今年出会った曲たちを振り返ったりおすすめするだけの人
2023年もSpotifyにはお世話になった。移動中も家にいる時もプレイリストを垂れ流しにしてることが多い。
気に入った曲は全てジャンルや時期で分けてない「ごちゃまぜ」に突っ込んでいるせいで、気付いたらプレイリストの総再生時間がすごいことになっていた(およそ86時間)。そのせいで、シャッフル再生するなりわざわざ下の方までスクロールするなりしないと、以前によく聞いていた曲が再生されることはない。
随分と現代的な音楽の消費をしているなと思う。その時その時にハマっている曲は何度も繰り返し聞いちゃうし、毎週New Releaseをチェックしているから自分の中の流行の変化も早い。
でも、別にその前に聞いていた曲を忘れたわけじゃないし、新しくハマった曲の方がどうしても優先されてしまうだけで、もう聞かなくていいやなんて思っているわけでもない。プレイリストの下に沈んでいく曲を想うとなんだか寂しくなってしまう。
だったら、せめて文章の形で「聞く回数は少し減ったかもしれないけれど、今もまだ好きなんだぞ」って残しておこうじゃないか。どういうところが好きなのか言語化しておこうじゃないか。
自分への言い訳を年末にしようじゃないかと。
そんな日記。
歌詞の好きポイント語りがほとんどを占める記事になるんじゃないかと思う。メロディーラインとか音に関しては「この辺が綺麗で好き」くらいのことしか言えないもの。
今年はヒトリエに出会ってめっちゃ聞いた
ずっと前からwowaka(敬称略。アーティストさんの敬称は基本的に略させていただきます)曲は知っていたし聞くこともあったけれど、ヒトリエの曲はほとんど聞いたことがなかった。「アンノウン・マザーグース」のバンド版があるんだなー、くらい。
ただ「アニメの主題歌もあるのか。アニメは見てないけど何曲か聞いてみるかな―」から一気にハマった。
特にお気に入りのアルバムは「HOWLS」と「REAMP」。
プレイリストに入れた曲を全部書きだすとそれだけですごい量になるので、特にお気に入りの曲を抜粋していこうと思う。
風、花(2022)
最初にプレイリストに入れた曲。
ちょっと切なくて綺麗な恋、別れの歌。
さてこの曲、メロディが綺麗で歌詞にも綺麗なワードが散りばめられているが、歌詞を見る限り「僕」は綺麗な存在ではない。
メロディの美しさも「僕」の寂しさとか後悔とかではなくて、あくまで「君」の表現という部分が大きいんだと思う。
ッスー……
こういうの関係性オタクには刺さるじゃん?
私は「〇〇のイメージソングにぴったりじゃない?」みたいな妄想はあまりしない(たまにアイマスでこの子にカバーしてもらうならどの曲がいいかな―って妄想はする)タイプのオタクだ。だって特定のキャラクターとかに当てはめるまでもなくこの歌詞の「君」と「僕」だけでご飯3杯いけるんだから。3杯いけるってすごいぞ! 私は少食なんだからな!
ちなみに、この曲の最後は「君が僕に優しかったこと 胸に抱いて眠るよ」という歌詞で締められる。きっと綺麗じゃない「僕」は泥のように眠るんだろうな。
伽藍如何前零番地(2019)
個人的に、ボーカルが変わってからは美しさや切なさが際立つ表現、ボーカルが変わる前は鬱憤や苦しみ、切実さを叩きつけるような表現が好きだ。
この曲はボーカルが変わる前のアルバムに収録されている曲で、例に漏れず叩きつけるような歌い方で心情を揺さぶってくる。
この曲はとにかく歌詞が強い。だいたい全部印象的なのだが、中でもこのあたりは……
丁寧な言葉の中に急に荒々しさが交じってくるので脳がバグる! 特に「琥珀色に濡れた瞳」というワードはとても美しいのに、そのすぐ後に「貴様」という言葉が飛び出てきたのに震えた。このアンバランスさはどこから来ているのかについて察せられる部分もあるので、次はそこを見てみたい。
見えないもの>形の価値観。ここに見えるのは潔癖で理想主義的、イデア論的な思考を持ちながら、それすら信じきれず不確かで、現実の中で自棄っぱちになっている現代人だと思う。
コヨーテエンゴースト(2019)
さっきの曲と同じアルバムの楽曲。歌詞を見ると「伽藍如何前零番地」と似たような価値観の部分があって面白い。
