21歳から始める推しコンテンツの話[映像コンテンツ編]攻殻機動隊 後篇

前回までは押井守版攻殻機動隊を話してきたが、今回は神山健治監督の攻殻機動隊を話していきたい。おそらく、一番文字数が多くなるがご容赦願いたい。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX シリーズ

画像はamazon様より拝借

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 このシリーズは2002年よりテレビで放映されたアニメシリーズで現在、
攻殻機動隊 Stand Alone Complex 
攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG
攻殻機動隊 S.A.C Solid State Society
攻殻機動隊 S.A.C 2045
が存在している。

まず、重要なのが、神山版は現代の社会問題をテーマにした攻殻機動隊だ。
Stand Alone Complexでは集団心理と政治家の汚職を
2nd GIGでは難民問題を
Solid State Societyでは少子高齢社会を
2045ではジャスティスハラスメントと経済問題を

テーマにシナリオを作成している。
更に掘り下げると、メインシナリオと単発シナリオで分かれていて一度で二度楽しめる構成になっている。
この構成はSolid State Societyを除いたアニメシリーズ全て同じシリーズの構成の仕方が取られている(2045は比較的単発は少ない。)

今回はこの作品達を軽く紹介していきたい。


攻殻機動隊 Stand Alone Complex


 2002年よりProduction I.Gが制作し、放映されたこのアニメは押井守監督の攻殻機動隊という世界で称賛された映画と同じ名前を語り、様々なプレッシャーがある中でそれを乗り越え、新たな攻殻を作り上げた第一作である。

完成度はとても高い。(それでも作画に安定性がないのはおいておこう)
とは言っても攻殻機動隊としてのテーマはしっかりと受け継いでいる。
時代設定とキャラの設定はかなり変わってるものの、その他の設定はほぼ同じで公安9課が活躍する物語である。

時代設定は神山監督のアニメーション作品である「東のエデン」と同じ世界線に当たり、原作と押井守版の世界線とは異なっている。
キャラの設定も前者の2つと異なっており、シリアスな押井版、コミカルな原作(士郎版)の間のキャラ構想になっている。(明るすぎず暗すぎず、割と人間臭い感じ。)
少佐も少し明るい雰囲気を醸し出しており、冗談を言うくらいにはなっている。荒牧課長も押井守版の攻殻機動隊では9課存続と政治的取引を最優先事項としていたが、SACではメンバーあっての9課であるという考えで

Stand Alone Complex(以下SAC)は笑い男事件と言われる未解決事件を追って様々な陰謀に立ち向かうストーリーである。その他にも単発エピソードもあるが、本筋は笑い男に関するストーリーである。
警察の汚職や政治家の陰謀など実際にはそうあって欲しくない事件がたくさん出てくる。
かっこいいSF刑事モノかと思いきや、人間の心理の問題、ロボットのアイデンティティーの問題などもテーマにからめてきており何度観ても飽きない構成となっている。
単発のエピソードもなかなか面白く、一つ一つテーマを設定してストーリーが練られている。

 この作品にも押井守監督の攻殻機動隊のオマージュ(イノセンス)や原作のオマージュなどもある。(キャラの外見や単発ストーリーなど)
その他にも、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電脳羊の夢を見るか」を原作にした「ブレードランナー」という映画のオマージュがされている。「視覚素子は笑う」のトグサのシーンを観てみれば一目瞭然だ。
その他にもSF映画の金字塔「スター・ウォーズ」のEP4でR2-D2が帝国軍のサーバーにアクセスするシーンもオマージュされている。詳しくは「ささやかな反乱」をチェックだ!

