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ぶち当たった新たな課題【22-23 EPL Match Week 5 vs Leicester City FC 】

スタメンはこちら。

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前節の振り返り

第3節でようやく初白星を飾ったユナイテッドは、前節のセインツも退け昨シーズン2月以来の連勝を勝ち取ることに成功。

相手のハイボール戦略と守備可変の展開に持たされる傾向であったが、後半の早い時間で先制。自分たちで能動的に崩し、勝利を手繰り寄せた。

こう聞くと長い道のりであったが、チームの持つポテンシャルと再現性あるマネジメントへの舵取りが功を奏している。そして、今シーズン加入したエリクセンが与える影響が大きい。縦関係になるブルーノとのホットライン、コンビを組むマクトミネイとのプロテクト。ポグバ・マティッチとゲームメイク型のボランチロールをこなしてきた人材の穴を見事に埋めてみせた。

こうした嚙み合わせもあり、勝てるフォーマットをまとめたユナイテッド。しかし、異なるゲームモデルにチャレンジしていくという当初の目的も見失ってはいない。セインツ戦、課題であった「中央レーンを攻略するチャンスメイク」をいくつか実験的に行った。結果とディテールを同時進行で追い求めるというシーズンの命題にも、引き続き挑んでいく。

対するは、未だに未勝利で最下位に沈むレスター。傍から見るとなぜこんなにも不調なのかよくわからいが、ソユンクでなくエンディディがCBをやっている辺りにチームの内情が伺える。

ラインブレイカーとして一日の長があるヴァーディーを筆頭にフレキシブルなタレント力を有している手ごわい相手で、昨年はキングパワースタジアムで4-2の負け。あまり相性が良くないという印象があるが果たして。

■前半:継続していく上での悩み

立ち上がり5分のユナイテッド、高い位置から積極的にアプローチを開始する。それが剥がされればラッシュフォードを残す形で、中盤のプレスバックを待つ従来型の守備を採用。

ボールを保持した際は、ややポゼッションする姿勢が強い。レスターはライン間の距離が緩く、DF-MFの2ラインがぽっかり空く場面が散見。間で受けるブルーノへの配球を軸に前進し、そこから保持のペースを握っていく。

10分ブルーノ→サンチョとワンタッチ、再度戻しを受けたブルーノがフリーのエリクセンへスルーパス。わずかにコースを外れたが、チャンスを演出した。

ブルーノに対するマークが今日は甘い。本来見るべきスマレの警戒心が薄くエンディディとのミスコミュニケーションでこの場面はフリーにしてしまった。

ユナイテッドは攻め急ぐことはなく、マイボールの際はじっくりボールを持ちつつ前線の人数を固めていく。その際DFラインを高く上げ、エリクセンの配球を中心に316配置を何度か実施してきた。主に撤退気味に構えた相手に対してセットするのが特徴であり、前線の枚数配置を基本的には崩さない。

レスターのプレスはマンツーマン気味にマーカーを動かす傾向にあり、対面の守備者にはボール奪取の強度がまず求められる。しかし、個々の距離感が依然遠く、時に裁量的な動きが見られる。

ユナイテッドは21分、相手GKウォードのキックを収めたダロトがフリーのブルーノをしっかり見ていた。2ラインの間延びをしきりに活用している彼が、左SBトーマスが空けた裏のスペースに移動。ここから素早く縦へ。

受けたブルーノはすぐさま中央のラッシュフォードへ。相手をしっかり2枚ひきつけ、ラストパスをサンチョへ預けた。抜けたサンチョは、冷静にGKをかわし無人のゴールに流し込んで先制点。今日は前半でリードを取ることが出来た。

レスターは両SBを高い位置まで押し上げてボールへアプローチをかける際に、CBの横が大きく空いてしまう。そこを叩いた結果、ゴールに結びついた。

先制点以降のユナイテッドは、マクトミネイがDF前をプロテクトする従来のリトリートにスイッチ。2ラインを締めリスクを冒かさず、しっかり盤面を握っていくことを選択。ボールを奪ってカウンターで点を狙うというよりは、ややエリア取りのイメージ。フィニッシュまで行けそうになければキャンセルし、再度作り直しを開始していく。

また、エリクセンが後方のサポートに入りボールの循環を高めるシステム変更。ポゼッションで相手に主導権を渡さない方向に調整を行った。

レスターは攻めのスイッチ役となるマディソンへボールを渡してチャンスメイクする形にどこか頼り切りなここまで。ユナイテッドの撤退に対し選手たちのアクションが遅く、推進力がなかなか出てこない。

