自己紹介ができない
他人の自己紹介を聞くことは嫌いではないと思う。
同じ人間であるのに、全く違う価値観や人生を送ってきたことを聞くのは面白い。でも、自己紹介は嫌いだ。気がついたらそうだった。
初対面の人に囲まれて、緊張ながらに発言した言葉、身振り、表情で第一印象が決まる。一度決まったものは簡単に覆るものではなく、話すようになった後から「全然思っていたイメージと違う」とよく言われる。無口、無表情、目が死んでいる、笑わない、壁がある、否定はできない。これから長く同じ環境下で過ごす場合であるならば尚更だ。相手が何を考えているかわからないのに、自分の考えを共有できない。そうすることに不安や一種の恐怖心みたいなものを感じているのだと思う。そのため、初対面からのネクストアクションはいつも受け身だ。
それに加えて、他人に語れる面白い人生も持ち合わせていない。自分はそうだと感じていても他人からすれば外の景色を見つめていた方がよっぽど面白いだろう。
エンターテインメント性やリーダーシップ、物腰の柔らかさ、表情筋の豊かさ、芸術の才能など相手に何か話題を提供できるきっかけを持ち合わせていればよかったのだろうが、自分は残念ながらその全てを持ち合わせていない。努力をすれば得られたものもあるのだろうが、自分はそれらを望まなかった。確かにこの社会では生きにくいだろうが、ひっくるめて自己だと思えば厄介なものではないからだろう。
人見知り、内向的という言葉の枠に押し込めれば説明もしやすい。個性を尊重するといいつつ複数で活動する時に弊害になりそうな個性は歓迎されないし、いつの間にか自分もそれを好んで使うようになってきている。きっと便利だからだと思う。
言葉を発することが苦手な分、文字を綴ることは好きだ。特に誰かに伝えたいわけでもない文字の羅列を綴っている時は心が穏やかになる。自分の中で考えることも好きだ。ひとりで行動することも好きだ。でも、独りはあまり好きではない。
自分という存在について認識し始めて何年も経つが、未だに自己を紹介できるほど理解できていない。いつか理解し切れるといい。
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