 ちなみに音楽は有名なSFアニメ、「カウボーイビバップ」の音楽を担当している菅野よう子さんが担当している。カウボーイビバップはウェスタンミュージックが多かった(特に有名なオープニングであるTank!)
今回は様々なジャンルの曲を制作している。特にシンセサイザーの使い方が秀逸だった。オープニングテーマの「Inner Universe」がめちゃくちゃいい。歌詞と歌を担当したのはロシアの歌手であるOrigaさんだ。以前から菅野よう子さんとタッグを組みCMソングやアニメ・ソングを世の中に送り出してきた美くしい歌声の持ち主であるOrigaさんだが、残念ながら2015年にこの世を去っている。私も一度は生で聴いてみたかった。
 菅野よう子さんとOrigaさんのタッグはSAC SSSまでの音楽を担当しているのでぜひそこにも注目していただきたい。


攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG


画像はamazon様から拝借

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 2004年に放映されたS.A.Cの続編、2nd GIGはハリウッド実写版、GHOST IN THE SHELLで出てきたキャラクター、クゼが最初に登場したアニメとしても印象深い。
今作は押井監督も制作に参加しており、神山監督にアドバイスを送っているため、前回に比べて少しシリアスなシーンが多めである。
なによりも私がこの作品の一番良いところとしてあげたいのはこのアニメが取り扱った社会問題のテーマが「難民問題」と言う点だ。

2nd GIGの背景設定では戦後直後に架空のアジア国が崩壊し、難民が大量に発生したためどこかの国が受け入れなければならない状態で日本は安価な労働力を求めていたため受け入れを決定、出島と言われる長崎人工島を招慰難民地区に指定し住まわせることにした。
それから時間が経ち、個別の什一人事件という難民排除テロを起こした事件から難民が扱いの不満、税金が難民に莫大なお金が使われているという事実に国民の不満がぶつかり日本がまた混沌の渦と化す…。そんなストーリーだ。
前作のキーキャラクターである、ある天才の英雄と相反した天才、英雄になりたくてもなれなかった人間のエゴから始まる事件だが、彼もまた、他国の人間を犠牲にして成り立つ桃源郷など必要無いという思いから来ている純粋な愛国心をもつ人間なのかもしれない。そんなことを思いながら観ていると少し話も違う視点から見れるかもしれない。

どうだろう?実際にありそうな話ではないだろうか?確かに、日本は難民を求めていなくても他の国の圧力から従わざるを得ない状況になってしまった場合受け入れざるを得ない可能性だってある。
近くの国に、もしかしたら崩壊する可能性の国が出てくるかもしれない。
本当にこの作品はもしかしたらありうるかもしれないシナリオを作ってくるのが上手い。それはSFと言うジャンルは関係なしにだ。

 単発シナリオでも9課のメンバーがメインとなったエピソードが多く、特に荒巻課長やサイトーのエピソードがおすすめだ。

そして、S.A.Cシリーズの中の草薙素子の出生の秘密が明らかとかなる。

余談ではあるが、SACは神山監督の別アニメ、「東のエデン」と同じ世界線にあるため、草薙が巻き込まれた事件がそちらの方で出てくる。

 音楽も前作と同じく菅野よう子さん。今作では良い曲がたくさん登場する。もちろんOPなどはOrigaさんが担当。
おすすめのトラックは
・Rise
・サイバーバード
・I do

が特に良い。ぜひ聴いてみてほしい。

SACに比べて紹介が少ないのはご愛嬌。


攻殻機動隊 S.A.C Solid State Society

画像はamazon様から拝借

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 もともとはスカパーのOVAとして制作された作品だが、2011年に3D劇場版として公開したS.A.C初の映画であるSSSは更に社会問題を掘り下げていく作品でもあり、原作や押井監督の映画版でも出てきた人形使いをオマージュした傀儡廻が出てくる。

今作のテーマは「少子高齢社会」である。日本の大問題でもあるこのテーマを軸に置いたこの作品のストーリーを軽く紹介しておこう。

難民蜂起が起こり、その事件を解決した9課であったが、少佐が9課を去ってしまった。新しいリーダーとしてトグサが就任し、バトーは9課の新人を研修する教官と二足のわらじを履いて仕事をしている。
そこで、亡命してきた崩壊国のリーダーやその周りの人間がどんどん傀儡廻というハッカーに殺されていく事件が発生、バトーは調査に単独で行き、そこで少佐の姿を見つける。
一方トグサは子供の誘拐事件を調査していった所、貴腐老人とID不明の子どもたちの問題に気づく。そしてトグサの子供もまた誘拐の対象になってしまう。少佐の思惑は、傀儡廻とはなんなのか、様々な問題がやがてひとつに収束していく。

