少年とアンダースコート 【短編小説】
「ハルキがいけないんだよ。
急に『引越す』なんて言うから。」
僕のランドセルを持ったまま、彼女はそう言った。ぎゅっと目を瞑った表情は夕陽に照らされていて、妙に印象的だった。
二十余年を経た今でも、ふと彼女の音の甦えることがある。独特な響きを持つ彼女の声に、そのとき僕は恋をした。
一緒に遊ぶようになったのは小学3年生の頃だった。クラスが同じになったのと家が近かったこともあって、7, 8人で集まって缶蹴りや鬼ごっこをして遊んだ。ザリガニを捕まえることもあったし、神社で