心はそう簡単には通じないから、私たちは意思疎通に言葉を使う。でも、言葉は伝わる過程で必ずどこかが歪んで、伝えたいことが100%そのままで伝わることなんてない。言葉を廃してただ存在している心がそのままに伝わればどれほどいいだろうか。それでもバンドマンたちは歌詞を作って歌うし、私はこうして文章を書いている(彼らと私を同列に扱うのは流石に彼らに失礼だということくらいは承知の上だけれども……)。
ここで紹介した2曲を聞くと「言葉を扱う者は言葉の限界を知って絶望しながら、それでも希望を持って言葉を操るしかないよなぁ……」としみじみ感じ入ってしまう。今年に限らず、今まで出会った曲の中でもかなり心に深く残っている曲たちだ。
ちょっと話を変えるけれども
この曲のサビに「生命の形なんてきっとあなた以外にありえやしない!」って歌詞があるんだけど凄くないかこれ。これまで書いてきた言葉がどうこうの話とか吹き飛ばすくらいにオタク心に刺さるんだけど。なにこれ。
うつつ(2021)
ボーカルが変わってからのアルバムの曲で、全体的に幻想的な空気感を纏っていて切なさを掻き立てるような曲。歌詞は現代/現実に対して嫌気が差している人間のそれを直接的に表している。
最後の方に、それまで何度も繰り返されてきた「うつつだね」のフレーズと別の歌詞が重なる部分が本当に心地よい。「それではまた夢でお会いしましょう」という歌詞も相まって、寝る前に聞くのに最適な一曲だ。
スピッツの新アルバムが出た
私はスピッツのファンなので、アルバムが出たことには感謝感激雨あられだった。スピッツと言えば、今年は「美しい鰭」が印象的だと思うが、もう皆知ってるだろうしわざわざここで取り上げるのはやめておく。
スピッツに関しては、今年出会った曲に加えて「改めてハマった曲」も紹介したいと思う。
オバケのロックバンド(2023)
とんでもねえ曲。
曲調こそぜんぜん違うけど、曲のエモさの質は「1987→」に近い。
ボーカル、ドラム、ギター、ベースを担当するオバケが出てきて、音楽を奏で始めるという曲なのだが、なんと、ベースのオバケは田村、ギターのオバケは三輪、ドラムのオバケは崎山が歌っているのだ。サビは4人での合唱。バンドメンバー全員が歌唱している曲は恐らく初だと思う。
やっば。
歌詞にも「毒も癒やしも真心込めて 君に聴かせるためだけに」とか「トゲばったハードロック 本当はラブソング」とか……
あ~~~~~スピッツって感じ~~~~~~~~~。
未来未来(2023)
珍しく厭世があからさまに表れている歌詞が特徴的でびっくりした。
腰を据えて歌詞を読んでみると「ああ、社会からあぶれた人目線の歌だな」って分かる曲はいくつもあるが、軽く聞き流しただけだと、そういう要素が美しいメロディや声に隠れて感じにくかったりする。
やっぱりスピッツの中ではかなり直接的な気がする。全体を見ると絶望よりも希望寄りの歌詞だとは思うのだが、それでも強烈だった。
またこの曲、先ほど紹介したオバケのロックバンドに歌われている「トゲばったハードロック 本当はラブソング」を体現した曲でもあるのだ。
こっちも直接的!
子グマ! 子グマ! (2016)
改めてハマった好きの再燃枠。子を見送る親の愛の歌。
私は家族愛系には弱い。スピッツの綺麗なメロディも相まって、運転中に聞くと涙が出てくるので危ない。
特に「君がコケないように 僕は祈るのだ」。ここのパワーすごい。「祈る」ことしかできないのだ。何か手伝ったりするわけではない。完全に手から離れていく子グマに対して、ただ「祈る」。
これがこの曲で歌われている愛の根幹なんじゃないかと思う。でも、その祈りは子グマには1割も伝わっていないんだろう。これまでの思い出とか、受けた恩恵を愛と呼称して生きていって、自分が親グマになった時に始めて祈るんだろう。
趣味と合致したつよつよ曲
キタニタツヤ 素敵なしゅうまつを!(2023)
今年のキタニタツヤ曲の中で一番好きなのがこれ。
というのも、私がちょうどジョーンズタウン(人民寺院)、ヘブンズ・ゲート事件について興味を持っていた時期があり、その時期に黙示録にも目を通したからだ。
そんな時にこんな曲を出されたら、そりゃあ「終末思想をゴリゴリに詰め込んだ曲だ~!」ってはしゃぐ。ウッキウキよ。曲は不気味だけど。
ちなみに、今年読んだ本(ラノベや漫画除く)で一番面白かった本がこれ。人民寺院やヘブンズ・ゲートについても語られている。
分厚いけど手に取ってみてほしい。
欠点は元々が外国の本だから「訳してる」っぽい感じがするのと、誤字脱字がちょっとあるくらいだから!
