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第19回 規定に悩む、規制条例。


 さて、いよいよ条例の醍醐味(なのか?)、規制条例についてです。

 

地方自治法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000067

 

第十四条 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
② 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
③ 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000067

 

第14条第2項にあるとおり、義務を課し、又は権利を制限するために、条例を制定することとなります。

 

さて、最近報道でも出てきて、また、法制化の動きにもなったボーガン(クロスボウ)規制条例です。

 

ボーガンの安全な使用及び適正な管理の確保に関する条例(兵庫県)

https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrJbF01/init?jctcd=8A85CFF43A&houcd=H502901010032&no=1&totalCount=2&fromJsp=SrMj

 

 (定義)
第2条 この条例において「ボーガン」とは、弦を引いた状態に保持し、かつ、矢を装填する装置を備え、引き金を引くことにより当該矢を発射させることができる弓であって、当該引いた状態に保持された弦にかかる重量(以下「弦の引き重量」という。)が30ポンド以上のものをいう。

https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrJbF01/init?jctcd=8A85CFF43A&houcd=H502901010032&no=1&totalCount=2&fromJsp=SrMj

 

規制の対象となる物や行為などは、明確に定義される性質のものです。この規制対象となる物の性質上致し方ないところではあると思いますが、条例でヤードポンド法を用いている例があるのだなとびっくりした次第です。

 

当然のことながら、今まで所持していた人にも規制は及ぶわけですが、届出期間を設ける経過措置がついています。

 

   附 則
 (経過措置)
2 前項ただし書に規定する規定の施行の際現にボーガンを所有している者は、同項ただし書に規定する規定の施行の日から30日以内に、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を知事に届け出なければならない。ただし、ボーガンを販売等の目的で所有している場合は、この限りでない。

 

国においても、クロスボウ規制のために検討が進められ、

 

クロスボウの所持等の規制の在り方について(警察庁)

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/03_shiryou01.pdf

 

ボウガンの名称を「クロスボウ」と規定し、令和3年6月16日に銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律が公布され、令和4年3月15日から施行されることとなっています。

 

クロスボウの所持が禁止されます!(警察庁)

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/crossbow/index.html

 

安全を守るという保護法益での規制条例、続いては、プレジャーボート・水上バイクの規制条例です。

水上バイクの規制については、都道府県レベル(公安委員会)で制定されていることが一般的なようです。

 

東京都水上安全条例

https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00004929.html

 

七 小型船舶 船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和二十六年法律第百四十九号)第二条第四項の小型船舶をいう。
八 プレジャーボート 小型船舶のうち、水上オートバイ、ヨット、モーターボートその他の動力船(推進機関を有する船舶をいう。)であって、専らレクリエーションその他の余暇を利用して行う活動の用に供されるものをいう。

https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00004929.html

 

この条例には、

 

 (酒気帯び操縦の禁止)
第十二条 何人も、水上において、酒気を帯びて小型船舶を操縦してはならない。
 (罰則)
第二十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 一 第十二条の規定に違反して小型船舶を操縦した者で、その操縦をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な操縦ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの
3 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
 一 第十二条の規定に違反して小型船舶を操縦した者で、その操縦をした場合において身体に公安委員会規則で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったもの

https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00004929.html

 

というように、酒気帯び操縦には罰則規定があります。

船舶職員及び小型船舶操縦者法は行政罰のみということだそうで、刑事罰は条例での規定となっています。

この条例に基づいて、摘発された事例があるとのことです。

 

ボート酒気帯び操縦疑いで初摘発、都水上安全条例違反(産経新聞)

https://www.sankei.com/affairs/amp/190604/afr1906040029-a.html


「水上バイクなどによる迷惑行為が相次いだことを背景に、危険な操縦などを禁止した都条例が昨年7月に施行され、酒気帯び操縦での摘発は初。」

https://www.sankei.com/affairs/amp/190604/afr1906040029-a.html

 

兵庫県でも類似の条例がありますが、

 

水難事故等の防止に関する条例(兵庫県)

https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrJbF01/init?jctcd=8A85CFF43A&houcd=H407901010008&no=1&totalCount=10&fromJsp=SrMj

 

 (プレジャーボートの操船に係る禁止行為等)
第15条 プレジャーボート操船者は、海域等利用者にプレジャーボートを接近させる等により、海域等利用者に危険を及ぼす行為をしてはならない。
2 プレジャーボート操船者(プレジャーボート操船者が死傷し、又は行方不明になったときは、同乗者)は、そのプレジャーボートの操船により、人の死傷、行方不明又は物の損壊に係る水難事故等を起こしたときは、直ちに負傷者を救護する等必要な措置を講じなければならない。ただし、当該プレジャーボートに急迫した危険があるときは、この限りでない。
第23条 次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
 (1) 第15条第1項の規定に違反した者
 (2) 第19条第1項の規定による警察官の命令に従わなかった者

https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrJbF01/init?jctcd=8A85CFF43A&houcd=H407901010008&no=1&totalCount=10&fromJsp=SrMj

 

危険操縦行為に対して20万円以下の罰金となっています。これに対して、明石市長が怒っています。

 

記者会見 2021年(令和3年)8月6日(明石市)

https://www.city.akashi.lg.jp/seisaku/kouhou_ka/shise/shicho/kaiken/20210806.html

 

「水上バイクの危険行為は、大変危険であります。そういった観点から、今日の時点で5点についてご説明申し上げたいと思います。まず何をおいても、水上バイクの危険行為につきましては許されない行為であるということは当然のことであります。この点について、すでに報道されている案件につきましては、明石市としては刑事告発をしたいと考えております。罪名につきましては、少なくとも兵庫県条例の危険行為違反に当たることは明らかでありますが、それに加えて弁護士職員などで協議を重ねましたが、当該行為は殺人未遂に当たるという判断から、殺人未遂罪での告発を考えています。」
「特に県条例の場合、罰金20万円程度の罪であります。言葉を言い換えれば、最大で20万円払えば終わる程度の罪の問題ではないと、人を死に至らしめる危ない行為だからこそ緊急対策が必要だという観点でありますので、このように理解をしています。」
「このテーマは明石市として出来ることはあれもこれもやっていく認識でありますが、基本的に海につきましては国であります。国の海上保安庁を中心に、しっかりとこのテーマについて対策をとっていただかないといけないと思っていますので、海上保安庁をはじめ国の方にも働きかけをするのに加え、県条例も罰金刑20万円が上限ではあまりにも軽すぎますので、県条例の改正も含めて新しい兵庫県知事にもこのテーマについて、明石市長としてしっかり申し入れをしていきたいと考えているところであります。」

https://www.city.akashi.lg.jp/seisaku/kouhou_ka/shise/shicho/kaiken/20210806.html

 

自動車と船舶の罰則の均衡や、条例の守備範囲など、このあとの展開が気になるところではあります。

 

次回に続きます。

ご意見ご感想お待ちしています。

画像の出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:MuseeMarine-sabreOfficer-p1000451.jpg  (CC BY-SA 3.0 FR)

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