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【遙か6】幸村・三成と有馬一【遙か7】

※『遙か6』『幻燈ロンド』『遙か7』の感想及び考察です。
※『遙か7』大団円ルートを正史として扱っています。

 さて、遙か6感想で予告していた話をここで。元々7感想の幸村パートに書いていましたが、本編があまりに長かったので分割記事とします。

 関ヶ原の戦いより323年後、大坂夏の陣より308年後の未来・大正時代の帝都。白龍と黒龍の二人の神子と共に禍津迦具土神と戦った義の男がいました。彼は地方の貧しい家庭の出ながらもその姿勢や性格、霊力の高さを買われ、帝都の怨霊討伐を任とする帝国軍直属・精鋭分隊隊長として日々刃を振るっていました。

 男の名を、有馬一

 帝都復興記念祭において二人の神子を守る八葉、その天の青龍に選ばれることとなった23歳の青年です。

 そんな有馬は、どうやら戦国武将や彼らが扱った武器が好きなんだそうです。
 ドラマCD『天地ノ歯車~青龍・白虎~』では4:00~頃からの会話中にこんな話が出てきます。会話相手は地の青龍であるダリウス。鬼の一族の首領です。
 なお、鑑賞したのは【江戸時代の刀剣本に基づいて、戦国大名ゆかりの刀剣や甲冑が展示されている】企画展だそうです。場所は上野。十中八九、帝室博物館(現・東京国立博物館)でしょう。

ダリ:「ねえ……、有馬。君……詳しすぎない? さすがの精鋭分隊とはいえ、兜や甲冑を訓練中に着けたりするわけでもないよね?」
有馬:「っ……! それは……、まあ……。ここに置いてあるのは戦国時代のものだ。名将には憧れがある……」
ダリ:「くくっ……。道理で饒舌になるわけだ」
有馬:「……笑うな!」
ダリ:「失礼。君は……読書をするとは聞いていたけれど、歴史を扱ったものなんかが好みなのかな? ちなみに、好きな武将はいるの?」
有馬:「……真田、幸村……。あと、石田三成などか……」

バラエティCD『遙かなる時空の中で6 幻燈ロンド 天地ノ歯車 ~青龍・白虎~』

 直後ちらっとツッコミどころがあるのですがそれはおいておきます。
 ここで有馬とダリウスの間で語られた有馬の好きな戦国武将こそ、

 ・真田幸村
 ・石田三成

 の二人でした。
 さて。『遙か』シリーズは全て同じ世界の話。つまり、有馬が挙げている幸村と三成とは『遙か7』に登場するこの2人なわけです。

 幸村・五月・大和・兼続ルートを終えた後でこのことについて考えてみると、非常に感慨深いものがあります。

 遙か6・7をプレイ済みの皆様は知っての通りでしょう。遙か異世界の「石田三成」は、異世界生まれではありません。元は高塚梓や里谷村雨(村雨里史)と同じ世界で生まれた「天野三鶴」という名の少年です。それも星の一族。祖父母以前が異世界日本人であり、その血を引いた現代人が再び異世界に行くという流れは梓や有川兄弟と同じですね。
 五月ルートによると、三鶴は本能寺の変の5年前の異世界へと飛ばされ、石田家に拾われたのち、秀吉の小姓となったそうです。佐吉って名乗ってたんだろうか。あと松寿丸時代の長政と交流あったんだろうか。

 三鶴が三成として元服し、関ヶ原の敗戦を経て異世界で死ぬ(恐らく
斬首ではある)くだりは、大団円ルート以外での佐々木大和を思わせます。
 大和は大和ルートでは「物干し竿」を手にし、「佐々木小次郎」を名乗ります。そして、大団円ルート以外のルートにおける大和は一貫して異世界に留まり続けます。個別ルートで唯一現代へ帰還を果たす五月ルートでさえ、大和は異世界に残ります。

 ここで、一度時代を『遙か6』の大正時代へと進めてみましょう。
 梓を追って時空の渦へと巻きこまれた村雨は、黒龍の神子が召喚される3年前、1920年(大正9年)の京へと召喚されます。そして村雨は3年間のうちに異世界の歴史を大まかに学ぶことになります。『6』村雨ルートにおいて村雨は、「細かい部分は違うが大まかな歴史は変わらない」と発言していました。つまり、異世界においても「物干し竿」を振るった「佐々木小次郎」の伝説がある可能性はかなり高いのです。

