1.4 微分

後藤憲一『現代科学における数学概説』(共立出版、1981)の勉強ノート。

前回

この節は項分けされていないのが整理する上で不便。

数学概説では微分係数や導関数等の概念は既習とするとされ、定義さえ省略されているが、定義くらいは書くべきであろう。$${n}$$階偏微分可能は全ての$${n}$$階偏微分係数(偏導関数)の存在を意味するということに注意。高階の微分は帰納的に定義する。

$${\frac{df(x)}{dx} = f'(x) = f^{(1)}(x) = Df(x) = \lim\limits_{h \to 0} \frac{f(x + h) - f(x)}{h}}$$
$${\frac{\partial f(\bm{x})}{\partial x_k} = f_{x_k} = D_{x_k} = \lim\limits_{h_k \to 0} \frac{f(x_1, \cdots,x_{k-1}, x_k + h_k, x_{k+1}, \cdots) - f(\bm{x})}{h_k}}$$

$${C^n}$$級関数、滑らかな関数という概念はここで説明されるべきだが、数学概説では後回し(Schwarzの定理の後)となっている。

工学教程・微積分では微分の性質として線形性、合成関数の微分、逆関数の微分が説明されるが、数学概説には無し。逆関数の微分は多変数における陰関数定理の1変数版だとして省略するという考えもあるかもしれないが。逆関数の微分は合成関数の微分から証明出来る他、$${dy/dx = 1/(dx/dy)}$$という形式的な理解も出来る。

線形性
$${(f(x) + g(x))' = f'(x) + g'(x)}$$
$${(c f(x))' = c f'(x)}$$
合成関数の微分
$${(f(g(x)))' = g'(x) f'(g(x))}$$
逆関数の微分
$${(f^{-1})'(y) = \frac{1}{f'(x)}}$$

Leibnitzの公式(Leibnitz則)
$${(f(x)g(x))' = f'(x)g(x) + f(x)g'(x)}$$
$${(f(x)g(x))^{(n)} = \sum_{k=0}^n {}_{n}C_{k} f^{(k)}(x) g^{(n-k)}(x) }$$

l'Hôpitalの定理
$${x \to a}$$で$${f(x),g(x)}$$が共に$${\to 0}$$もしくは$${\to \infty}$$の時
$${\lim\limits_{x \to a} \frac{f(x)}{g(x)} = \lim\limits_{x \to a} \frac{f'(x)}{g'(x)}}$$

Rolleの定理
$${f(a)=f(b)}$$ならば、$${f'(\xi) = 0}$$となる$${a<\xi<b}$$が存在($${f(x)}$$は$${[a,b]}$$で$${C^1}$$級関数)。
数学概説では連続かつ微分可能としか言っておらず、微分した後の連続を言っていないので、定理の前提条件が若干間違っている(後に出てくる$${C^n}$$級関数の定義も同じ間違いを含んでいる)。
また、平均値の定理の後に紹介されていたが、Rolleの定理を用いて平均値の定理が証明される筈なので、順序を入れ替えることとした。

平均値の定理
次のような$${\xi (a < \xi < b)}$$が存在する($${f(x), g(x)}$$は$${[a,b]}$$で$${C^1}$$級関数で、開区間$${(a,b)}$$で$${g'(x) \neq 0}$$かつ$${g(a) \neq g(b)}$$)。
(i) $${\frac{f(b)-f(a)}{b-a} = f'(\xi)}$$
(ii) $${\frac{f(b)-f(a)}{g(b) - g(a)} = \frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}}$$

有限増加の定理
$${A \leq f'(x) \leq B}$$ならば$${A \leq \frac{f(b) - f(a)}{b - a} \leq B}$$

数学概説は1変数のTaylorの公式の剰余項を3種類書いており、この点では工学教程・微積分より充実している。

$$
f(x) = f(a) + f'(a) (x-a) + \frac{f''(a)}{2!} (x-a)^2 + \cdots + \frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{(n-1)} + \frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-a)^{n}
$$

$$
f(\bm{x}+\bm{h}) = f(\bm{x}) + (h_1 \frac{\partial}{\partial x_1} + \cdots + h_n \frac{\partial}{\partial x_n}) f(\bm{x}) + \cdots + \frac{1}{(n-1)!}(h_1 \frac{\partial}{\partial x_1} + \cdots + h_n \frac{\partial}{\partial x_n})^{n-1} f(\bm{x}) + \frac{1}{n!} (h_1 \frac{\partial}{\partial x_1} + \cdots + h_n \frac{\partial}{\partial x_n})^n f(\bm{x} + \theta \bm{h})
$$

同次関数やEulerの定理も工学教程・微積分には載っていない。

$${\bm{m}}$$次同次関数
$${f(t \bm{x}) = t^m f(\bm{x})}$$

Eulerの定理
$${f}$$が$${m}$$次の同次関数の時
$${(x_1 \frac{\partial}{\partial x_1} + x_2 \frac{\partial}{\partial x_2} + \cdots + x_n \frac{\partial}{\partial x_n})f = mf}$$

$${\bm{C^n}}$$級関数 $${n}$$階微分可能で、$${n}$$階導関数が連続であること。$${C^1}$$級関数を滑らかな関数とも言う。

Schwarzの定理
ある領域内で$${f_x, f_y, f_{xy}}$$が存在し、連続であれば、$${f_{yx}}$$も存在し、$${f_{xy} = f_{yx}}$$となる。
これは3階以上にも拡張出来る。
$${f}$$が$${C^n}$$級関数であれば、任意の$${n}$$階偏導関数は、偏微分の順序を変えても等しい。

全微分
$${\Delta f = \frac{\partial f}{\partial x_1}\Delta x_1 + \cdots + \frac{\partial f}{\partial x_n}\Delta x_n + o(\sqrt{(\Delta x_1)^2 + \cdots + (\Delta x_n)^2})}$$
が成り立つ時、その主要部を以下のように書いたもの
$${df = f_{x_1}dx_1 + \cdots + f_{x_n}dx_n}$$
$${r}$$次の全微分という概念もある

方向微分 $${(n_x,n_y,n_z)}$$方向への変位を測ったもの
$${\frac{\partial f}{\partial n} = n_x \frac{\partial f}{\partial x} + n_y \frac{\partial f}{\partial y} + n_z \frac{\partial f}{\partial z}}$$

極小
極大
最小
最大
停留

Lagrangeの未定乗数法

参考文献

[1] 時弘哲治:東京大学工学教程 基礎系 数学 微積分、丸善出版、2015


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