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夏、5歳、のわたし。

私の部屋の扉には、木のネームプレートが掛かっている。それは、5歳の夏に子供会か幼児教室の主催で行ったキャンプで作ったものだ。かまぼこ板を炭で黒くなるまであぶって、それをたくさん磨くと焦げ茶色に鈍く光る木の板になる。そこにカラフルなペンキで、名前や、好きな絵を書いたりして、お土産にしたのだったと思う。
今日、たまたまプレートが裏返っていて、母の字で書かれていた日付と場所が目に入って、私は唐突にその夏の2日間のことを思い出した。

私は、2日間のうち、多分ほとんどの時間を泣いて過ごしていた。母も同行していたから寂しさからではない。

みんなと一緒に外遊びをするのがとても嫌だったからだ。

さすがに行程の詳細はあまり覚えていないが、おそらく、川遊びをしたり虫取りをしたり、キャンプファイヤーをして、カレーも作ったはずだ。
勿論、私にもその時々で、楽しい瞬間や驚いた瞬間はあっただろうと思われるし、これは母の名誉のために添えておくが、無理やり連れて行かれた訳では決してない。
が、25年以上経った今、鮮やかに思い出すのは、森の緑でも川のせせらぎでもない、私がとても嫌だと思っていたこと、そして泣いていたことだ。

思えば、私は幼稚園も嫌だったし、子供会のレクリエーションも嫌だった。
体操教室も行きたくなかった(そしてたまにサボった)。
そうか、「集団で同じ遊びをすること」+「外遊び(体を動かすこと)」だったから、こんなにも嫌だったんだ!!

今までうっすらと、「私ってこういう性格だよな…」と感じたことはあったが、それが幼児の頃から発揮されていたとは。

私は幼少の頃から、とにかく屋内が好きな子どもだった。自分でも覚えていることがあるし、周りにもそう言われる。
とにかく一人で絵本を読んだり絵を描いたり、ボーッとしたり、一人で過ごすことが好きだった。今でもそうだ。趣味と言えるものは、ほとんどが一人で完結するものごとだ。
つまり、キャンプとは対極と言えるだろう。2日間の母の苦労が(四半世紀経った今)偲ばれるというものである。

今まで、この多分に内向的な性格は、中学の時のそこそこ壮絶ないじめが原因だと思っていた節があるけれど、何のことはない、中学時代よりもっともっと前からのことだったんだな。


もう消えてしまっているはずの炭の匂いが鼻先に匂った気がした。


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