40分~からレスターは突如ロングボールで相手陣内を伺うチョイスをした。エヴァンスがマラシアの方向へボールを蹴り、列上げしたジャスティンでボールを収めようとチャレンジする。

事実、今日のユナイテッドの右サイドが固い。ダロトに加えDHのマクトミネイが絞り、空いた穴をブルーノが埋める感覚で移動を行うため、左に比べて物理的スペースを与えない。トーマスの動きをエランガでけん制している面も加味し、純粋な守備強度が高い設計が組めている。

なので、セオリーとして左から崩すという判断自体は間違っていない。43分、そのマラシアが犯したファウルでFKを得るがマディソンのキックは誰にも合わず。ただレスターサイドはこうした弱点の見極めをゴールに紐づけるようマネジメントも探っていく。


前半は0-1。サンチョのゴールを安全に守り、リードを保って折り返した。今日はブルーノへの警戒心が薄く、彼を積極的に経由するとチャンスクリエイトに直結する。更にCFラッシュフォードの黒子役が機能し、幾つか決定的な場面を作ることに成功した。

レスターは終盤の修正。右サイドへ移動のベクトルを向けたことで、一時的にボールの循環が回復した。途中、ティーレマンス・マディソンがそれぞれ列を下げビルドアップのリンクを構築し、サイドに振っていく展開からバーンズの単騎特攻を軸に攻める形が最も脅威になりそう。

トーマスの追い越しフォローなどがあると、もう少し楽に対面で1vs1を作ることが出来るかもしれない。そこへリスクを割けるようDFラインを上げつつ、DHのスマレ或いはティーレマンスでエリアマネジメントするなど、全体の距離感はもう少し意識的に狭くしたい。

■後半:柔軟なポジション移動で弱点を叩く。

立ち上がりのユナイテッド。前半レスターの攻撃の核となっていたマディソンが中央で受ける際などのケアは前後の囲い込み。DHの一枚をホルダーに当て、OHのプレスバックで挟んでみようと試みる。

併せてボールサイドのWGがインサイドにポジションを絞り、サイドに追い出すようアプローチしていくことで、守備ブロックの形成まで時間調整をする。ここまでのセットは本当にスムーズになった。

ここからサイドへ預けてボールキープに入るか、そのままスペースへ走らせるかを状況で選択する。直近の傾向は主にSBに預けて、ボールを前進させつつ、敵陣に入った段階で作り直しを選択することが多い。

49分、ファウルで得たFKをマディソン。右隅を完璧に捉えたものの、ここはデヘアのスーパーセーブで難を逃れた。正確なプレースキッカーである彼に、セットプレーは絶対与えたくない。

勢いに乗りたいレスター、右SBのジャスティンを前半より高い位置に上げマディソンを中央へ。ティーレマンスがDFに入り3バックのような可変でボールを回していく。前半の流れを引き継ぎ、右サイドへの進行を狙う。

その変更で兆しが見えてきた51分、ティーレマンスの楔を受けるジャスティンから、WGのポジションに入ったデューズバリー=ホールが裏抜け。

ジャスティンとティーレマンスの移動でマーカーの位置調整が必要となり、空いたSB裏のスペースにエリクセンを引き連れるよう直進をしていく。早いクロスで対角のバーンズを狙ったこのチャンスも、僅かに立ち位置と合わずに不発に終わった。

しかし、後半の入りはレスターペース。ポジションを変えたマディソンのボール関与が見違えるように改善し、チャンスメイクの質も上がってきた。それを下支えするティーレマンスの柔軟性、右に進行を移したマネジメントが効果を発揮し、ユナイテッドは我慢の時間帯。

ユナイテッドは58分、エランガに替えカゼミロを投入。ブルーノを右に出し、エリクセンをトップ下へ移動。中盤の守備強度を上げ、右の進行に対するリスクを敷くような変更を行ってきた。

右での進行が遅れれば、やり直しでポゼッションに入るレスター。途中、ボールカットされる局面ではカウンター対策として、エリクセンとラッシュフォードのリンクを絶とう、とスマレとエンディディがそれぞれ縦の関係を構築し攻撃の芽を摘んでいく。

ユナイテッドはひたすら耐えのフェーズ。エリクセンとブルーノの関係が弱まったことで前進の形が作れなくなってしまった。そこで変わって入ったカゼミロ、配球の面で相手を苦にしない判断とプレス回避でゲームメイクにも貢献する。ここから打開の糸口を見出したい。

