法隆寺の百済観音と救世観音
法隆寺の宝物が収蔵展示されている大宝蔵院に向かうと石の板が敷かれたフローリングの床のようなすっきりとした中庭の奥の建物の正面に扁額が見える。これ以外の装飾や文字がまったくなく、この扁額の文字だけが目に飛び込んでくる。
補陀落
と書かれてある。チベットのポタラ宮の名前に使われたポタラの発音を漢字に置き換えたもので観世音菩薩の住むところを意味する。
目を左右に向けると両翼となる建物が庭を取り囲んで建っている。その中には国宝の玉虫厨子や数多くの貴重な仏像や文書が展示されている。
大宝蔵院の中央に視線を戻す。この扁額の下に大扉が見える。その向こうには百済観音という観世音菩薩だけが安置されているのである。
百済観音は長身でスリムでしっかりと立っている。御尊顔を仰ぎ見て礼拝し建物を出る。
大宝蔵院を出ると公園のような広場がありその先に土塀がある。そこを左に曲がると道の先に夢殿の屋根が見えてくる。この通りを歩いていると古代の別荘地を歩いているような楽しい気分になる。
夢殿に近づくと六角堂の形が目に飛び込んでくる。春と秋の2回だけ御開帳される救世観音を拝む。数百年も閉ざされていた扉を開けたのは、あのフェノロサだ。金色に輝く救世観音がコロナ禍のこの世を救ってくれている、そんなことを信じたくなる荘厳さに満ち溢れている。
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