【医師×レバレッジETF】基礎編⑨ロールオーバーのリスク

以前に、金融庁から発出されたレバレッジETFに関する文書を紹介しましたが、↓


その中にこのような文言が含まれていました。

一般的にレバレッジ型・インバース型 ETF 等は先物取引コストを負担しているほか、先物取引の期限(限月)を乗り換える際に、リスクが生じることに注意が必要です。

先物取引コスト」は主に金利コストを指していると思われ、これについては当noteでも細かく分析してきました。


では「先物取引の期限を乗り換える際のリスク」とは何でしょうか?

今回はこの部分について簡単に解説したいと思います。


1.先物取引とは

まず「先物取引とは何なのか」
という基本的なことから押さえていきましょう。

先物取引とは、
現時点で取引の価格や数量を決めておき、
実際の取引を将来に行う

方法のことです。

価格が変動する商品の取引において、
将来の不確実性を除去できる
という利点があります。

本来は、農産物の取引において用いられてきた方法で、
事前に価格や数量を決めておくことで、
その年の豊作や不作に関わらず、
安定した取引が可能になったわけです。

この方法が現在では株式に応用されているということですね。

2.限月とは

さて、先物には決済しなければならない期限
が決められています。
これを限月と呼びます。

現時点で価格を決めるわけですから、
実際の取引の期限を定めるのは当然といえば当然ですね。

そして、価格は常に変動するリスクがあるわけですから、
決済までの期限が長い場合、そのリスクを売り手が背負うことになりますので、
基本的には限月が長い先物は割高になります。

限月が短いものほど安く、長いものほど高い状態を「コンタンゴ」と呼びます。

逆に、限月が長い方が安くなってしまう状態は「バックワーデーション」と呼ばれますが、
これは未来の価格がかなり下がると予想されているということですから、異常な状態と言えます。


3.ロールオーバー

ここまでの話はレバレッジETFの運用とどのように関わってくるのでしょうか?

レバレッジETFは基本的に先物を売買することで運用されています。

例えば、2021年初に2021年3月が限月の先物を使って運用しているとします。

期限が来るまでは、この先物を毎日売買しながら運用するだけですが、3月中にはこの先物のポジションを全て解消しなければなりません。

具体的には、
3月が限月の先物を全て売却し、
6月が限月の先物を買い直す

という動きが必要になります。
(※限月は3ヶ月毎とは限りません。あくまで一例です。)

これをロールオーバーと言います。
日本語に訳せば乗り換えということですね。

そして通常はコンタンゴの状態ですから、
3月が限月の先物より、6月が限月の先物の方が割高です。

すなわちロールオーバーの際に、価格差によるコストが発生しており、
その価格差はその時の市場環境によって変わるため、リスクにもなっているということです。

先物を長期保有することは、
この分のコストを余計に支払うことになるため、
基本的には悪手とされています。

レバレッジETFの長期保有も同じ理由で、
余分なコストを支払っているのは紛れもない事実です。


4.まとめ

今回は先物のロールオーバーについて説明しました。

これもレバレッジETFの運用においては避けられない事象です。

先物取引においては基本中の基本と言える内容ですが、
普段、インデックス投資や個別株の取引くらいしかやらないという方には、
あまり馴染みがないかもしれません。

レバレッジETFには、このようなコストやリスクがあるということも頭に入れておくと良いでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?