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【体験ピアノレッスン物語】2.ショパンのスケルツォ第1番冒頭を格好良く弾くには?→リズムは大切なスパイス

☆毎回、架空の生徒さんに登場して頂き、対話形式で架空のレッスン物語を進めて行きたいと思います。実在の生徒さんとは一切関係はありませんのであしからず。
🎹レッスン曲目 ショパン作曲 スケルツォ第1番 作品20より


ピンポーン、ピンポーン。

(ワンワンワン🐶)

呼び鈴がなった。

居間で愛犬ゴンちゃんが呼び鈴に反応する声が薄っすら防音室に聞こえる…

(☆ちなみにゴンちゃんはピアノ部屋に入れません🐶🐶🐶)


早杉 
「はじめまして、早杉拍子(はやすぎ・ひょうこ)です。今日は宜しくお願いします」

佐々木 「どうも、はじめまして。佐々木世寿です。遠いところありがとうございます。今日は宜しくお願いします。」

やや緊張ぎみな生徒さんがピアノ室に入ると、そこには2台のグランドピアノが違い互いに配置されていた。初めて見る配置。

黒いグランドピアノの方ではなく、茶色いピアノの前に座ってもらうよう講師に促される。

佐々木 「早杉さん、車でここまで来る道順、簡単にわかりました?」

早杉 
「はい、ナビ見ながらきたのでバッチリでした。看板も出ていたのですぐここだってわかりました。」

佐々木 「実はこの辺りは昔暴走族が多い時代に作られたので通り抜けできない道が結構あるんですよ。」

早杉「どおりで、くねくねした道や公園が多いなあとは思っていました。」

佐々木「そうなんですよ、道の真ん中に減速を促すロータリーがあったりとかね。時代を感じますね。えーさてと…今日は先日お知らせ頂いた曲をお持ちでしたか?」

早杉「はい、メールに書いたショパンのスケルツォ第1番を一応持ってきてみたのですが、でも、、まだ弾けていなくて不安で。。」

佐々木
「うまくいかないところがあるんですね。もし弾けていないところがある時も、練習法を考えるヒントになると思うので、大丈夫ですから、安心してくださいね〜😌

…じゃあ早杉さん、まずは最初から中盤の歌うパートが終わるまでを弾いてみましょうか?」

不意に、今まで明るかった室内にシーンと言う時間が訪れる。

生徒さんは、初めの1音を出す時はだれしも物凄く緊張される。

ただ、この教室では、講師が横にピタッとくっついていない。それに二台のピアノの配置のおかげか、あまり先生の様子は見えず、そのせいかピアニストの先生に聴かれていることがあまり気にならない感じがした。


自分と先生とピアノだけの、静かな午後のピアノ室。赤茶色い猫脚の、アンティークなピアノ。

(これ、どこのピアノなんだろ?)

とか考えつつ、勇気を出して出だしの和音を響かせた。

早杉の自宅のピアノより軽く、反応が速く感じた。
ただ、強い音を叩こうとするときつい音になって跳ね返ってきた。

ピアノがそれ以上力任せは駄目よって教えてくれている感じがした。

ゆったりした中間部ではピアノの木の響きが心地よくかんじられた。

気がついたら指定のパートの終わりまで演奏は終わっていた。

佐々木「ありがとうございます😊不安っておっしゃっていたけど、なかなか良かったですよ!今演奏してみて、改めてどんな感じでしたか?」

早杉 「なんていうか、サラッとしてしまうというか。右は8分音符の音がグチャグチャってなってしまいました。ゆっくりだと弾けると言えば弾けるんですが、なんだかうーんて感じで。結局今日は普段より速く弾いてしまいました。笑。」

佐々木 「なるほど。この速いパッセージはどんな人でもやはりなかなか難しさがありますよね。きっとさらに格好良く素敵になると思いますよ。」

早杉 「どうしたら良いですか?」

佐々木「そうですね、片手ずつ色々あるので、試してみましょうか?」

まずは右手から。9小節目からの勢いの中で指を動かす使い方が少しうまくハマってない感じがします。右手のミ♯ファ♯シレラ♯ド♯シレファ♯シ とひと息で弾きたい時は
最初の2音から練習します。

まずは膝に手を置いて、そこからそのままひと息に「ミ♯ファ♯」と勢いの中で
2音弾けるか試してみましょう
😊

この時、鍵盤の上で準備したりせず膝から一気に弾くのがコツです。遅すぎたり勢い良すぎたりせず、丁度よくミ♯ファ♯とご自分が聴き取れる速さを目標にしましょう。

早杉が、恐る恐る指を準備して一本ずつ、ミ♯、ファ♯と弾いてしまう

佐々木「あ、それだとワレワレワ、ウチュウジンみたいにバラバラに…」

早杉「すみません🤣つい。。膝に手を置いてからそこからひと息って…こんな感じですか?」

今度は速すぎてミ♯ファ♯がくっついてしまう。

佐々木「ありがとうございます。今のはすこし速かったですかね?
では、ご自身がそれよりは少し遅いかな?って感じるくらいだとどうなりますか?

