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『夏の宵』(明)

【作品形式】朗読・1人読み・2人読み
【男性:女性:不問】1:1:0
【登場人物】男性(左寄せ普通字)・女性(右寄せ太字)
【文字数】802字
【目安時間】約4分


日中の暑さが和らいだ河原で
二人並んで座り
川をぼんやりと見ていた

草の香りの強さから
日中の気温が高かったことを感じつつ
あなたと過ごす,心地よいひと時を楽しめていることが,嬉しい

川の水面(みなも)が月の光できらめき
君との時間・空間に
華を添えてくれている

何かを話すわけでもなく
かといって居心地が悪いわけでもない
あなたの隣にいることが,自然なことになっていた

君と過ごしたひと夏の想い出が
色褪せることなく私の中で残り続ける
ただそれだけで良いのかもしれない

今年の夏は特によく一緒にいたけど
何故なんだろう……
どうしてあなたのそばにいるのが
こんなにも心地よいのだろうか

何げないながら
君と過ごす心地よいこの時間が
代えがたいものになっていた

……気付いてしまった
自分があなたのことを
どう思っているのか

……もう夏が終わってしまう
君との関係は,このままで良いのだろうか

私とあなたは
このままではいられない
いたくない

わかっていた
そう,わかっていたんだ
でも……怖かったんだ

あなたのそばにいる人が
あなたの隣にいる人が
私じゃないなんて考えたら……

私だけが一方的に
『両想い』と勘違いして
君のそばにいられなくなるのではないか
君を失ってしまわないか
そんな想像をしただけで……

あなたはどう思っているのかな
私のことを思ってくれているのかな

ただ
自分のことだけを考えて
行動するなんてこと
君にしたくないんだ

あなたの思い描く幸せに
私は入(はい)れているかな

君を大切に,大事に思っている
……つもりなんだけど
独りよがりになってないかな……
不安になることもある

……どんな存在として
あなたにとってどんな人として
私はそこに
あなたの将来にいるのだろうか

気持ちだけで突っ走るんじゃなくて
君自身が『大切に,大事にされている』と感じられるように
言動で,しっかり伝えていきたい
示していきたいんだ

あなたの隣で
あなたのそばで
共に時間・想い出を刻んでいきたい


月光り
風と鈴の音(ね)
混じり合い

静かに来たる
秋の訪れ


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