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念じて機械を動かす、ブレーンマシンインターフェースとは?

今回のセクションCのブログでは、脳の信号を読み取って直接各種機器を操作する技術である「ブレーンマシンインターフェース」を取り上げます。

SFの世界が現実に、ブレーンマシンインターフェースとは?


念じるだけで機械を動かすことができる。そんな世界を科学の力で実現した近未来を描いたのが、SF映画マトリクスや攻殻機動隊でした。当時は、SFやアニメの世界の中だけのもので、まさか現実になるなんて全く思っていませんでした。

テストの前には、将来脳に演算チップや記憶チップを埋め込む世界がやってくるから、今勉強した内容を覚えなくても大丈夫になるはずなんていう話しをした覚えもあります。でもやっぱり生きているうちにそんな世界が来るなんて信じていなかったように思います。

しかし、2017年には米フェイスブックや起業家でテスラモーターズやSpaceXを率いるイーロン・マスク氏が脳とコンピューターをつなぐ技術の開発を相次いで発表し、一気に現実の世界で実現する兆しが見えてきています。

脳へ刺激を与えるブレーンマシンシンターフェース


ブレーンマシンインターフェースと呼ばれるこの技術、脳波等の検出や、脳へ刺激を与えるといった方法で脳とコンピューターとを直接つなぐ技術の総称で、生体に電極を挿入したり医療機器を埋め込んだりする侵襲的手法と、それが必要ない非侵襲的手法の大きく二種類に大別されます。

侵襲的手法は、まだ研究の初期段階ではあるけれど、神経疾患の患者の治療を目的としてすでに医療現場で利用され始めています。体を動かすことができない患者向けに患者が考えるだけでパソコンが操作できるようにすることでその意志疎通をサポートしようという取り組みを、NHKの特集等で見られた方も多いのではないでしょうか。脳の表面に直接電極を取り付け、その信号をケーブルでパソコンに送ることで実現しています。
(引用元:日経電子版 https://style.nikkei.com/article/DGXKZO12499470T00C17A2TZQ001?channel=DF130120166089)

また、パーキンソン病向けでは、脳深部刺激法(DBS)というブレーンマシンインターフェースがすでに多くの患者に利用されています。脳に細い針を埋め込み、手足の震えやこわばりなどの症状を緩和することが可能です。
(引用元:順天堂大学脳神経内科HP http://www.juntendo-neurology.com/n- noshinbu.html)

イーロン・マスク氏が立ち上げを発表した新会社「Neuralink」では、脳で考えたことを言語化せずにダイレクトに伝達できるようにするための体内に埋め込む人工知能(AI)チップ開発に取り組んでいます。US$27Million (約30億円)を投資して、世界の有力研究者を集めており、4年程度で医療向けのデバイスを開発していくとしています。
(引用元:The Wall Street Journal https://www.wsj.com/articles/musk-backed- startup-neuralink- raises-first- funding-1503684703)

猫耳にもブレーンマシンインターフェース!


非侵襲型のブレーンマシーンインターフェースで実用化されたものとして有名なのが、「猫耳(necomimi)」です。Amazonで数千円で売っていて、集中すると耳が立ち上がって、リラックスするとくたりと寝た状態になるというおもちゃのようなものですが、脳波を検出して装置を動かしているという意味で実用化の走りと言えると思います。

まだ販売はされていないようですが、大阪大学発ベンチャー企業PGV株式会社と大阪大学の関谷研究室が共同で開発しているのがパッチ式の脳波センサー技術。HPの動画を見ると、頭に冷えピタのような脳波センサーをつけた人と、ロボットが連動して動いていて、自分が考えればロボットが代わりに何かやってくれる時代が来るのかなと期待が膨らみます。(引用元:PGV株式会社 HP http://www.pgv.co.jp/technology/index.html)

ブレーンマシンインターフェースは、2014年の世界経済フォーラムで、有望な新規技術トップ10に選ばれており、2013年にオバマ前大統領がBRAIN Initiativeという政策を発表する等、特に米国において活発に推進されています。日本でも、2007年に閣議決定された長期政策である「イノベーション25」にブレーンマシーンインターフェース技術が盛り込まれました。ではこのブレーンマシンインターフェース技術において日本はどのような立ち位置にいるのでしょうか。

日本のブレーンマシンインターフェース市場は?


AMED(日本医療研究開発機構)が調査した「平成27年度BMI分野における技術動向調査」(https://www.amed.go.jp/content/000002967.pdf)によると,特許出願数では米国、中国、オーストラリア、韓国に次いで日本は5番目であり、2009年をピークに減少傾向にあります。

日本の機関(大学・企業)で最も出願ファミリ数が多いのはパナソニック株式会社で、その他国際電気通信基礎技術研究所、ソニー株式会社までがTop3です。特に測定精度向上や健常者向けの出願が多く非侵襲型の研究が多いというのが日本の研究における特徴と考えられます。大学における研究の量(論文数)でも米国の存在感が強いです。著者所属機関別の論文数で上位20機関のうち15機関が米国の所属となっています。日本の大学の中では、大阪大学が最も論文数が多く、次いで東京大学、奈良先端科学技術大学院大学です。

本格的な実用化にあたっては、ヒトの体内に埋め込んだ際の安全性、倫理面での課題など数多くの問題が存在しますが、少子高齢化の日本が先導していくことができる未来の技術の一つなのではないかなと考えております。

株式会社セクションC HPへのリンク

http://sectionc.tokyo/blog

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