第3回 2人なら可能性は広がる
これはシードペーパーを扱うSOUPと、以前から友人であった福祉業界35年のベテラン、武蔵原くんとの協働と、それにまつわるストーリーの最終回です。
お互いが夢や希望を胸にスタートし、少しのつまづきがあっても、今また着実に前に進んでいく、そんな前向きな気持ちにあふれています。
紙を破くことが精神を落ち着かせ、仕事にもつながる
福祉作業所「あい・わーくす」では、花咲く和紙の印刷、型抜き、セット作業のほか、紙ゴミをリサイクルする「古紙から花へ」の中で、古紙を分別し細かく破る作業を、重度の障がいを持った通所者に担ってもらっています。
シードペーパーを作るため、古紙が細かくシュレッダーされている方が早くパルプ化できます。もともと紙破りは彼らの精神を落ち着かせるものでしたが、彼らの得意な紙破りが仕事としてお願いでき、今では彼らの評価につながっています。
福祉作業所でありながら、認定農家でもある「あい・わーくす」
そもそも、あい・わーくすは農業を主な活動にしているチームと、シードペーパーの印刷加工を主に行っているチームがあります。
全般的には農業と福祉が連携した認定農家でもあり、地域との連携をテーマに掲げ、15万羽を平飼いしている養鶏場の鶏舎管理全般を行ったり、耕作放棄地を使ってネギ栽培に取り組んでいます。武蔵原くんをはじめ、それまで農業の経験者は誰ひとりいないにも関わらず、最初の年から長ネギ8万本を出荷し、昨年は40万本を収穫しました。ちなみにネギは農協に出荷するほか、バイヤーとも直接取引きしています。
「農業と福祉が連携した作業所を増やし、さらに障がいを持った人たちを支えていきたいですね」
武蔵原くんはそんな思いを口にします。
花咲く和紙の可能性は広がる
このように、起業してゼロから仕事を築いてきたことは、武蔵くんとわたし自身似ているところがあるかもしれません。
前例のない仕事をつくる。やりたいと思ったことは思い切ってやってみる。毎年進化する。そのために必要な知識や技術は自力で学んで習得する。そういった姿勢が似ているからこそ、単なる幼馴染を超えて、ビジネスとしても繋がっていけるのかもしれません。
「シードペーパーに携わりたいという作業所が増えると嬉しい」武蔵原くんは言います。
SOUPとあい・わーくすの共同作業は、今後まだまだ広がっていきます。たった2年で、ひとつの仕事で500部だった製造規模は、今や10000部も視野に入っています。印刷や型抜きの精度も向上し、完了までのスピード感も格段にアップしてきました。
将来的には紙漉きを担う人材も現れてくれるよう願ってやみません。
武蔵原くんはもっとタネを増やし、花咲く和紙をつくるときにユーザーがタネを選べるようにしていきたい、クリアしなければならない課題はあるが、花を育て使用する種を作りたいと、農園主らしいことを言っています。
「障がい者が手がけた仕事だとは謳っていません。周囲からの温情より、誇りを持ってやっていきたい」この言葉は通所者への気持ちもありますが、地域貢献をしたいとの思いも彼を駆り立てています。
本当に心強いパートナーです。
下は作業所の近くに広がる風景です。何もありませんが、訪れるとリフレッシュできるのは、ここに流れる穏やかな時間と、あい・わーくすとの未来が明るく見えるからかもしれません。
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