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もの言わぬ戦争の語り部

今日は既刊本を紹介します。

『兵士の碑(いしぶみ)―近代大阪の民衆と戦争』
森田敏彦著/A5判・256頁/本体価格1,800円+税
2020年8月15日発行

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元高校教諭である著者が、大阪府にある466基の戦争に関連した兵士の碑を実際にひとつひとつ訪ね、4年がかりで調査しました。

兵士の碑といってもさまざまです。戦役記念碑、忠魂碑、慰霊碑など分類し、誰が、いつ、なぜ建てたかを検証し、一覧表に整理しました。その種類や、いつ建てられたかによって、その碑の表すことが違ってくるのです。

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そして退職後、平和ガイドとして大阪市内を案内する森田さんならではの、大阪市内の兵士の碑をめぐるウォーキングコースを9つ紹介しています。普段何気なく歩いている道などに兵士の記念碑があることに驚かされます。

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この本以外にも戦争に関する本を出版している森田さん。
『戦争に征った馬たち―軍馬碑からみた日本の戦争』は戦争に駆り出された馬たちを慰霊するために全国に建てられた軍馬碑から戦争を考えます。
『大阪戦争モノ語り―街かどの「戦跡」をたずねて』は大阪に残る戦争の跡、空襲で銃撃にあった弾跡や焼け残った神木、防空壕やモニュメントなどを紹介しています。

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また毎年、8月15日の終戦の日周辺にはマスコミ各社が戦争特集を行います。森田先生も先日『朝日新聞』の取材を受けられました。(8月17日付/大阪市内版23面)

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上記3冊の本からも分かる通り、大阪には多くの戦争遺跡が残っています。しかし、年月を経て管理する人がおらず劣化してしまい、撤去される遺跡が近年見られます。『兵士の碑』を作成中にも撤去の知らせがあったものもあります。戦争体験者が少なくなった今、もの言わぬ戦争の語り部は貴重な資料です。

戦争がなかったことにならないように、戦争で命を落とした兵士たちに思いをはせ、戦争の真実を考えるきっかけにしてほしいと著者はいいます。

兵士の碑 目次

第1章 大阪府内に現存する出征兵士の記念碑
 1、どんな種類の碑がどれだけ残ってるの
[ちょっと寄り道A]「慰霊」と「顕彰」
 2、だれが、どこに、どのように建てたの
 3、戦役記念碑、忠魂碑、慰霊碑は、いつ建てられたの
[ちょっと寄り道B]府内最古の碑は西南戦争のもの
第2章 大阪市内に兵士の碑をたずねる9コース
 1、西淀川区コース 「和」碑になった「戦捷記念碑」
 2、平野区コース 「爆弾三勇士」の碑と日露戦争の実相を伝える記念碑
[ちょっと寄り道C]日露戦争と大阪の部隊
 3、西区コース 今も残る「八紘一宇」塔と三菱発祥地にたつ平和の祈り像
 4、福島区コース 民家の壁に残る弾痕と6月空襲の慰霊碑
 5、鶴見区コース 4ヶ所の共同墓地に建つ戦死者の慰霊碑
[ちょっと寄り道D]アジア・太平洋戦争のなかの兵士たち
 6、住吉区・住之江区コース 紀州街道沿いに残る4基の戦争記念碑
 7、城東区コース 「慰霊塔」に戦死した同窓生をしのんで
 8、東成区コース 30年ぶりに建てられた日露戦争の「忠魂碑」
[ちょっと寄り道E]日露戦争と民衆
 9、東淀川区コース 戦死者と被爆死者をともに悼んで
[ちょっと寄り道F]占領下の戦争碑の撤去と「独立」後の再建
付録 大阪府内にある近現代の兵士の碑一覧