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絵を描く過程の話とそこで得る確かさについて

初めまして、キッキと申します。
私は平日働く傍ら、休日や終業後に趣味で絵を描いています。

本記事では、サムネイルにもなっている習作の構想から完成までを振り返るとともに、何を考えどんな工程で制作しているかをお話し出来ればと思います。


絵の具を触るまでの工程

動機・目的

絵を描く動機は作者や作品、また時代によって様々です。
諸説はありますが、ピカソは平和を求めてゲルニカを描き、ゴッホは自身の生活へゴーギャンを迎えるためにひまわりを描いたとされています。

私の場合は、瞬間瞬間の感覚、感情または感動が動機となり、それを繋ぎ止める目的で絵を描いています。絵を描く工程が不確かな感覚を留めておく錨となって、そこにあることを確かにしてくれる気がしています。
あとは、描くという行為そのものの楽しさも動機のひとつです。線を引くこと、色を選ぶこと、絵の具を載せること。ひとつひとつの工程を楽しむための制作でもあります。

モチーフの選定

今回は、夏祭りにて一目惚れの末手に入れたラバーダックをモチーフとします。

夏祭りのスーパーボールすくいで手に入れたラバーダック。押すと鳴るぴぃぴぃという音と、あどけない表情が愛らしい。

水に浮かぶ姿に一目惚れしたため、「水面の有機的な煌めきとラバーダックの無機質なマットさ」「水面の不規則な揺らめきとラバーダックの人工的な曲線」「ラバーダックの黄と水面(水底)が持つ青」3つの対比のひんやりとした不思議さに魅力を感じたため、そこを意識して描いていきます。

エスキース

エスキースとは、下描きよりも前の段階で出力されるスケッチのことです。
第一段階として、モチーフであるラバーダックを様々な角度からスケッチしていきます。角度によって印象は随分変わりますし、これを経ることでモチーフの造形への理解も深まります。

今回のスケッチの一部。思ったよりも首が後ろに付いていて、思っているより少し頭が小さい。

一通りラバーダックのスケッチが済んだら、次は画面構成を考えます。

画面に対する大きさや角度、位置の組み合わせは無限大です。深く考えずに思い浮かんだものは出力していきます。

さて、合計25のアイデアを出しました。その中で今回はこちらの画面構成を選ぼうと思います。

今回選んだ構図。あえて二匹とも映さず一匹は水面の反射のみであるところが画面の外へ広がりを感じて良い。

画材の準備

構成も決まったので早速描く準備をします。
今回使用する絵の具は「アキーラ(AQYLA)」という絵の具と、アクリル絵の具です。

アキーラは、クサカベと言う画材メーカーから販売されています。アクリル絵の具と油絵具の利点を併せ持つこの絵の具は、どちらの絵の具とも併用ができます。

また、油絵具のような質感を持ちながら表面はアクリル絵の具のように速乾性に優れ、内側は油絵具のようにゆっくりと固まるという特性を持っています。

あとはメディウム、筆、パレット、筆洗、キャンバスを用意して汚れてもよい服に着替えれば準備は完了です。

キャンバスへの描画

まずは全体を大きくとらえて印象レベルで色を乗せます。
画面に対してのざっくりとしたサイズ感や配色と色のバランスがわかればOKです。

ラバーダックの形を整えながら、奥のラバーダックの反射と水底を書き加えました。奥行と視点の位置を意識しながら描いてゆきます。
水面と水底では高さが違うため見え方が変わる、というところに若干難航しています。

また、作品を制作しながら定期的にキャンバスから離れて遠くから見るということを意識しています。細部を描き込んでいくことで全体のバランスや印象を損なっていないか確認するためです。

さらにラバーダックの形を整え立体感を作り込んでいきます。
右上から光が当たっていることを意識しながら、ラバーダックの鮮やかさを損なわないように、なるべくチューブから出したままの色を用いて明度から下げるよう陰を置きます。

そういえばこの辺りでタイトルを思いついたような気がします。この作品には「タユたう」というタイトルをつけました。
意味としては日本語の「揺蕩う」と同じで、水面とラバーダックの関係を見たままに表しています。ですが前述の通り印象の対比を想って描いているため、ひらがなとカタカナを混在させました。

水面の描写を加え、ラバーダックの描き込みを増やしました。段々と完成系が見えてきます。愛らしい顔を描くと一気に雰囲気が変わりましたね。
あとは質感を追求しながら細かい部分を加筆、微調整したら完成です。

水面の手前側、ラバーダックと水の接地面、タイルの継ぎ目の距離感などを修正しています。

離れて見て感じた水底の水平感に対する違和感なんかも修正していきます。

「タユたう」完成

最後に


いかがだったでしょうか。色や質感の対比が上手くいったのではないでしょうか。涼しげな印象で気に入ったので、夏が終わるまで自室に飾っておこうかと思います。

絵を描く工程を経て、ラバーダックと水の対比へ抱いた感覚は泡とならず留まってくれたことでしょう。

絵を描く習慣がない人にとっては、絵を描くということのハードルは高いと思います。とくにアナログな絵はいくつも道具を買いそろえることや環境を整えることも必要です。
なのでこの記事で少しでも絵を描くことの楽しさや工程を感じていただき、絵をかいてみたいと思っている方にとっては後押しになればよいなと思います。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。


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