怪しそうに見えるけど「洗脳」の概念の歴史をちゃんと追ってるし『「洗脳」という言葉は尽くを説明していると同時に何も説明していない(もっと現実的に人間の精神と向き合おうね)』みたいな感じに結論してるマトモな本だから! 分厚さにしては読みやすい方だから!
何より「洗脳大全」を読むとあのジョージ・オーウェル『1984』が超楽しく読めるぞ!!!!
(たしか、こっちを先に読んだと思う。これを読んでから「洗脳大全」を読むとスッと入ってくる部分が増えるかも)
曲の話に戻るけど、MVが梨さんだったのもびっくりしたよねこの曲。
MVの不気味さはヘブンズ・ゲートの最後のビデオに通じるものがある。
マジで最高だったのでyoutubeでも見よう!
ジャジーな曲、ピアノが好きなんです
DADARAY どうせなら雨が良かった(2019)
涙や泣き顔と雨というのはもはやセットであって、その組み合わせ自体には斬新さや感動はないと思う。なんなら私は、アニメでキャラクターが涙を流すと同時に雨が降り出すと「わざとらしいんじゃやめぇ!」とか思ってしまうくらい「わざとらしい比喩アレルギー」なところがある(使い方次第だと思うので完全に否定したいわけでもないし、別にわざとらしいなーって思うだけで楽しく見れるっちゃ見れるんだけど)。
ただこの曲。曲のタイトルから分かるように「実際は雨ではない」のでその辺は安心だ。似たようなことを表現している小説だとか歌もあるのだと思うけれど、この曲を聞いて「なるほど雨と涙……そういう使い方もあるよな」と思わされたのは間違いない。
そしてこの最後の歌詞がすごく好き。大切にしたい、という思いそのものにも確証を持てず、何を大切にしたいのかもまったくもって不明。この曲の主人公の未来は明るくなさそうだ。晴れてるのにな。
あと単純にオシャレ。ピアノってやっぱいいよね……!
Andora,水槽 Utopia(2023)
好きと好きがコンビネーションアタックを仕掛けてきた。会心の一撃だァ! 歌詞は普通に失恋か仲のいい人との別離の歌って読めば良さそう。
「ユートピア」だけがプラスの言葉で、他は大体ネガティブな印象だけれども、果たしてこの「不在のユートピア」は「別れられてせいせいしたわ」みたいな強がりを表現しているのだろうか?
私は人間関係のしがらみから解放されたという事実を、主観から少し遠ざかったところからただ表しているだけの言葉のように感じられた。
そういう一面からだけ見れば確かに楽園だけれども、そう簡単に割り切れたら苦労しねえよ! という。
神が描く理想郷は人間にとっての理想郷ではないだろうし、あなたが描く理想郷は私にとっての理想郷ではないだろう。実際、トマス・モアの「ユートピア」の概要を見ても、我々の感性ではとてもじゃないがいい場所だとは思えない。「ユートピア」とは、ただそういうものなんじゃないか。
皆さんはどうだろうか。
Blu-Swing クラゲ(2020)
Blu-Swingは今年結構ハマッたグループの一つ。
こういうのをチルい、って言えばいいのだろうか。正しく使えてるかどうかは分からないけれど。夜に部屋で流すのにとてもいい。
Blu-Swingの魅力と言われると言語化が難しくて「チルい、落ち着く、オシャレ……でなんか好きなんだよね」としか言えないのがもどかしい。
他にもいくつか好きな曲があるが、歌詞も絡めて少しは言語化できそうだったのがこの曲だった。
「孤独が好きそんなことはない 群れるのが好きじゃない」
うん、まあオタク的に凄く共感できる。
そしてここに「あの子に会いたい」がぶつかることによって絶妙な、これ以上足しても引いてもいけないようなバランスが生まれている。
ちょっと斜に構えたオタク(自分で自分を刺していく)っぽいメンタルにジャジーでオシャレな曲調と「あの子に会いたい」という率直で純真な思いがぶつかっている感じ、マジで丁度いい。
一昔前の音楽にも触れまして
玉置浩二 CAFE JAPAN(1996)
