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小満

 春に芽吹いた草木が生長し、若草色から濃い緑へと移り変わる5月。「小満(しょうまん)」とは二十四節気の10番目の節気ですべてのものが勢いづき、草木が生い茂る頃とされています。2021年の小満は5月21日(金)です。次の節気である芒種(ぼうしゅ)の前日、6月4日(金)までの期間を小満とも言います。暦便覧には小満は「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉茂る」とあります。すべてのものが次第に成長して、天地に満ち始める頃を表した言葉です。また、農耕では秋に播いた麦の種などが、ちょうど穂をつける時期でもありました。穂が出始めた麦をみて「今年は順調に育っている」と、ほっと一安心したのだそうです。そんなところから「小満」と言われるようになったという説もあります。古い時代において、農作物の出来具合は生死に関わるほど重要なものでした。もう少しで収穫を迎える作物を目にすることで「良かった」と胸をなでおろす時期だったのでしょう。
 小満の七十二候の初候(5/21~5/25)が「蚕起食桑(かいこ おこって くわをくらう)」で、蚕(かいこ)が桑の葉を盛んに食べて成長する時期を表しています。蚕をご存知ない人もいるかと思いますが、蚕は蛾の幼虫で成虫になる前につくる繭(まゆ)が絹糸の材料になります。蚕を育てて繭をつくり、絹糸を生産するのが養蚕業です。絹織物は卑弥呼の時代には作られていたと言われており、その歴史はかなり古いものとなります。また、養蚕業は日本を支えてきた産業のひとつでもあります。絹糸の生産が盛んになるとともに専業の養蚕農家も出てきたほどですが、もともとは農家の副業として行われていました。繭は農家にとって重要な収入源であり、その繭をつくる蚕を「おかいこさま」と呼んだほどです。蚕の活動が活発になるこの時期は農家の人にとってきっと嬉しい時期だったのではないでしょうか。
 次候(5/26~5/30)が「紅花栄(こうか さかう)」で、紅花の花が咲き誇る季節を表しています。紅花はエジプトが原産とされており、日本へは飛鳥時代に渡来したと言われています。その花びらは染料となり、種子からは油を採ることができます。紅花染めや紅花油というとピンとくる人もいるのではないでしょうか。また、紅花の赤い色素は「紅(べに)」と呼ばれ、口紅の原料にもなりました。古くから女性を魅了してきた紅の口紅は今も伝統製法が受け継がれ、作り続けられています。3つ目の末候(5/31~6/4)が「麦秋至(ばくしゅういたる)」で、麦の穂が熟し金色に輝く、麦の収穫期の頃を表します。この麦秋という言葉が、小満という節気をよく表現していると考えられます。麦秋とは、初夏の頃に麦の穂が実って、収穫の時期を迎えることから名付けられたもので、「むぎあき」または「麦の秋」とも読みます。そして、麦秋の「秋」の文字は、「収穫期」の意味で使われています。
 この時期に、麦の穂をなぎ倒すような風のことを麦嵐(むぎあらし)、または麦の秋風といいます。また、この時期に降る雨は麦雨(ばくう)と呼ばれます。沖縄では、次の節気の芒種と小満を合わせた小満芒種(すーまんぼーすー)という言葉が「梅雨(つゆ)」の意味で使われます。梅雨が近づくこの時期は二毛作農家にとって麦の刈入れに追われる忙しい時期でもありました。弊社の場合、小麦の収穫にはまだ早いですが、お天気とにらめっこしながら、今年は良い収穫ができることを期待しています。

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