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創作

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小説や詩をまとめていきます。
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記事一覧

鴨の生涯 【短編小説】

 出汁の多い生涯を送って来ました。  鴨田という名に生まれた私は、カモとか鴨ネギとか呼…

渡邊惺仁
10日前
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【企画】 顔、晒します。

 面白い記事に巡り合いましたので、さっそく乗っかっていこうと思います。  発端は星谷光洋…

渡邊惺仁
2週間前
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眠歌/死に向かう刹那の命、希求する価値の在処や初桜の音

 死に向かう  刹那の命  希求する  価値の在処や  初桜の音  枯木と見紛う街路樹に  …

渡邊惺仁
1か月前
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実は続けている折り紙の話

 午後の凪。  こんな日には紙を折りましょう。  さて、何を折りましょうか。  今年は卯…

渡邊惺仁
4か月前
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【完結】少年とアンダースコート【短編小説】

 高校でもテニス部に入ってみたが、1週間で辞めた。熊野のいないテニスコートは、まるで羽生…

渡邊惺仁
5か月前
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続・少年とアンダースコート 【短編小説】

 テニス部の練習は男女別で、接点は少なかった。休憩時間や遠征のときには話す機会があって、…

渡邊惺仁
5か月前
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少年とアンダースコート 【短編小説】

「ハルキがいけないんだよ。  急に『引越す』なんて言うから。」  僕のランドセルを持ったまま、彼女はそう言った。ぎゅっと目を瞑った表情は夕陽に照らされていて、妙に印象的だった。  二十余年を経た今でも、ふと彼女の音の甦えることがある。独特な響きを持つ彼女の声に、そのとき僕は恋をした。  一緒に遊ぶようになったのは小学3年生の頃だった。クラスが同じになったのと家が近かったこともあって、7, 8人で集まって缶蹴りや鬼ごっこをして遊んだ。ザリガニを捕まえることもあったし、神社で

百鬼夜行 【鴨鍋ハロウィン】

 なぜ、カモなのか。  その問ひに回答を得られぬまま、気付けば三年と数ヶ月。記し時より移…

渡邊惺仁
6か月前
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自分らしさ 【詩】

どれほど「らしさ」を求めても、 正解に辿り着くことはないでしょう。 全てが貴方で、貴方は…

渡邊惺仁
7か月前
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ヤギと呼ばれた頃 【短編小説】

 夏になると思い出すことがあります。  ランドセルを手放す前後、思春期の始まりの頃。私を…

渡邊惺仁
9か月前
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胡麻通りの日常、朝の会話

00:00 | 00:00

※試聴版です。オリジナル版(03:42)はメンバーシップに加入すると視聴できます。

某所からリクエストのあった音声を収録いたしました。 日常会話のため、若干の沈黙もあります…

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渡邊惺仁
11か月前
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専門カバ 【ショートショート】

 「専門の先生に紹介してください。」  患者家族からそう言われたエフ博士は、その病を専門…

渡邊惺仁
1年前
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カナリアの追憶 【短編小説】

 昼下がりの生徒会室。  穏やかな日差しがカーテン越しに室内を照らし、窓の隙間から香る新…

渡邊惺仁
1年前
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【短編小説】交代日記《mode:S》

「解離性同一症」とは何か。  最も有名な作品をひとつ挙げるなら、『ジキル博士とハイド氏』でしょうか。面白い作品ですが、モデルとなった人物は解離性同一症ではありません。  解離性同一症、あるいは解離性同一性障害(Dissociative Identity Disorder: DID)は、多重人格というキャッチーな表現と、そういう登場人物を組み込むことで複雑化する物語性の魅力から幾つもの作品に取り上げられる現象です。しかしながら多くのフィクションがそうであるように、実際の症例