止まらない文通

かれこれ3年くらい続く文通の人がいる。会ったことがない方なのですが、ふいに、返事が送られてきて、ふいに返す。一番初めは「はじめまして」から。僕の映像作品を見てくださった方が送ってくれた一通のメールから。時々作品を見ていただいた方から感想のメールをいただく。「ありがとう」のお礼のメールを返信して、多くの場合はそれで終わる。そのあと、この文通は「どういたしまして」という返事が返ってきて、「もうすぐ夏ですね」と返す。それからというもの季節の話、食べものの話、仕事の話、旅の話、小説の話、生い立ち、など、止まることのない返事が行き来している。なんとも優しい返事が返ってくるので、こちらもその雰囲気にすっかり気持ちが安らいで、普段の自分では書きそうにない優しい言葉の返事をする。なんだか短編の詩集のような文章。前後には仕事の業務連絡のようなメールがたくさんで、うんざりするような「ただただ伝達されているだけの言葉」が並ぶ中、いつものピン!という受信の音でふいに送られてくる。お互いのメールには最後の数行にいつやめてもいいような気遣いがある。性別もわからない。(おそらく女性なのではないかと思うけれど、それはどうでもいいかなあと思う) 年齢もわからない。僕は本名だけど、相手の方は愛称(メールとかSNSとかで使う愛称)のまま。ふいに送られてくる返事の頻度はまちまち。3日後のこともあれば1ヶ月後の時もある。1年経っても返事が帰ってこなかったらどうするのかなあ、と考えるようになった。なんとも、ふわふわと風のようで、春のような陽気のメール。不思議な、止まらない文通です。