今度はミ♯ファ♯ッと丁度よく自分にも聴こえてきた

早杉 「あ、今の、なんか良かったかも!」

佐々木
 「はい、今のは丁度良かったですね!

今のスピード感を良く覚えておきましょうね。ご自分の耳で、出した音をまずは良く聴こうとすることがピアノの練習では何より大切な事です☺️

では次は音を増やして行ってみてください。

次は、ミ♯ファ♯シ、ミ♯ファ♯シレ、ミ♯ファ♯シレラ♯、…という風に音を増やして行きましょう。ミ♯ファ♯シレラ♯ド♯シレファ♯シまでひと息で弾けるまで増やしていきましょう。

はじめのミはアクセントをつけず、鍵盤のそばから弾く事、いずれも膝から手を出してひと息を忘れないようにしましょうね。」

音が増えていくと、少しずつひと息に弾くのに指も慣れてきた。

早杉「前よりは大分ひと息の中で弾ける様になってきたかも!😊」

佐々木「ではその先の13小節目2拍目からのパッセージにまいりましょう。

ここはバラバラになりやすいですからミラ♯ レシ ソド♯ ファ♯レ ド♯ミ♯  シファ♯ ミラ♯ レシと、このパッセージの最後のシ!に至るまで2音ずつ和音でとって這う様に進ませてみてください。その時の迫ってくる恐い感じが結構大切です。
浮いてこない様にレガートで練習しましょう。

コルトー版にある練習法も参考になさることを個人的にはお勧めします。和音を短音の元の形に戻して今の這うような感じを忘れずに練習すると弾きやすくなると思います。

ここまで9小節目から全体をさらに少しだけゆっくり練習してレガートの意識がほんの少し入ると荒さが整うかもしれません。全体軽いのですがほんの少し。10小節目や12小節目のアクセントも忘れずに。そのゆっくりを早送りして弾いている感じがインテンポです。

早杉「ほんとだ!なんかプロっぽい音になりました」

佐々木「では右手は出来る様になってきたので、今度は9小節目からの左手の練習に移ります。左手はまず拍子の中で弾けますか?スケルツォのテンポは基本1小節を1拍でとるようにして8小節単位でひとまとまりになるようにしましょう。

ここは2小節➕2小節➕4小節のまとまりで弾きます。10小節目、12小節目は余力で弾きましょう。13小節目からの4小節間の和音は出来るだけ低空飛行で弾いてみてください。

そして、ここのリズム感の要になるのがsfです。
これに同時に踏む感じの短い右のダンパーペダルをつけて補ってリズムを利かすと引き締まります。
sfとある所はこのペダルがあった方が断然弾き易くもなりますよ。」

早杉は飲み込みが早く、みるみるうちに左手をペダル付きで拍子の中で弾ける様になった。ペダルを軽く踏むだけでこんなにリズムが効くなんて発見だった。しかもsfと同時に踏むので全然タイミングは難しくない。

早杉「私、ペダルってついいつも後回しにしてしまって、前の先生にもペダルはできる様になってからでいいからって言われていたんです。でも、このペダルはつけた方が断然弾き易くなりますね!」

佐々木「そう思って貰えたらうれしいです。
先生方により色々なお考えがあるでしょうが、ペダルは私は音楽が必要とするならはじめからつけるスタンスで指導しています。
闇雲に踏んでも必要ないところも勿論存在するでしょうし、どの時代の音楽ということでも控えめにした方が良い時もありますが、
音楽が導いてくれる時はつけた方がかえって指も体も弾き易くなることが多いと思っています。

また足の感覚をできるだけ自然に身につけるには、どういう時にペダルを踏むのかハーモニーに対する耳と足の経験値がひつようになりますから、できるだけ試して見ることをお勧めします。

では、左手も出来てきましたので両手に戻してみてください。
左手のリズム感に右手を乗せる様な意識で弾いてみてくださいね。

…早杉は自分の弾く音を聴いて驚いた。

両手を9小節目から合わせるとさっきはじめに通して弾いていたのよりもっとパンチの効いたメリハリある音楽がそこにはあった。

…しかも、これ自分で弾いているっていうのに!

…めちゃカッコいい!

早杉「私、こんなふうに弾けたこと一度もなかったです。やっとスケルツォらしい感じでこの出だしが弾けました!」

佐々木「それは良かったです!本当にみるみるうちに別人の様な演奏になりましたね!リズムはやはり音楽の大切なスパイスですね。
この調子で練習していけばきっと他のパートももっと素敵になると思いますよ!

…おっといけない、そろそろお時間が来てしまいましたね。」

早杉「自宅に戻って早速今日のレッスンを他の場所にも応用してみます」

佐々木「ぜひ参考になさってください。では今日はこの辺で。ありがとうございました。」

早杉「ありがとうございました!」

早杉が外に出ると、鶯が鳴いていた。

教室近くにある新緑が茂る美しい国見ヶ丘の欅の並木路を気分よくドライブしながら帰る事にした。

(終)

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