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物理チャレンジ2021予選解答(案)後半

物理チャレンジ2021年第1チャレンジ理論問題の解答案です。公式からの発表は(多分2025年終了後に5年分の問題集頒布が始まるまで)ありませんので、間違っている可能性もあることをご了承ください。
https://www.jpho.jp/2021/2021-1st-chal-theory-problems.pdf

前半の基礎総合の解答はこちら

問15
物体にかかる力のつり合いを考えた時、物体が板から受ける抗力の大きさはどの場合でも等しくこれでは判断できない。
しかし、力のモーメントを用いて物体が回転しない条件を考えると作用点が変わることがわかり、ここから板に対する垂直抗力の大小関係がわかる。

Aの状況(図1に対応)
Bの状況(図2に対応)
板に働く力
※ただし、P,Qにはたらく水平方向の摩擦力は省略。
そのため図の上では水平方向はつり合っていない

このように考えると、AよりもBの方が作用点がP側に近づくので、垂直抗力の大きさは③ $${ R_A > R_B > N_B > N_A}$$ である。

問16

つり合っているときの力を図示

最初の状況でつり合っているため、鉛直方向のつり合いの力を考えると、$${2S\sin \theta =mg}$$である。ここで、近似を用いて、$${\sin \theta \fallingdotseq \theta \fallingdotseq \tan \theta = \frac{x_0}{L} }$$である。よって、つり合いの式は$${2S \frac{x_0}{L} =mg}$$と表せる。


dだけ引っ張ったときの力を図示
(Sの大きさは変わらず、向きだけが変わる)

ここからおもりを下にdだけ引っ張ったとき、糸の張力Sの大きさは変わらず張力がはたらく角度だけが変わるので、物体にはたらくの大きさは上向きを正として、$${2S \sin \theta^\prime-mg =2S \frac{x_0+d}{L} -2S \frac{x_0}{L}=\frac{2S}{L}d}$$となり、はたらく力が$${x_0}$$だけ下がった点からの変位に比例するため、単振動となる。よって求める周期は①$${2\pi \sqrt{\frac{mL}{2S}}}$$である。

問17
球形の物体の回転運動を考える。重力と垂直抗力の力のモーメントは0であるため、摩擦力のみが回転運動に影響する。
上るときは時計回りに回転しており、かつ上るにつれて回転速度が遅くなる。つまり、反時計回りに回転する方向に力のモーメントはかかっているため、斜面上向きの摩擦力がかかる。
下るときも同様に考える。反時計回りに回転しており、下るにつれて回転速度は大きくなる。つまり、反時計回りに回転する方向に力のモーメントがかかっているため、斜面上向きの摩擦力がかかる。
よって①
※回転した状態で斜面を登ると、回転しない場合に比べてより高くまで登れる。回転を許して斜面を下ると、回転しない場合に比べて速度が遅くなる(どちらも運動エネルギー・位置エネルギー以外に回転にもエネルギーがある)ことと整合的である。

問18

問18

高さ$${kr}$$の地点において小物体がレールから離れたとする。
この時、ちょうど垂直抗力が0になり、物体に働く力は重力と遠心力だけであるので、これらのレールに垂直方向にはたらく力がつりあっている。
球の質量をm、重力加速度をgとして、
この時、力学的エネルギー保存の法則より速度$${v^2}$$は

$$
mg2r + \frac{1}{2}m0^2 = mgkr + \frac{1}{2} m v^2 \\
\Leftrightarrow v^2=2(2-k)rg
$$

また、(重力の鉛直下向きの大きさ):(重力の分力のレールに垂直方向の大きさ)=1:(k-1)である。
よって、遠心力と重力の、レールに垂直方向のつり合いの式は

$$
m\frac{v^2}{r}=mg \cdot \frac{k-1}{1}\\
\Leftrightarrow m\frac{2(2-k)rg}{r}=mg\cdot \frac{k-1}{1} \\
\Leftrightarrow 4-2k=k-1 \\
\Leftrightarrow k=\frac{5}{3}
$$

よって、②

問19
③??
温度によらず対称だから?

