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謝罪する:対話をアップグレードする⑥

謝罪は過ちをおかしたのならなすべき責務です。決して気分の良いものではありませんが、心からの謝罪は過ちを乗り越え前へ進む力を与えてくれます。

この記事では謝罪について考えます。

<目次>
1.謝罪は誰のためにするのか
2.良い謝罪、悪い謝罪
3.例:夫婦間の謝罪
4.まとめ

1.謝罪は誰のためにするのか

子どもの頃から、悪いことをしたら謝りなさい、と私たちは教えられて育ってきました。
でもいざそのような場面に立つと、自分ばかりが悪いわけじゃない、わざとやったわけじゃない、謝ると自分が悪いと全面的に認めてしまうことになる、とか色々な考えが浮かんで、心から謝罪することができません。これが普通です。

少し視点を変えてみましょう。過ちをおかした時、なぜ謝る必要があると思いますか?
私は迷惑をかけた相手の溜飲を下げるためだと思っていました。もちろんそのような意味もありますが、実はむしろ相手よりも自分へのメリットの方が大きいのです。

少し踏み込んで考えてみると、謝罪は、本当はこうすべきだったのにしなかったことの責任を認めるという点で、真実へ立ち戻る強さがあることを示すものです。
同時に、相手への思いやりや共感、自己認識する力の現れでもあります。

壊れた人間関係を修復するきっかけとなるだけでなく、壊れる以前には思いもよらなかった関係を実現する可能性もあります。

これほど良い行いというのもなかなかありません。心理的なストレスは確かにありますが、それを補って余りあるメリットが謝罪にはあるのです。

2.良い謝罪、悪い謝罪

良い謝罪には以下の5つの要素が含まれています。一方、悪い謝罪にはどれかが欠けているか、含まれていたとしても有害な形で表現されます。

<良い謝罪 ⇄ 悪い謝罪>
①悪い点を特定してその悪影響を認める ⇄ 正当化、影響を否認
②状況のせいにせず責任を認める ⇄ 責任回避
③心からの反省を述べる ⇄ 反省しない、形だけの反省
④問題修復方法の提案 ⇄ 条件付き提案、提案しない
⑤未来への約束をする ⇄ 間違った行動を繰り返す、再発可能性を示唆


『なぜこの人はわかってくれないのか:対立を超える対話の技術』p.180より要約して引用

3.例:夫婦間の謝罪

些細なことから口論になり、夫が怒鳴り声を上げて会話を切り上げた後、反省して夫が謝る場合はこんな感じでしょうか。

「さっきはごめん。どんどん気持ちがエスカレートしてしまって怒鳴り声を上げてしまった。夫婦ならどんな問題も辛抱強く乗り越えるべきところ、キレてその努力を放棄してしまった。結果として僕たちの信頼関係を悪化させてしまった。申し訳ない。今後は穏やかに話し合うと誓うよ。」

こんな風に謝られたらどんな気持ちがしますか。自分が謝る側だとしたらどうでしょう。凍てついた心が溶けていくような感じがしませんか。

上の謝罪では最後に今後の誓いを立てています。
未来のことなので守れるかどうかは誰にも分かりませんが、少なくとも謝罪をしない場合よりも前向きに取り組めるのは間違いないでしょう。

4.まとめ

謝罪は相手のためにするものであると同時に、自分のためにするものでもあります。謝罪の最大の力は、過ちをおかした者にやり直す力を与えてくれることです。

人は誰しも過ちをおかします。過ちをおかしたら謝罪が必要です。つまり、人は皆、謝罪を必要とするのです。

この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。

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