勝ち点よりも大切なものはあるのか。

明治安田生命J2リーグ
V・ファーレン長崎対藤枝MYFC
5-1で敗戦。
『サッカー王国静岡』の中で選ばれるチームブランディングと勝ち点との両立。
藤枝MYFCが挑む新たな課題はファンサポーターと共有してこそ達成出来るものだと確信しています。


この日はDAZNでの観戦。
昼に行われた静岡ダービーは清水エスパルスさんが勝利。
その結果もあってか勝利を期待して観戦するも結果は惨敗。
理由は前節までの守備的なサッカーから攻撃的なサッカーへシフトチェンジしたことが大きく影響しています。


「え?あれだけ勝てなかったサッカーに逆戻り?」と感じた貴方。
半分合っていると思います。
この日の藤枝MYFCのサッカーはスコア以上に内容の濃いもので、美しいビルドアップや崩しといった場面でも見応えのある試合でした。
所謂「今日は藤枝MYFCの日じゃなかったよね」と言われるような不運な場面もあり、シーズン途中で完全移籍で加入した中川風希選手の初得点もあり、収穫のあった一日だったと言えるでしょう。
しかし、どれだけ美しいビルドアップや崩しがあったとしてもサッカーには芸術点がありません。
そのため、「良いサッカー」を続けていたとしても「勝ち点への期待値」と結び付かなければクラブチームの規模は下がり「その先の景色」を観ることが出来なくなります。
PO圏内を目標に掲げているチームにとって、これまでの4戦で勝ち点をしっかりと積み上げてきた実績のある戦術を捨てて、9戦勝ち無しの戦術を再び拾うというのは常軌を逸していると思われても不思議はありません。


しかし、ここで考えなければいけないのは藤枝MYFCのこれからについてです。
これまでのJリーグの歴史において、勢いに任せてJ1に昇格したチームもありますが、その多くはそのままJ1に定着することなくJ2へ降格。
さらにその下のJ3へ落ちることも珍しくありません。
つまり、「チームとしての土台」をしっかりと固めてからカテゴリーを上げていかなければ、その高い壁に弾き返され、今よりも状況を悪化させてしまうかもしれないのです。


藤枝MYFCの掲げるサッカーは「超攻撃的エンターテイメントサッカー」。
この“ブランド”をしっかり定着させ、静岡県内Jクラブと差別化していくことが今後の大きな課題となっていきます。
もちろん「勝つこと」は大切ですが、藤枝MYFCが達成しなければいけない課題は「Jクラブの中からファンサポーターに『選ばれる』こと」という更に大きなものがあるということも忘れてはいけません。
達成する優先順位はその都度変わりますが、この課題をおざなりにした瞬間に清水エスパルスさんやジュビロ磐田さん、アスルクラロ沼津さんといった魅力的なクラブチームと差が広がっていくのは火を見るより明らかです。
そうならないためにも、チームとしてのブランディングを固めて高めていく必要があり、そのためにポゼッションを優先したサッカーを選択したという一面もあるでしょう。

また、

30%台の保持率で勝つというのがJ1にしろ、そういうサッカー(が多い)。それはもちろん分かっていますが、65%の保持率でも勝てるよねというサッカーにわれわれはチャレンジしている。守備の部分が構築されたので、攻撃の部分の上積みをして、なおかつ長崎さんはキーパスというかラインを越えるボールに対するウィークがあったので、そこをうまく突ければこの試合でも成長できるし、この試合でも65%の保持率を出しながら勝つことができるのかなという意味で、今日はこの選択をしました。

Jリーグ公式サイト
藤枝MYFC須藤監督

と須藤監督が語るように長崎さんのサッカーをスカウティングした結果、ポゼッションサッカーを選択しても勝ち点を積み上げることが出来るという想定もあったこともコメント内で明かしており、闇雲に『自分たちのサッカー」を固執しているわけではないことも伝わります。

選手からは、

僕らは攻撃的に、今日みたいなサッカーをチームとしてやりたいと思っています。でも、なかなか勝てない段階で守備の割合というか、そこに重きを置くようなサッカーをしていたのですが、それで勝てたからOKではなくて、本質というか、僕らが本当にやりたいサッカーは攻撃的にボールを持つ時間を増やすというもの。ただ、4試合うまくいっていたというか、負けていなかったという事実もあります。ここ4試合を守備的というのだったら、守備的にいく時間をこれまでがゼロだったらそれを3だったり、4だったりと割合を増やしていくバランスをいま探っている段階です。今日も攻撃的にいきましたけれど、ここ4試合うまくいっていた部分は自分たちのスタイルとして組み込んでいかないといけない。

夏にメンバーの入れ替えもあって、新しいスタイルを構築しようという中で、ここ4試合は割り切ったサッカーをやっていましたけれど、それでOKではないので。4試合うまくいったから新しいスタイルができたという意見もあるのですが、そうじゃなくて、まだまだ試行錯誤の段階。攻撃的にいくのか、守備の時間、ブロックを作って失点をしないための時間を作る。その割合をチームとして合わせていかないといけない。まだまだ手探りの段階という感覚ですね。

Jリーグ公式サイト
横山選手コメント

という中心メンバーの横山選手のコメントがあるように、ここ4試合で結果を出していたサッカーと超攻撃的サッカーを如何に融合させていくのか、まだまだ完成は遠い印象です。
勝ち点45を獲得して残留がほぼ手中にある今だからこそのチャレンジであり、来季を見据えた戦術であることも伝わってきます。


ここから先、ますます進化する藤枝MYFCのサッカー。
しかし、残留争いも一層厳しさを増しています。
上位との対決が終わっても油断することは出来ません。
J3をギリギリで通過してきた地方中小クラブチームがチームブランディングを高めながら残留を達成することが出来るのか。
この藤枝MYFCの挑戦は未来への種蒔きとなる!
キツいときこそ声出して、チームを支えていくぞ!
藤枝一丸!ここからが本番だ!!

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