問20
$${PV=nRT}$$より、各点での体積を求めると、

$$
V_A=\frac{nRT_1}{p_1} \\
V_B=\frac{nRT_2}{p_1} \\
V_C=\frac{nRT_2}{p_2} \\
V_D=\frac{nRT_1}{p_2} \\
$$

より、

$$
W_1 = p_1(V_B-V_A)=p_1 \cdot \frac{nR(T_2-T_1)}{p_1}=nR(T_2-T_1) \\
W_2 = p_2(V_C-V_D)=p_2 \cdot \frac{nR(T_2-T_1)}{p_2}=nR(T_2-T_1)
$$

よって、②$${W_1=W_2}$$

問21
一番上のアンテナから発信される波動の位相を正と考えると
・真ん中のアンテナは距離が $${\frac{\lambda}{2}}$$だけ長いため、位相が半分だけずれるので負。
・一番下のアンテナは距離が$${\lambda}$$だけ長いため、位相は一番上と一致しているので正。
これより、位相の正負を考えて電波を合成し、その強さを考えると
a→どちらの端を止めたとしても正+負で0
b→正+正となり+2
c→正+負+正となり+1
よって②$${b>c>a}$$である。

問22
光には逆行性があるため、レンズの2か所は対称のため、dはDのちょうど中心に来る。
よって、光源とレンズの距離は$${\frac{D-d}{2}}$$であり、レンズとスクリーンの距離は$${\frac{D+d}{2}}$$である。
レンズの公式より、aを光源とレンズの距離、bをレンズとスクリーンの距離、fを焦点距離として、$${\frac{1}{a}+\frac{1}{b}=\frac{1}{f}}$$が成り立つので、上記を代入して①$${f=\frac{D^2-d^2}{4D}}$$。

問23
レンツの法則より、電磁誘導による電流は磁場の変化(この場合は、棒磁石の動き)を打ち消す方向に誘導電流が流れる。
結果的には磁石は常に減速する向き(ただし、コイルに近づくときと離れていく時で電流の向きは変わる)に力を受けるので①

問24
???Bが固定と仮定すると⑤$${\frac{1}{4}}$$?

問25
G上の輝点が1点の時、その輝点に到達した電子は、$${K_1}$$を通過した後も$${K_2}$$を通過した後も直進しているので、どちらにおいても電圧の位相は0である(厳密には平行平板電極を通過している間の電圧の積分が0)。
すなわち、装置内を通過する電子の速度をvとすると、$${L=\frac{v}{f}\frac{n}{2} \Leftrightarrow v=\frac{2fL}{n}}$$である。
また、vは電圧Vによって加速されるので、エネルギー保存則より$${\frac{1}{2}mv^2=eV \Leftrightarrow \frac{e}{m}=\frac{v^2}{2V}}$$である。
よって、$${\frac{e}{m}=\frac{1}{2V}\cdot (\frac{2fL}{n})^2=\frac{2f^2L^2}{n^2V}}$$となり①

問26
求める点Pでの電位をxVとおく。以下、左向きの電流を正とする。
抵抗$${R_1}$$について、抵抗の右側の電位が(10+x)V、抵抗の左側の電位は0V、電気抵抗が5Ωであるので、流れる電流は$${\frac{10+x}{5}}$$A
抵抗$${R_2}$$について、抵抗の右側の電位がxV、抵抗の左側の電位は0V、電気抵抗が10Ωであるので、流れる電流は$${\frac{x}{10}}$$A
抵抗$${R_3}$$について、抵抗の右側の電位が10V、抵抗の左側の電位はxV、電気抵抗が10Ωであるので、流れる電流は$${\frac{10-x}{10}}$$A
キルヒホッフの法則より($${R_1}$$に流れる電流)+($${R_2}$$に流れる電流)=($${R_3}$$に流れる電流)なので、
$${\frac{10+x}{5}+\frac{x}{10}=\frac{10-x}{10}}$$より、②$${x=-2.5}$$V

問27
溜められた電荷Qは等しいのでi-tグラフを積分した値は抵抗を変えても変わらない。よって②。

問28
1年=365日後には、半減期が3日の放射性原子核の放射能は$${(\frac{1}{2})^{122}}$$となり、ほぼ0なので、1年後の放射能の強さは、すべて半減期が1年の原子核に由来すると考えられる。つまり、半減期1年の原子核のはじめの放射能の強さは150Bqであり、半減期3日の原子核の放射能の強さは250Bqである(なお、この過程で3日ごと半年後の放射能の強さを概算しても計算に合う)
よって、6日後はの放射能の強さは、半減期3日の原子核由来のものは$${250 \times (\frac{1}{2})^2=62.5}$$Bqであり、半減期1年の原子核由来のものは150Bqからほぼ変わっていない。よって、求める放射能の強さは212.5Bq弱である③。



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