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短歌

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記事一覧

しかた9

谷地

みぞれにぬれてちょうど棒のような帰路に本日の才能ある雀蜂やみなさん

こわいということもないな白身が一瞬の地層に身代わりも立てられるし

なんとも鱏のあくびのような広い夜だ胡桃をよく茹でたお湯が残る

外套に覆われた遠くのふたりぐみは落ち着いた犬どうしに見える

堰を強く流れ落ちる川の水を見下ろすと職員も見ている

めひかりの胃の中の星座はてらてらとし ここの酸素の具合も見事だ

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a

この物語は、犬は不在のままで、街は気温の意地。それでも鉄は、旅の支度だ。

錆は判断に等しくて、片方は昼、片方は右手。でも花が足りない。足りるのは道。

音は骨髄からやって来た。だから看板を外せば支店で、この街の意地。

太陽は骨で、それは備え付けてあって、かたちを整えると、金属バットになる。

月は古く、満月はもっとも虹で、もっとも古い虹は犬。もちろん最初の日から水。

安心すると、やっぱ

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しかた その4

アリウム・ギガンテウム/志賀野左右介

それと同時にカブトガニの忘れっぽさが色相を埋めて揖保乃糸

内臓がうまく破れる蹴り方をなんとなく知っていることが武士

アリゲーターガーの介護を熱心に この歯並び、忘れない!私

Empty glass投げて寄越す図/伊藤若冲(寛政二年) ぐずぐずするな

元日本代表の子ども 日本代表 鰐の絵に目薬をさす

甘えの中で傘は刀に あおさぎは風神を断ったことがあ

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しかた その3

筆談

コンスタントに叱られて業務スーパーは立派な地下茎を手に入れる

シャンデリアに豆腐が引っかかっているのを気にしなかった人の集まり

わかりますわかります ライターが電車の風で点かない場面ですよね。 え?

粗挽きの良い肉の良い部位のトンネルを猫の歩度であたかも

駅のベンチで人の顔が潰れている ひとりだけなら別にいいのか

蚤くらいのファミリーレストランを性的に噛み切るための休暇 損

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tower 2022/03/24 3:04

tower

I

たちあがったからだを、からだがのぼって、あたまのうえでとほうにくれた、

こどもはなんねんものびて、そのほうこうに、なんねんもたわあがのびた、

かんでんちがころがって、はれつしたころには、だれのへやでもなくなってた、

かいだんがたくさんあるから、にんげんのからだは、まがったりするてかんがえられた、

あんごうかしたことばを、そのままおとにするひとのしぐさが、あたらしいいみに

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sewers 2022/03/24 2:59

sewers

I

これからてばなしたら、なんねんたっても、そのあいだのからだがあった、

からだがずっとあるへやの、きこえたおとのほうに、あたまがあった、

きこえたおとの、どっからがからだなんか、ようわからへんくて、めえつむった、

まっくらなとき、しんねんみたいにからだがあって、あえてしんじることもなくなった、

こえがはじまってから、にんげんを、にんげんのきょうかいせんみたいにかんじた、

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bad vibes forever 2022/03/20 10:19

bad vibes forever

I

めのまえもそのうしろも、どこまでもぽかんてしてて、ほしがみえてた、

よるにみたほしは、よるみたことと、ほしみたことがわかちがたくて、からだがあった、

うちゅうとか、あすふぁるとにねころぶからだが、ひんやりしてて、がらんてしてた、

ひだりめは、ふだんからみぎめのちかくにあって、みてるもんもよくにてた、

ちきゅうから、どっちみてもうちゅうがみえて、そ

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sewers III

きのうのごみで、きょうおもいだしたかぎりのきのうを、おもいだした、

ほっといたてえもあしも、やっぱりからだについてきて、なまぬるかった、

ちいをろかして、なみだにしてた、そのあいだも、あたまにからだがついてきた、

いつのまにか、はしろうとせんくなった、そのさいしょのひとが、よこになった、

ぬいだら、うらがえって、そのまま、きてたひとのかたちで、よこにあった、

めえつむってることを、めえつ

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秋馬さんの写真とぼくの短歌4

めのまえも、めえのうしろも、どこまでもぽかんてしてて、ほしがみえてた、

よるにみたほしの、よるみたこととほしみたことが、わかちがたくて、からだがあった、

うちゅうとか、あすふぁるとにねころぶからだが、ひんやりしてて、がらんてしてた、

ひだりめは、ふだんから、みぎめのちかくにあって、みてるもんも、よくにてた、

ちきゅうにいて、うちゅうぜんぶのほうこうがみえてて、それがまちがってたらさみしい、

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しかた その2

名付ければ名付けるほどに身悶えるブルドーザーを置き去る夕べ

お別れの曲がり角から加速する肉蝿 いきなり肥満する僕

先輩が登る真っ青な金網。さいころとさいころが復縁する

重火器の名前にくわしい友達が格好悪い時計をなくす

井戸からの距離で何でも表そう!気が滅入るほど甘いビル風

日差しから突き放されてBE KOBE BE KOBE? 馬鹿にしているのですか

まんまとウニに突き刺さった藁人形の

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秋馬さんの写真とぼくの短歌 3

てんじょうにぶらさがった、そのぜんぶ、とはべつの、いすがおかれて、ひとがすわった、

ぴいたいるのゆかと、そのゆかににてた、そのまわりのゆかの、そのまわりのゆかににてた、

いすとからだが、これからは、いすにもたれたからだにみえて、からだはいすにもたれた、

ゆかとかべの、そのちがいの、そのりゆうはほとんど、そのひとのかたちと、よくにてた、

たちあがった、からだと、いすと、べつべつになったからだ

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秋馬さんの写真とぼくの短歌 2

ふねからは、ふねがみえて、みてるだけで、ひみつがばれたみたいにかんじた、

みみからおちた、こおどれすのいやほんの、こつんておとが、さいしょにきこえた、

すまあとふぉんのらいとで、てらしたたいようが、かけわすれてた、めがねにみえた、

とおりすぎたなみを、あした、おもいだしたら、そうやって、おもいださへんようにすごした、

もう、もどれへんくなったありが、からだをはって、ひふのかたちが、ちょっと

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秋馬さんの写真とぼくの短歌 1

こえと、そのこえのさきがはなれてって、ひとつのからだと、ふたつのこたえ、

とおなって、いつのまにかわすれてて、もっととおくから、ゆっくりみえた、

にっきにかいたことだけ、にっきにかいてあった、いままでずっと、

もう、だれもおもいだせへんことが、このせかいでたくさんあった、

ちゃんとそう、おもいだしたら、あめがふってから、みちがあめにぬれてた、

ゆめからさめたみたいに、ゆめからさめて、でん

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奥村鼓太郎さんとぼくの短歌

つめたさの岡田将生のほほえみに似てふくらんでいく昼日中

散らばった枯れ葉を掃きつづける人へ強風はまた枯れ葉を散らす

日本はいよいよ終わり 顔のいい声優ばかり人気になるし

ナードというだけで評価を高くする私の心にも冬は気づいている

錆びた釘が飛び出しちゃっているベンチ そっぽを向いてる そっぽから座る

そう見ればぜんぶ不審に見えてくる網棚の上の荷物に日射し

雷の動画に「すぐ寝れました!」

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