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泣きかたを忘れた子どもたち

 さきはいつも小学校から帰るとマンショの敷地内にある駐輪場を覗いて、定位置に兄の自転車がないか確認するのが日課であった。
兄の自転車のマウンテンバイクがいつものところにあると、さきは足元から崩れるような絶望感と動悸、そしてお腹の痛みを感じずにはいられなかった。

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