは当然です。
そのため「司法試験合格を目指したいのだけどお金と時間が余ってしまってとても困っている」という人は、迷わず予備校を利用すべきです。

そうでない人は、各機能が自分にとってどれだけ重要かという視点から、予備校を利用すべきか、利用するとしてどのように使いたいのか、考えるといいでしょう。
その際には、予備校が自分に合うかどうかも考慮してください。

他の記事に書きましたが、普通の人は予備校で漫然と勉強しているだけでは合格しません
これは「予備校に通い全力で頑張っても厳しい」という意味ではありません。
むしろ「予備校が合わない人がいる」という意味です。

予備校は基本的に知識を詰め込むところです。
思考する過程はほとんどありません。
そして、実際に知識さえ詰め込めれば多くの人が合格できます。

そうすると「知識を詰め込む作業が得意な人」予備校が合っているということになります。
その一方で「自分なりに納得がいかないと記憶自体ができないなど、素直じゃない上に要領まで悪く思考する作業が好きな人」には余り合いません

ですが、誤解しないでください。
ある程度知識を詰め込まないと、そもそも司法試験合格は不可能です。
そのため、後者の人にとっても予備校はある程度有用です。
特に、勉強の初期段階では、効率良く知識を詰め込めるという点で非常に有用です。

もし予備校を利用するならば

「予備校を利用する以上確実に合格する」

という気合いを持ってください。
そうでないと、お金をドブに捨てることになります。

ご利用は計画的に!

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