 ということは、恐らく大和は大団円ルートののち、何かのきっかけを経て再び異世界へ旅立つことになるのでしょう。実家の状況は変わらないでしょうし、父親との喧嘩の後で異世界へ向かうことになりそう。そして「物干し竿」を得て自己剣術「岩流」を打ち立て、巌流島で武蔵と戦うのだと思います。そうであれ(願望)。そしてやはり、三成と同じく異世界で死ぬのだと思います。大和、どのルートでも異世界の方が居心地良さそうだったもんね……。

 話を戻しましょう。

 当然ですが、有馬一という青年にとって真田幸村や石田三成は歴史上有名な武将です。当時の大日本帝国憲法下の歴史の教科書に真田信繁(幸村)の名前があったかは分かりませんが、有馬は恐らく講談や小説などで幸村の活躍を知ったのでしょう。江戸時代にも有名でしたから。

 三成については江戸時代、「徳川家康にたてついた武将」として悪役としての批難を受けていたとのことです。明治時代以降も似た評価が続いていたとか。ということは有馬はそんな描かれ方をされた三成の姿を見てなお、彼を「義」の武将として見ていたということになります。
 余談ですが、三成の心象の悪い部分は五月が語った三鶴像に受け継がれていますよね……。実際異世界で育ちながらもそういう性格は出てたんだろうな。ゲーム内では三十路になってだいぶ落ち着いてましたが、件の兼続ルートで「ぐずな弟」とか言ってましたし。

 現代においてではありますが、真田幸村も石田三成も「義」を貫いた武将として伝わっています。遙か7でも、彼らは最期まで義を貫いた武将でした。

 そもそも天の青龍は、八卦の「巽」の他に八徳の「義」がキャラクター性に取り入れられている人物が多いです。忠義、信義など。3の将臣の攻略メモにも「「仁愛」と「信義」が強いと仲良くなりやすいみたい」ってありますしね。

 遙か6の300年前を描いた遙か7(同世界線)において、異世界の真田幸村も石田三成(天野三鶴)も、最期まで「義」を貫き死んでいったのだと語られました。三鶴についてははっきりとしていませんが、幸村・兼続ルートでは死んでいたこと、五月ルート以外では彼が現代人・天野三鶴である事実は明かされないこと、五月ルートにおいても三鶴は異世界へと戻ってしまうことを考えれば、どのルートを辿ったとしても三鶴は三成として異世界で死ぬ運命なのだと思われます。

 そんな彼らの志を伝え聞き、感銘を受けた有馬一という青年は「義」の男です。家族を、そして民衆を扶けるため帝都へと上京し、軍人となり、精鋭分隊隊長として怨霊を討伐しながらも帝都の民衆を扶け、民衆に愛され慕われる。そういう男です。その彼が天の青龍として選ばれることは運命だったのだと思います。

 有馬が幸村や三成の存在を知ったのがいつだったのか、それはドラマCDでは語られていません。ですが実家が貧しかったことを鑑みるに、恐らく帝都へ上京し軍人としてある程度の稼ぎを得てから知ったのでしょう。有馬が軍人として国や民衆に従事する傍ら、息抜きの中で出会い、その精神の目指すところとなった指標のひとつがこの世界における真田幸村であり、石田三成だったわけです。

 遙か6の感想でも述べましたが、精鋭分隊に属する有馬・秋兵、そして帝国軍へ直訴してまで世を正したいと願った九段、民衆の政治的自立を目指し立ち上がった村雨は、もし龍の宝玉が壊されなかった場合でも八葉に選ばれていたのだと思います。

 そんな有馬一という「義」の男が形作られてゆく過程の中に、同じ「天の青龍」である真田幸村という「義」の男がいる。真田幸村の魂も、地の青龍・天野五月の双子の兄、石田三成(天野三鶴)の魂も、有馬一という後世の天の青龍の青年の中に確かに息づいているのです。

 こんなにも心震える話があるでしょうか。

 というわけで遙か7をプレイ済みで遙か6未プレイの方は今すぐ遙か6を遊んでください。Switchでは幻燈ロンドとセットになったDX版が遊べます。
 そして是非とも『天地ノ歯車~青龍・白虎~』のドラマを聞いてほしいです。よろしくお願いします。

 コーエーテクモゲームス&ルビーパーティーさんへ。いつまでも待っております。夢浮橋2。


 追伸:無双スターズでうっかり無双幸村と共演してた話は知っていますが、そのあたりの設定の齟齬だったりやれライター違い云々とか入れると浪漫がどこかへ去ってしまうのでツッコミなしです。


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