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絵本の深みへ導く書籍案内
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『絵本づくりトレーニング』 長谷川集平

『絵本づくりトレーニング』 長谷川集平

 絵本作家、長谷川集平による広い間口と深い奥行きを兼ね備えた絵本理論書。長谷川が講師となり、イラストによる丁寧な解説と章末課題を内包した実践講座が展開される。そでにチャーリー・パーカーの言葉が刻まれた同書は、カザルス、モーツァルト、ベートーベン、ビートルズに触れられ、映画はエイゼンシュテインのモンタージュ論から小津の正面性、絵画は絵巻物の方向性からカンディンスキーの抽象画、その他フロイト、ブレヒト

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『はじめて学ぶ日本の絵本史I・II・III』 鳥越信

『はじめて学ぶ日本の絵本史I・II・III』 鳥越信

 『はじめて学ぶ 日本の絵本史』は全3巻からなる日本初の絵本通史だ。21世紀になって初めて自国の絵本史が誕生していることに驚いた。同書は、「とにもかくにも近代日本の絵本の流れに関わる情報を、現時点で判明している限り、全て提供するということ」、「質的には評価できないと考えられる絵本についても、同じように記述したこと」を基本的な方針として、1868年から1920年代半ばまでの絵本にまつわる史実が懇切丁

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『絵本の絵を読む』 ジェーン・ドゥーナン

『絵本の絵を読む』 ジェーン・ドゥーナン

 イギリスの絵本研究者ジェーン・ドゥーナンは、絵本の「絵」に焦点を当て、能動的に絵を読む方法を示した。同書は、絵本作品を具体的に取り上げ、絵を読むとは如何なるものかを説明する理論書である。ドゥーナンが実践した絵本学習カリキュラムの記録と、充実した参考文献リスト、訳者3名による「『とんことり』をドゥーナンの手法で読む」座談会が収録されており、その親しみやすさと充実具合からも、必携の書と言える。

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『絵本をよんでみる』 五味太郎

『絵本をよんでみる』 五味太郎

 著作数450冊を超える絵本作家、五味太郎による絵本論。『キャベツくん』、『よあけ』、『エンソくん きしゃにのる』など、五味を「絵本好きにしたであろう自作以外の絵本」全13作品が語られる。まず初めに語られるのは、自身がいちばん長く読んでいる絵本という『うさこちゃんとうみ』であるが、その読みっぷりが実に愉快且つ明晰なのだ。ふわふわさんのセリフは「うさこちゃんの「我」を揺さぶる問いかけ」である、作品に

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『ぼくの絵本美術館』 堀内誠一

『ぼくの絵本美術館』 堀内誠一

 本日(2022年01月04日)より大丸ミュージアム〈京都〉で「堀内誠一 絵の世界」展が開催される。堀内誠一は1932年東京に生まれ、アートディレクター、デザイナー、旅人、そして絵本作家として戦後日本をリードした人物だ。
 『ぼくの絵本美術館』は、堀内誠一が遺したエッセイ、対談、評論を一冊にまとめた絵本論集成である。同書は、「偏愛的個人美術館」と紹介されるように彼の偏愛に満ちた解説に魅力がある。ラ

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