飽きない味
お豆腐
もしも胃袋が幾つもあれば、ずっと食べ続けていたいものがある。
例えば近所の豆腐屋の「にがり絹豆腐」。
この豆腐に塩をかけて、ビール(あるいは日本酒)とだけで、いつまでも食べていられる。
そう、飽きないのです。
飽きないって、大事ですよね。
レバーケーゼVSオムレツ
例えばドイツの厚切りレバーケーゼ。
食べ始めて、みくちぐらいまでは「うまい、うまい、うまい」と頬張る。
しかし、しばらくしてふと気付くと、まだお皿の上にちょっと残っている。
そのとき、「さめる」瞬間がやってくる。
完食前に、飽きている自分がいる。
そんな自分を自覚するとき、やたらさびしくなる。
その点、フランス料理は違う。
例えばふつうのブラッスリーのふつうの半熟オムレツ。
食べ終わって、それでも「自動的に」パンをちぎって、お皿に残った卵の汁を拭いてしまう。
ぜんぜん飽きない。
そして楽しい気持ちのまま、エスプレッソを注文する。
素晴らしいと思いませんか。
(ちなみにオムレツに合うワインって、何でしょうね。いつも悩みます。)
いつもの美味しい味は、実は、いつも同じ味ではない
ところで以前、テレビで九州のラーメン屋さんが紹介されていました。
お店の御主人によると、いつも同じ味のままだと、常連客が「あれ?味を変えた?」といぶかしがるのだとか。つまりいつも同じ味のままだと、常連客は以前に食したときの感動に比べて、ある種の違和感を抱くらしいのです。
仕方がないので、御主人はいつも少しずつ味を変えるそうです。
似たような話をもうひとつ。
私が常連にしているバーがあります。いつ行っても美味しいのですが、マスターによるといつも少し変えるのだそうです。客の疲れ具合によって、その日の天気によって、同じドライマティーニにしても、配合の具合、ステアの回数などをほんの少し変えるのだとか。
いつもの飽きない店は、いつも同じものを出すところではないのですね。
夏の食生活必需品、南仏風タブレ
さて夏です。
とうぜんのことながら夏バテです。
とうぜんのことながら台所で火を使いたくありません。
なるべく火を使わずに、飽きずにたくさん食べることができるものを作ろうと心がけます。
そんな私のオススメは、南仏風タブレ(taboulé)。
フランスに留学していたときにその存在を学びました。
フランスの夏、エアコンがないパリのアパルトマンは暑く、食欲が減退します。そんなときに遭遇した、このタブレなるものは私にとってまさに救いの神でした。
元祖レバノン・タブレはたくさんミントを使うので、日本ではちょっと難しいのですが、南仏風なら簡単にできます。
缶詰もしくは紙パックのカットトマトを買ってきて、ボールにあけて、玉ねぎとニンニクのすりおろし、レモン汁、そしてオリーブオイルを入れてスープをつくる。これにキュウリを小さく刻んだのを入れて、スムール(クスクス)をそのまま調理をせずに入れる。ひたひたになるぐらい。それから適宜に、塩・砂糖・胡椒・各種ハーブ・セロリなどを加えて、お好みのお味に。そして混ぜる。そして一晩、冷蔵庫に放置。
これがバクバク、いけるのですなあ。
口あたりが心地よく、食べても食べても飽きません。
是非、冷やした白ワインと一緒にお試しください。
美味しさに夢中になって、殺人的な陽ざしが気にならなくなりますよ。
そしてまた、人生に飽きる予感への恐怖を、束の間、遠ざけることができもします。
Bon appétit !
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