と言ったシナリオだ。私の語彙力が少ないのは許してほしい。

今までのSACの集大成といった感じの作品だが、本当にシナリオがよくできている。本来、SACの世界線は草薙が人形使いと出会わなかった世界線として描かれているが、人形使いの代わりにネットにさまよう傀儡廻というハッカーに出会ってしまう。
そして、原作回帰と傀儡廻の関係も素晴らしい。原作で出てくる人形使いやその他のキャラクターもオマージュとして出てくるのでそこにも注目だ。

音楽は菅野よう子さんとOrigaさん。攻殻機動隊における最後の登場だ。安定の素晴らしいOPだった。


そして物語は世界に続く。


攻殻機動隊 S.A.C 2045

画像は公式サイトから拝借

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去年だっただろうか。Youtubeで攻殻機動隊の続編がNetflixオリジナルアニメとして2020年4月に配信開始という予告を観たのは。
私は歓喜した。彼らの続きの物語を観たかった方は少なくはないだろう。
しかも今作は3DCGでの挑戦ときた。これにはファンも賛否両論だっただろう。私の場合はこうだ。
「まあSACのOPで3Dでやってたしやりたかったんやろうなぁ。」と。
ちなみに同じくNetflixOAのULTRAMANと同じ会社がCGの制作に携わっているらしい。
とりあえず一日で全部みた。感想は最高。
こういう攻殻がみたかったんだよ!って気持ちと少しハリウッドのようなストーリー構成だなぁって気持ちの半々。
SACのような少し暗いイメージで見るとん?って思う可能性もあるが、安心してほしい。後半は割とそういう感じ。

ストーリーとしては2034年のSAC SSSから11年後の2045年の話だ。
世界は産業としての戦争、サスティナブル・ウォーを始めた。しかし、何者かによって全ての銀行が取引を停止、お金はただの紙くずに成り下がってしまう。そんな中9課のメンバーの大半は日本を離れ、GHOSTという傭兵集団としてPMC(民間軍事会社)に雇われ戦場の各地を転々とする。
一方トグサは草薙に誘われたものの、家族のことを重んじて断り日本のPMCに所属していた。そんな中、荒巻元課長からの一本の電話があり、9課を再び招集したいとの指令を預かり、アメリカへ少佐達を探しに行く。そして9課はポスト・ヒューマンとの戦いに巻き込まれていく。

先に申し上げておくが2045はシーズン数が不明な作品でありまだ1シーズンしか配信されていないので先行きがわからない。それが今私の一つの楽しみでもある。おそらく視聴者の数でシーズン数が決まるのではないか、と予測している。

この作品の良い点はモーションキャプチャーを持て余すことなく使われている点だと思う。ロシア出身の日本で活躍するイラストレーター、イリヤ・クブシノブ氏がキャラデザを担当しており、前作までに比べてキャラクターのイメージが少し柔らかくなっている。若干若返ったような印象を抱くが、義体化しているため見た目は10年経っても変わらないから問題ない。

さて、ポストヒューマンという単語が出てきたが、今回のキーキャラクター達の名称として説明させていただこう。ポストヒューマンは電脳化をしているしていない関わらず、驚異的な能力を兼ね備えた人間達だ。それには子供も大人も老人も関係なく極稀な確率で誕生する後天的能力である。そんな彼らと9課はどう立ち向かっていくのだろうか。早く続きがみたい。

いつか完結したら感想を書いていけたらいいと思っている。


終わりに

だいぶ文章が多くなってしまって申し訳ない。そもそも一つの記事で全てを書こうと思ったのが大間違いだった。

私は押井版も神山版もどちらも好きだ。ARISEシリーズも好きだが、もう少し噛み砕くまでは書かないようにしようと思ったため今回は割愛させていただいた。

押井版では圧倒的な作画と台詞回しが好きだし神山版は現代と照らし合わせたストーリーと人間くさいキャラクター達、そしてAIではあるが心を持とうとしたタチコマやバイオロイド達、それらが好きだ。押井版にしかないもの、神山版にしか無いものがあるからこそどちらも何度も見返してしまう。
そんな作品なのだ。

もし興味が出た視聴者の方はぜひNetflixで観てほしい。制作会社であるProduction I.Gの作品はほとんどNetflixで配信されている。

次は何を見ようかしら。ネットは広大だわ。

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