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第847回【圧巻人生日誌 日々是成長】838(2023/9/25)▲▲無名の先人たちの苦労に心が震えた▲▲


吉村昭の作品に

『高熱隧道』という名のノンフィクションがあります。


昭和10年代、

国家総動員法のもと突貫で建設された

黒部川第三発電所とその上流にある

仙人谷ダムの艱難辛苦の建設の様子を綴った作品です。



吉村昭作品では

最も好きな作品の一つでもあるので、

是非とも現地を目にしておきたい。

しかも来年からはキャニオンルートが開通するので、

混雑の前に行ってみたい。

そんな強い思いに抗うことが出来ず、

日帰りで『高熱隧道』の入り口まで足を運びました。


なんや、遊んどるんかい?

いや、人智の集結した歴史の舞台を

自らの足で歩いてみる高尚な営みなのです。(違)


スタートは黒部峡谷鉄道・宇奈月駅


宇奈月といえば温泉で有名な地ですが、

民法を習った人であれば宇奈月温泉事件でお馴染み。

温泉事件といっても

テレ朝の古谷一行と木の実ナナの混浴露天風呂ではなく、

『権利の濫用』が争点になった民法の重要判例です。


黒部峡谷鉄道というと

富山の地方私鉄・富山地方鉄道の関係会社と

思われている方も多いようですが、

実は関西電力の子会社。


関西電力が

黒部川上流域のダム・発電施設を建設する際に敷設した

トロッコ軌道を観光用に開放した施設なので、

社章も関電のマークに線路の断面を象ったものになっています。


宇奈月が生んだご当地ギャルは、うなじょ、という


トロッコはお安い席は窓無し、

雨が降れば吹き曝し。

それがまたこの黒部の険しさを

肌で感じることができるのですが。


牽引する機関車は2台体制


窓はない


欅平から人智の集結した工事跡を歩く


黒部峡谷鉄道の終点『欅平』からは、

関西電力の専用軌道で奥部へ。

途中急峻な山中に軌道を引けず、

約200メートルもの高低差を移動する

竪坑エレベーターで上下移動。

昭和12年にこんな大掛かりな工事を

どうやって進めたのか。

関西電力の凸型機関車(大正12年製造、らしい)


竪坑の展望台からは、

長野側の後立山連峰も一望。

しかし、

当時の工事作業員は

こんな風景に見惚れる暇など

恐らく無かったでしょう。


200メートルの上下移動が可能な竪坑エレベーター


後立山連峰の山々


現ルートではここまで


今までは

関西電力が欅平から黒四ダムまでを移動する

『黒部ルート公募見学会』を実施していましたが、

今年は8月末で終了。

来年からはキャニオンルートに引き継がれます。


このルートを辿る際には

やはり『高熱隧道』を読んでから向かうことを

お勧めしたいと思います。


今では上級登山者のメッカともなっている

黒部の奥地ですが、

猿すらも寄せ付けないと言われた

急峻な山奥に人が立ち向かった苦労が偲ばれます。


高熱隧道に泡(ホウ)雪崩で

約300人の犠牲者を出したとも言われます。


宿舎の飛び方が半端ない
昭和10年代にこんな建造物作るなんて人間すごい
欅平には吉村先生の色紙も
『高熱隧道』はご自身の『水の葬列』から着想を得たらしい


どうしても黒部といえば

黒四ダム、黒部の太陽、石原裕次郎に

スポットが当たりがちですが、

あのダムが出来るまだ20年も前の

ろくに重機も無い時代に、

無名の作業員たちが

無謀の挑戦に挑んだのだと思うと

心が震えてしまいます。

お読みの皆様も、
来年はキャニオンルートに向かい
先人の苦労に思いを馳せてみては如何でしょうか。

左側の送電線は黒部川第四発電所からの電気、右側の送電線は黒部川第三発電所からの電気を
関西に送り続けている
欅坂の本家は黒部の山中にあった

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★★今日の圧巻人生方程式★★


先人たちの苦労に思いを馳せると
今の豊かな生活への有り難さが増すだろう。

加えて、
先人たちが苦労を重ねた場所へ出向けば
追体験が出来ることもある。

労を惜しまず
歴史の現場に足を運んでみたい。
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