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SMSパリ事件簿(6/14)

日本では何かと話の議題となるのがSNS。しかしここパリではSNSよりSMSの使用頻度の方が高いくらい。みんなしてフル活用だ。

正直言ってLINEの普及もあるし、連絡先などInstagramのDMで済ませてしまっている知人(どころか友人)もいるくらいに2020年代というフューチャーをサバイブする我々日本人だが、フランスに来てからというもの「インスタやってる?」なんて聞くことも聞かれることも皆無(仕事で使っている人は除く)。
Twitterというか”X”なんてフランスに存在してんの?!てなぐらい誰もやっていない。TikTokという言葉もこちらに来てからまだ一度も聞いていない。

「結局は人であり、フランスだからとか、日本だからとかってあんまり言わない」姿勢を大切にしている昨今ではあるが、これは結構日本にいる時から比べると大きな変化だと感じている。

こちらに来てから新しく何人かと知り合ったのだが、まず、私のことなんて誰も知らないのが最高(私くらいの知名度で有名人ぶってるようじゃ参っちゃうんだけどもさ)。
それから熱心にInstagramやらTikTokやらTwitter”X”をしている人がいないので、会う前に予備知識を入れてくる人がいないのが更に最高!なのである。

日本にいる時の私の悩みは、知り合う前に相手が自分のことを知っている or 調べていることだった。しかも多くの場合、私には相手について調べる手立てがない。相手側だけがインターネットの海原にばら撒かれた虚構と嘘だらけの私を見て、一方的に「こういう人ね」と(全く悪意などなくとも)ジャッジするのだ。私はそれが本当に嫌だった。嫌だとかって言い方はあまりにも控えめすぎるくらいに嫌悪していた。

「でも、本人が発信しているものは真実じゃないの?」となるわけだが、勿論でっち上げや虚構ではないものの、表に立つ以上(私の場合、裏方仕事が半分を占めるが)それなりの役割意識というのがあって、見せていく側面は多かれ少なかれ厳選されていて当然だ。
職業柄「勘違いされている」のは宿命だが、プライベートでそれが起こると心の底からブニョブニョになったアネモネの茎みたいになってしまう。

普段私のSNSのフォローしてくれている人からすると「楽しくフォローしてるのに何なんだよ!真の姿見せてくれてるんじゃないのかよ!」となりそうだが、逆に一人の人間の全てがネットに転がっている方が怖いよってことなんだと思う。

そんなわけで、フランスではある意味のびのびと暮らしているのだが、逆にSMSを使う人はとても多くて、連絡先は殆ど必ず電話番号の交換という印象だ。

宅配の配達員まで(勿論知らない携帯電話の番号で)チャットのように気軽にメッセージを送ってくる。日本のヤマト運輸さんや郵便配達の職員さんのように”だいたいいつもの担当さん”制じゃないから、毎回知らない電話番号からのSMSが大量発生してしまうのだ。

それでここからが大事件!(大事件の告白までに1,200文字要しました)

SMSにいつものように「荷物を届けたんだけどポストにも入らなかったから、6時間以内に再配達の手配をしてください」というメッセージな届いた。

あれ?うちのプロの管理人さんが珍しくいなかったのかしら?と疑問には思ったのだけれども、SMSの軽薄さを考えるとリアリティを感じたのでリンクをクリックしてみた。

“Not Found”

なんでやねん!と思ったまま仕事に戻ったのでメッセージは放置していた。そしたら次は夕方頃、gmailのアドレスから電話番号に似たようなメッセージ。次のはなかなか凝った内容だった。

「郵便局です : あなたの荷物は届いたのですが、住所が不明瞭なのでお渡しできませんでした。12時間以内に下記のリンクから住所を入力してください。《リンク》”Y”で返答をしたらSMSを”辞めて”下さい。それからSMSのアクティベーションリンクを開き、そのリンクをコピーしてSafariで開いて下さい」

怪しさ満載のテクノロジー系。なんとなくフランス語の雰囲気が不自然に感じたのと、リンクのアドレスが “the healthy bugs shop”だったのでクリックするのはやめた。

ただし、荷物がまともに届かないフランスではあるので、Googleで「伝票番号から荷物を追跡する」と打ち込んで見た。
出てきたサイトで問い合わせをしてみると「あなたは不在でしたので再配達の必要があります。再配達には手数料が必要なので2.75€支払って下さい」と出てきたのだった。

やはり私の荷物は届いたけれども不在で戻ってしまったのだなと思い、荷物の詳細や個人情報を書き込み、2.75€をネット決済して再配達日を明日の午後指定にした。

その後である。今度は銀行からSMSが届いた。「あなたは先ほど危険なサイトで当行のカードでネット決済をしました。今すぐにアカウント情報を全部変更して、24時間対応の窓口に電話をして下さい!」と言うのだ。

心当たりはさっきの決済しかない。すぐに電話をかけると、こんな呑気で何もかも時間のかかるフランスだが「なるほどオッケー!あなたのカードを今すぐにブロックしますからこれから伝えるコードをメモして下さい。新しいカードを発行して今のカードを破棄してもらいます」と、メルカリで幾度となく目にしてきた「迅速な対応ありがとうございました」体験を提供して頂いたのだった。2.75€は引き落とされていなかった。

おそらく相手が欲しかったのは2.75€ではなく個人情報だったと思うが、兎にも角にも現代日本の申し子の一員である私にとって、余りにも不慣れなSMSが濫用されているフランス社会。「この銀行のメッセージも詐欺という壮大なマッドネスだって可能性としてあるんじゃないか?」と何もかも疑えてしまう。

便利な社会はハードだ。たかだか人間には負担になることが多いね。

こういう事件も海外移住の洗礼である。
この歳になると「なるべく失敗しない」ことを大前提としがちだし、実際選べるなら騙されたり失ったりはしたくない。

それでも、自分で失敗して勉強していくってすごく価値のあることのような気がしてならない。

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