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コロナ対策でニューヨーク市で「アベンジャーズ」が登場したわけ

 東京オリンピックと総選挙前の見苦しい政争でコロナ対応が後手後手に回っている日本では、ワクチンを受けたくても受けられない若者が長蛇の列をつくりました。アメリカでも若者のワクチン接種は進んでいませんが、行政の対応は月とすっぽんほど違います。

 9月の新学期を迎えたニューヨークでは、若年層へのワクチン接種を促進がするためビル・デブラシオ・ニューヨーク市長がユニークな策を発表したと地元密着型の日本語ニュース紙『週刊NY生活』(9月4日号)が伝えています。

 10代の接種者限定でマーベル社のコミック本『アベンジャーズ』を無料で提供するというのです。12歳以上の若者の新型コロナウイルスのワクチン接種を促すことで感染力の高いデルタ株のまん延を抑制するのが目的だそうです。

 同紙によれば、 人気コミック本が受け取れるのは、SOMOSコミュニティ・ケアが運営する接種会場で、タイムズ・スクエア、ブルックリンのマリア・ヘルナンデス公園、ブロンクスの東149丁目368番地の3か所。  

 また、7月末から市が運営する接種会場で1回目の接種を受けた人に100ドル(約1万1000円)のプリペイド型デビットカードを支給し始めたところ、その後10万人以上が接種を受けていたことがわかったとのことです。そのほとんどが2回目の接種も受けているとのこと。接種呼びかけキャンペーンに何億円もの税金を費やしている明らかに明らかに対費用効果が高い。

 また、市職員への接種や毎週の検査を義務付けると発表してから1週間以内にワクチンを接種した人は40%も急増したそうです。

 米国ではワクチン接種に懐疑的な保守層の多いフロリダやテキサス、ミズーリなど南部の州でデルタ変異株による感染拡大が急速に進んでいます。すでにビジネス再開に踏み切ったニューヨークなどリベラルな市や州では感染の再拡大を防ぐためにあり様々なインセンティブ策を打ち出しているのです。

 人口842万人のニューヨーク市の1日当たりの新規感染者数は7月頃から再び増加傾向に転じ、同記事によれば、8月30日時点で1805人。ワクチン接種は全年齢で、接種接種を含めても、64・9%に留まっています。

 イギリス由来のアルファ株をはじめ、ベータ(南アフリカ)、ガンマ(ブラジル)、日本でも急速に感染拡大しているデルタ(インド)、イータ(イギリス)、イオタ(アメリカ)、カッパ(インド)、ラムダ(ペルー)そして日本国内でこのほど初確認されたミュー(コロンビア)など、新型コロナウイルスの変異はこれからも続き、人類とコロナウイルスの戦いはながびきそうです。

 今のところ最善策は、ウイルスの力を削ぐ効果的ワクチン開発・接種で変異株と共存する道を探るしかありません。そんな「ウィズコロナ」の時代が到来するまでの当面の課題は、以前にも書きましたが、やはりワクチン接種を急ぐこと、そして多国間協力によってワクチンを世界に公平に分配することです。日本がワクチン接種でG7中最下位なのはいかにも見劣りがします。

                (写真はcnn.co.jp)

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