67分にユナイテッドはサンチョを下げ、ロナウドを投入する。最前線のラッシュフォードを左に出し、再度カウンター仕様にスイッチ。

レスターはスマレとティーレマンスで組織をプロテクト。ポジションを移したエリクセンと正対する前者は球際でほぼ制圧し、回収の算段が取れるようになった。ラッシュフォードを左に移したことで右の進行が沈静化したが、中央にポジションを戻したティーレマンスとスマレ2人の互換性がさらなる高まりをみせ、主導権を渡さない。

そのレスターは75分、核となるティーレマンスに替えイヘアナチョ投入。ヴァーディーとの2トップで442にスイッチし、デューズバリー=ホールを一列落としたシステム変更。

この交代からレスターの前進スピードが顕著に停滞した。DFラインでボールを繋ぐが、なかなか前にボールが運べない。ならば右サイドへの再進行ということになるが、ポジションが固定されてしまった為に柔軟さがなくなり、デザインした形が作れない。

81分ボールサイドへ全体をスライドさせながらDHがボルダーにプレスを開始、後続のブルーノでボールカットしたユナイテッド。ブルーノはそのままサイドを駆け上がり、受けたカゼミロがワンタッチで裏のスペースへ展開しチャンスの場面。

ブルーノがチェックに来たトーマスを股抜きで交わし、逆サイドのラッシュフォードへ。収めたラッシュフォードは、旋回するロナウドを待ってスルーパスを送った。ロナウドの折り返しを待っていたエリクセンに通ればというシーンだったがエヴァンスがクリアし、ゴールにはならず。

86分、ユナイテッドはラッシュフォードを下げフレッジ。レスターもヴァーディーに替え、ダカを投入。ユナイテッドは最後中盤を締めてゲームを終わらせに行く。

90分を超えATに入り、時間稼ぎに入るユナイテッドに対し、レスターもボールを奪ってなんとか攻勢に出るものの中央が狭く固い。フレッジがトップ下でマーカーを衛生的に管理し、カゼミロ&マクトミネイが控えるセンターラインを開くのは容易ではなさそう。

92分、ロナウドのパスミスからスマレが拾って右に展開。待ち構えるダカは横から追い越すジャスティンへフリック、マラシアが中央へ引き付けられていた裏のスペースを駆け上がりチャンスを作るも、シュートが抑えられず。最終盤にきた大チャンスを、モノにすることが出来なかった。


そしてAT4分が過ぎてタイムアップ。ユナイテッドは連敗以降3連勝。しかも2戦連続クリーンシートと、守備の粘りでこの試合も逃げ切りに成功した。

一方のレスターは開幕5戦未勝利で明暗を分けた格好。前半の終盤→後半にかけての修正でイニシアチブを握り、そのままゲーム進行出来ればもう何個か決定機があったかもしれない。

左右の推進力を操作していたうちの一人であるティーレマンスの交代で、流れが分断されてしまったのが痛かった。前進の核となるマディソンを一列下げつつ、デューズバリー=ホールで補填する442への移行が逆効果になった部分はやや否めない。

・総括

なんとか守れている、が率直な意見。所謂リトリート継続の流れが2戦連続クリーンシートをもたらした。ビルドデザインを構築していたことを忘れてしまうほどデヘアも強みがクローズアップされている。しかし非保持で前後の動きが噛み合わず、中盤がぽっかり空いてしまうのが大きな課題となってきた。全体の印象はやや消極的であったかもしれない。というのも前節は様々にチャレンジを行う好ゲームであったにも関わらず、今日は組織を動かすアプローチが下火であったからだ。その点4141→343可変でビルドアップの停滞を打破したり、相手の弱点を仕様変更で殴るという柔軟さを見せたレスターは勝負しに来ていた点でユナイテッドとは見え方が異なる。

個人的には変化が欲しいところ。現行の撤退→カウンターのパターン①、派生し時間調整で人数を揃え、基本配置を軸に崩しを試みるパターン②、現行のチームが行ってきた攻守のフォーマットはこれしかない。例えば、ハイラインで守備のアプローチを根本から変えたりそこからショートカウンターを打つなど、新たな設計図を探すのはどうか。そうなると果たしてデヘアで良いのか?という議論が再熱し、DFラインの設定にもメスが入るのが常。人選はどうするか、補強の必要性はあるのか、とエクスキューズはどんどん出てくるがこの方向性を捨ててはいけない。テンハーグがいつ舵取りを行うか、そのタイミングは実はすぐそこまで来ているかもという第5節。


試合結果
【プレミアリーグ 第5節】2022.09.02 (金)
レスターシティ 0-1マンチェスターユナイテッド
【得点者】
LEI:
MUN: 22'サンチョ

出典元
https://twitter.com/ManUtd *1
https://twitter.com/LCFC/status/1565399090963222528 *2


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