はたらく日/朝の楽しみ
自転車10分、電車10分。
改札を抜けると、遠くに山並が見える。
ずいぶん遠くなので水色にかすんでいる。
こういうのをレイリー散乱というらしい。
イラストレーターの妹が教えてくれた。
同じ山なのに見え方は毎日違って、
今日は白いお帽子をかぶっている。
はたらく日の朝、水色の山々を見るのが私の密かな楽しみである。
はっきり見えると嬉しいし、ぼやけていたって嬉しい。どうしてこんなに嬉しいのか?
--------------------------------------------------------------------------思い返してみると、
小さい頃は大抵のものが水色だった。
はじめての携帯も、DSも、体操服も、旅行用のカバンも、お気に入りだった服も。
母はからし色、父は黄色、私は緑が好きだったのだけど。なぜだか身のまわりは水色でいっぱいだった。
山並みのうれしさは懐かしさ故かしら?
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自転車10分。電車10分。徒歩10分。
ようやっと職場が見えてくる。
あの壁が水色なら、もっと嬉しかったかも。
朝のノスタルジーに力をもらい、
今日もはたらく。大人になったので。
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