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我が家の愛犬「はくまい(白米)」日記(1) 犬を殺す誰か誰か

 3年前の7月7日、七夕の日にお引っ越しをしました。といっても同じマンションで2階上の部屋へ移動しただけなのですが、これが予想以上の大仕事。もちろん運搬は大手引っ越し業者に任せましたが、節約のため荷造りと荷解きは我々夫婦でやることにしたからです。

 愛犬「白米(はくまい)」(白プードル、オス、当時9歳)は、荷物に押しつぶされたら大変なので馴染みのペットショップに2泊3日で避難。ついでに可愛いお嬢さんにシャンプーとカットしてもらって上機嫌で戻ってきたましたが、その後がいけない。

 同じ建物内とはいえ、新居はかなり間取りが違いました。そのうえダンボール箱がまだ山積みで足の踏み場もありません。唯一自分の臭いがするものといえば普段寝ている枕だけでした。さぞかしショックを受けたのでしょう。まず、片時も我々夫婦の側から離れなくなりました。

 僕がトイレで用を足しているときもドアのすぐ外でクンクン鼻を鳴らしていました。玄関から一歩でも出てドアを閉めようものならキャイーン鳴き始める始末。トイレ用シーツを広げておきましたが、ちょっと目を離した隙に段ボール箱や家具にしっかり「お印」をつけていました。おいおい、ここはピカピカの新居だぜ。

 しかし考えてみれば、初めての匂いがする住処に順応するのは犬には相当なストレスに違いありません。我々夫婦でさえ疲労でイライラが募りましたから。犬にとって転居は飼い主の身勝手でしかありません。その事に気がつくと、多少のことは目をつぶってお互いに「頑張ろう」という気持ちになりました。
 引っ越しや転勤などで大切な家族の一員であるはずの犬を捨てる人がいます。夏休みのリゾート地で子供の遊び相手にペットショップで子犬を買い求め、休暇が終わったら放置して帰ってしまう心ない親さえいるご時世です。野犬化したペット犬の末路は悲しい。

 環境省によれば、飼い主に捨てられ自治体に引き取られた犬は約3万2555頭(2019年4月1日~2020年3月31日)。2011年の約8万頭からかなり減ったとはいえ、まだ5600頭以上が殺処分されています。背景にはペットブームに乗って人間が繁殖させ人間が殺すペットビジネスの闇があるのです。
 以前、私は『犬を殺すのは誰か』という告発の書の解説を書かせてもらったことがありました。本の著者はジャーナリストの太田匡彦さん。それがご縁でお付き合いをさせていただいています。溢れんばかりの愛をくれたワンコに対して人間が出来ることは最後の日まで寄り添うことです。何度お引っ越ししても君とはずっと一緒にいるよ、白米くん。
               (読売新聞「交遊記事記事に一部加筆)
 


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