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新曲「熟女」制作中に感じたことを記録します

近頃は作曲より他人の曲をアレンジしてベースだけで演奏する「ソロベース」の創作が多かったのですが、自らを奮い起こし重い腰を上げて約1年半ぶりに新曲「熟女」を制作しました。

今回の新曲はリズムが3連符のムード歌謡っぽい曲です。ムード歌謡ってこんな感じだよなぁというイメージをたよりに制作しました。歌詞は中年女性の悲哀について歌っています。

・やまもと せいげん / 熟女

余計なことは言わずに「作曲しました。聴いてください!」で済むことなのですが、今回は制作中に色々思うことがあったのでそのことを忘れないように記録しておきたいと思いました。

・楽曲制作と料理は似ている?

今回作曲して感じたことは、「DTMで音楽を創作することは料理に通じるものがある」ということでした。

私は以前DTMのレッスンを受講していたことがありました。そのときの講師に私が制作した曲を試聴していただいたときに言われたことを思い出しました。講師曰く、

「曲を聴かせてもらいました。自分自身で聴く分には問題ないですが、他人に聴いてもらう目的でこの曲を有料で販売してもおそらく誰も買わないでしょう。
聴かせてもらった曲は料理に例えるならば家庭料理みたいなもので、自分自身または家族が食べるならこのクオリティーで問題ないのですが、お金をもらって他人に料理を提供するならそれ相応のクオリティーでないといけません。
プロの料理人が提供する料理は良い食材を選び入念な下ごしらえをします。そして修行した腕前を駆使して調理することでようやくお金が取れる料理が完成します。
プロが作りメジャーレコード会社が販売している曲は録音に時間も手間ひまもかかっています。自宅で作曲の全てを行うDTMのクリエイターもプロと同じようにやることはできなくても作曲にはそれなりに手間ひまをかける必要があります。
自分で作曲するDTMのクリエイターは制作した曲の良し悪しを自分で判断しなくてはなりません。自分が制作した曲は本当にこれで完成なのか、改善する箇所はないかと常に内省してください。」

だいぶ前に言われたことなので所々記憶が曖昧なのですが大体このような発言だったと思います。

・料理の素人がプロの味を再現しようと意気込む

今回の作曲はまさに料理のようでした。市販の麻婆豆腐の素がなければ麻婆豆腐を作れない私が、自分の感覚だけをたよりにレシピなしで食べたことがない陳建一の麻婆豆腐を作ろうとしたといった感じです。料理の素人のくせに一流のプロの料理人が作る料理と同じものを作ろうと意気込んだのです。その心意気は立派ですが実力が足りなければ失敗は明らかです。

◎高過ぎた目標とやる気が萎えた二つの原因

新曲の完成に約一年半も費やしてしまった原因は、自分で勝手に作曲の目標設定を高くし過ぎたせいでした。成長のためにはそれも必要なのでしょうが、ハードルが上がり過ぎてやる気が萎えてしまいました。

やる気が萎えた原因は二つあって、一つ目は作詞でつまづきました。

・困難を極めた台詞作り

私は作詞が特に苦手で新曲制作ではいつも作詞で苦労するのですが、今回の新曲「熟女」では間奏で初めて台詞を導入しました。

わざわざ自分で難しくする必要はなく台詞なしで制作していたらもっと早く完成したのかもしれませんが、今回の新曲はどうしても台詞を入れたいという欲求がありました。間奏に台詞を入れることでこの曲はさらに演歌・歌謡曲っぽくなるはずだと思ったからです。自分には困難な課題であることは百も承知で今回は台詞作りに挑みました。

予想通り台詞作りは困難を極めました。歌詞制作以上に言葉が出てきませんでした。言葉が自然に出てくるのを待っていても埒が明かないので無理やり言葉をひねり出そうと頭をひねって考えても一向に言葉が浮かびませんでした。言葉が全く出てこないことで制作が頓挫してしまい作曲から一旦離れることにしました。

やる気が萎えた二つ目の理由は、曲のアレンジに行き詰りました。

・聞いたことがない未知の楽器の理解に手こずりました

私は今までずっとロックの世界にいたので自分が作曲した曲はボーカル、ギター、ベース、ドラムが演奏するという想定で制作しています。

しかし演歌・歌謡曲ではボーカル、ギター、ベース、ドラムの他にも多くの楽器が使用されます。ピアノ、管楽器、ギター、ベース以外の弦楽器(ヴァイオリン等)いわゆるオーケストラです。

私は今回新曲を制作するにあたり自分が好きな演歌・歌謡曲を改めて聞き直しどのような楽器が使用されているのか分析しました。耳で聞きとって理解できた楽器もありましたが、聞いたことがない音色もありその音色は何の楽器が奏でているのか全く理解できませんでした。

メジャーレコード会社がリリースした歌手の曲はかなりの数の音色で構成されていました。メジャーでないインディーズの歌手の曲でさえそれなりの数の音色が入っていました。どちらも音色の数だけトラックを使用しているということです。

・追加していく作業に戸惑いました

人によってアレンジの仕方は様々でしょうが、私のアレンジは削る作業が多いです。最初にアイデアを思いつく限り出してその中で本当に必要なものは何かということを考察します。例えばギターソロは二本でユニゾンさせようと思ったけどやはり一本でいいやとか、不必要だと思ったものは排除してこれは本当に必要だというものだけを残して仕上げていきます。

今回は逆で追加する作業が多かったです。曲のデモ音源が完成したとき、私は自分のデモ音源とプロが制作した作品を聴き比べました。私のデモ音源はプロが制作した作品と比べて音色が全然足りませんでした。曲で使用する楽器が足りないだけでなくシンセを用いた効果音のようなものも不足していました。

そこで私はプロの作品を参考にして今まで自分がほとんど使用したことがない楽器と効果音を追加することにしました。どんな音が出るのかわからない楽器と効果音を追加するに辺り、私は現在使用しているDAWに内蔵されているプラグインシンセの音源の中からプロの作品で使用されていると思われる音色と似たものを探すことにしました。

そしてようやく探し当てた楽器や効果音を用いて曲中にボーカルの歌メロ以外のフレーズを入れました。しかしこのフレーズは本当に追加すべきかどうかと悩みました。この悩みでアレンジが行き詰まることになりました。

・自分は素人だ。プロと同じことができるわけがない

私の悩みの原因は、自分が制作している曲をプロの作品と同じクオリティーにしたいという思いが強すぎたからでした。制作が一向に進まずあきらめようかと思いましたが、しょせん素人がプロと同じことができるわけがないのだから自分がこれで良いと思ったことは積極的に取り入れよう、それで失敗したなら仕方がないと開き直ることで悩みを取り払いました。

未知の楽器、効果音を追加したことで演歌・歌謡曲っぽい雰囲気は増しましたがそれでもプロが制作した作品にはまだ及ばないというのが私自身の正直な感想です。

・楽曲制作は奥が深い。難産の末に誕生した「熟女」

今回の制作は、普段何気なく聴いている音楽は時間と手間ひまをかけて制作されているものであるということを自ら作曲することで痛感しました。そして改めて演歌・歌謡曲の奥深さを垣間見たような気がします。

難産の末に誕生した「熟女」が多くの方にご支持、共感されることを願っています。

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