テレビか何かで玉置浩二を見て、この機会に知らない曲にも触れてみようとか思ったんだったか。「田園」が入ってるアルバムを通して聞いてみようかなと思って……この曲から進めなくなった(3ループくらいした)。
ささやかなそのままの人生をそっと応援してくれる感じの曲。
悩みを聞いてくれるわけではなく、ただ立ってるだけで慰めてくれて、背中を押してくれるようなバーテンダーがそこにいるんだ。
個人的には、間奏に入る玉置浩二の語りが好き。
すっげーよここ。
何かに追い立てられて急かされている人もいるだろうし、「急かされていると思いこんでるだけ」の人もいるだろうけど、誰も彼もみんな好きに急げばいいのだ。立ち止まって振り返ったり休息するのは瞬間的なことであって、その瞬間に得たことを胸に抱きながら、また慌ただしい日常に戻るのだ。
オタクです。
ノクチル Reflection(2023)
とんでもねえ曲が来てビビった。
ノクチルと言えば「あの花」か「いつだって僕らは」になんだかんだで戻ってくるかだと思ってたけど、これからは「Reflection」かもしれん。
メロディが好きすぎる。歌詞は今までのノクチルから極端に変わっているというわけではなくメッセージも似ているのに、ノクチルを追ってきた人にこそ刺さるようになっているように思えた。
この撞着であるようで撞着でない締めがあまりにも青春すぎないか?
シャイニーカラーズ 星の声(2023)
シャニソンのOP映像が美しすぎた。シャニマスの方は初期からやってきてたけど、改めて「輝きのプロローグ」は来るものがある。
ちなみに、歌いわけで一番心地よく感じるメンバーと配置を模索したらこんな感じになった(凛世とルカは気分で位置を入れ替えたりする)。
ネット
r-906 ボイドロイド(2023)
たくさん韻を踏んでて気持ちいい&バチクソカッコいいし、歌詞にも今まで取り上げてきた私の好きポイントが点在している。
これはボカロがいける人には一回聞いてみてほしい。あんまり語らない方が良さそう。好きなフレーズだけ紹介しておこう。
てなわけで「言葉」がテーマに上がると嬉しくなっちゃうんだよね。
これは2番の歌詞だが、1番の歌詞と対応していて気持ちいいので、そこもチェックしてみてほしい。
ヰ世界情緒 ラピスのお人形(2023)
はるまきごはん×ヰ世界情緒は鉄板。「とめどなき白情」「霞がついてくる」も大好きなので是非。
トイ・ストーリー見たことないんだけど「捨てられるおもちゃがなんか頑張る話」で合ってるだろうか? ともかく、そういう意味でのトイ・ストーリーっぽさがあると思う。トイ・ストーリーの悲哀の要素を煮詰めたような感じだ。
幻想的で情感もあるのに、どこか淡々としている。なんというか、この人形はあくまで人形でしかないんだろうって思わせるような歌い方だ。心のようなものをもったところで、人間じゃないんだぞっていう。
苦しくならないか? いや人形だし別に……自分人間なんで……みたいな汚い気持ちが溢れてきて自分の中でぶつかるのもまた楽しい。
その他、お気に入りをサラッと
富田開登 ハッ(2023)
ポップで聞いていて気持ちいい。サビの歌詞「愛を欲しているから 美しくたって汚くったって それを離したくない」。この割り切り方が好き。今まで紹介してきた楽曲に、「美しい」方への欲求が強く出ているものが多かったからこそ、たまにこういうのに出会うと「それもそうよね」とか思う。
Dios Bloom(2022)
今現在、じわじわとこのバンドを好きになっている。
「わたし もう傷だらけだったから」の力強い悲しさ、「鮮やかな黒」という撞着語法が印象に強い。
Diosは「王」もかなり好きな曲。
一時期外国の昔の歌を聞いてた
特に説明はいらないと思われ。なんかハマってたんだよ。なんか。
終わり(紹介曲+αのプレイリスト)
最後に、紹介した曲と紹介しそびれたけど是非ともオススメしたい曲を集めたプレイリストを貼ってこの記事は終わりにしたいと思う。読んでくださった方はありがとう。曲を聞いてくれた人はもっとありがとう。
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