【テキスト】スキマゲンジ第37回「横笛」

前回のあらすじ。
女三の宮は出家し、柏木は亡くなってしまいました。残された若宮を源氏の君は大切に育てています。

スキマゲンジ第37回「横笛」の巻。
ふえはうたう。

柏木はいつも源氏の君のそばにいて、源氏の君も優秀な若者だと目をかけていたので、けしからんことはありましたが、やはりかわいそうに思います。夕霧も兄のように大切に法要なども営むのでした。

若君は一歳になり、少し歩けるようになっています。きわだって可愛らしく、柏木にも女三の宮にも源氏の君にも似ていない気高さと非凡さがあるのでした。

夕霧は、柏木の遺言を思い出しては、源氏の君に何があったのか聞いてみたいし、柏木の思い詰めていた様子を伝えたいと思っています。

いつものように柏木の妻だった落葉の宮のところに訪ねて行った夕霧は、そこで柏木が愛用していた笛を贈られます。

その夜、夕霧の夢に柏木があらわれます。笛を手に取り「この笛を渡したいと思う人はあなたではないのです」と言います。誰に渡せばいいのかを聞く前に目が覚めてしまい、どうしたものかと思いながら六条の邸に向かいます。

六条の邸では明石の女御の子どもたちと若君が遊んでいます。夕霧があらためて若君の顔を見てみると、どことなしか柏木に似ている気がします。

夕方になり、夕霧は源氏の君と差し向かいで語り合っています。そのうちに、落葉の宮の話になり、そのきっかけで、笛について柏木が夢で言っていたことを源氏の君に話してみます。源氏の君はすぐには返事ができない様子で、夕霧も思っていた通りだと思うのでした。

やがて源氏の君が「その笛は私が預からなければいけない理由のあるものだ。それは、陽成院の笛で、それを亡くなった式部卿宮が、柏木に下されたものなのだ。」と言います。夕霧はその源氏の君の様子を見て、今ついでに思い出したような様子で「柏木が亡くなる時に言い残したことの中に、源氏の君に許してもらわなければいけないことがある、とか言っていたのを思い出しました」と言ってみます。源氏の君は「夕霧は勘がいいから、やっぱり気づいているのだな」pと思いましたが、少し考えるふりをして、「そうだな、そんな態度をとったかどうか、思い出せないのだが。だが、夢の話はゆっくりと思い出してみることにしよう。夢の話は夜にはしない方がいいと女房たちも言っているからね」と言うのでした。

その後はろくに返事もしてくれないので、夕霧はこの話を出してしまったのを源氏の君がどう思ったかと、身が縮む思いでいます。

次回スキマゲンジ第38回は「鈴虫」の巻。源氏の君は女三の宮の住む邸を整備します。秋好中宮は出家を考えています。

もの思う秋。お楽しみに。


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