注文の多い世武裕子店(ミシュランの星未だ貰えず)(3/6)
毎日似たり寄ったりな作業をしているようで、実際にはひとつクリアしたらまた次の障害物が現れ.... というように百本ノックな日々だ。百本ノックの隙間にピアノの練習百本ノック(シュリンク版)を挟み込んでいるので、作業の休憩に練習をして、練習の休憩に仕事をするといった装い。(TPOの概念どない)
私にとっては人生でも、相手にとっては勤務時間中の作業でしかない。重みなんて自己申告制なのだと前提にしておかなければマトモに生きていけないだろう。それでも「これは、自分の人生のかかったものなのです」と、相手の性格を読み解きながら、少しずつ丁寧に会話を積み重ね、味方になってもらうしかない。
人間の不確かさによる救いのひとつと言えよう。
VISAも降りていないのに、住宅を本格的に探し始めて早三日。
一度は足早に手を(足を)引いた方が良いと判断していた、信じ難い理由でこちらのリクエストを断ろうとしてきた家主だったが、彼女のお庭を蜂蜜の入った壺を持ってパタパタと飛んでいたら(自分がミツバチの設定なのにクマを兼任している謎の状況)「スペシャルオファー」を逆に提示してもらうという珍状況になった。「オリンピック期間中も安くするから、心配しないで!」と末文にフレンドリーな絵文字まで添えられて。
しかしながら当然、長期的に自分が住める自分名義の家を持つ方がベターなのは明白で、なんとなくあちらのお茶を濁しながらこちらのお茶を点ててみる。家そのものはミツバチパタパタ物件(仮)の方が広くて、ベッドルームもあり素敵なのだが、エリアだけで言うとあまり印象が良くなく(ただ、それなりの人数の友人たちの家まで近いのが良きポイント)、それならば後者の左岸にあるほのぼの物件(これまで左岸を毛嫌いしていたが)に心機一転住んでみるのはどうか?と考える。完璧のない世界で欲をかく地獄人間の手本にうってつけの私である。左岸のほのぼの物件は狭くて、内装は少し可愛らしく(この感じを好む女子は多そう)如何にもフレンチ、なところが少しくすぐったいが、テラスが気持ちよさそうだ。どちらの家にも浴槽はあって、それは魅力的だった。アイアムジャパニーズ。
何かと妥協しない性格のせいで作業はますます増えるのだが、現地にいないせいで、持ち前の行動力が発揮できず寂しい。このくらい時差と距離があった方が少しばかり落ち着きを持てて良いのかもしれないが。
取り敢えず後者と契約する場合に、フリーランスの外国人(しかもパリでまだ何も成し得ていない)が住宅を借りれる可能性があるとすれば、保証会社に入会することが好まれるとのことだった。
早速申し込み、フランス語を読むのもむしゃくしゃしながら(前途多難すぎ)、審査の結果は上限1600€までなら保証しますということだった。心許ないフリーランスの外国人に家を貸してくれるかどうか、そんなわけで一度審査にかけてもらうことになった。
あの頃のパリ人間(3/5の日記参照のこと)・前時代的世武裕子なので全てを熟知とは言わない。でも、パリの各エリアのことは漠然と把握しているので、自分の肌に合うかどうかを家そのものと同等に重要視している。
基本的に、ずっと家にいるとすぐにノイローゼになるので(とかすぐ大袈裟に言うけどほとんど口癖なので無視でどうぞ)うろうろと近所を徘徊したいエリアが良いのだ。かつ、健康的でオシャレすぎない界隈、コソコソ&いそいそ早歩きをしなければならないほどゲットーではない界隈、など幾つかの界隈測量の記録を巻物にして右脇に抱えつつネットを行脚している。私のことは伊能忠敬と呼んでくれたまえ。
さて、注文の多い裕子店ですので、山の睡魔に襲われてしまう前に寝る準備をするとしよう。
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