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第8回 教育委員会の職務権限(4)

同じテーマでの連載となりました。例規成分がありませんが、もう少しお付き合いください。
次は、社会教育に関することです。
平成30年3月2日、中教審への諮問がされました。

人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(諮問)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1402865.htm

その際,特に博物館については,「平成29 年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成29 年12 月26 日閣議決定)において,「公立博物館については,まちづくり行政,観光行政等の他の行政分野との一体的な取組をより一層推進するため,地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすることについて検討し,平成30 年中に結論を得る。」とされていることも踏まえ御検討くださるよう,お願いします。

ということで、「平成29 年の地方からの提案」を見てみましょう。
平成29年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/tb_29_kohyou_10_1_mext.pdf

一つ目に、前回採り上げた文化財が出てきますが、資料の5ページ目に、「公立博物館の所管を地方公共団体の首長とすることの容認」という提案が北海道からされています。群馬県、三重県からも支障事例が出されており、

○県内の一部の自治体では、博物館の所管を首長部局に移管したために、登録博物館から博物館相当施設に変更した事例があり、博物館の趣旨を生かせる制度改正が望まれる。
○本県においては、条例・規則の改廃及び博物館協議会委員の任免等については教育委員会が行い、それ以外の事務は事務委任により環境生活部が行っている状況にある。提案のとおり法改正されれば、一連の事務が一つの部局で執行可能となり、地域の実情に応じて所管部局を決定できることから賛同できる。

「お、おおう。」(やる前から分かっていなかったのか)という感じなんですが、これを受けて、中教審の生涯学習分科会において審議がされ、平成30年12月21日、中教審から答申が出されました。

人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申)
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2018/12/21/1412080_1_1.pdf

○ 施設の運営の面についても、様々な分野の施設が複合した形で設置されている場合に、その所管を一元化することで、当該複合施設の運営がより効率的に行える可能性がある。
○ 以上の検討を踏まえ、社会教育に関する事務については今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきであるが、公立社会教育施設の所管については、当該地方の実情等を踏まえ、当該地方にとってより効果的と判断される場合には、地方公共団体の判断により地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することができることとする特例を設けることについて、「2.」で述べたような社会教育の適切な実施の確保に関する担保措置が講じられることを条件に、可とすべきと考える。
○ 本件特例により、地方公共団体の長が担当することとなる事務には、公立社会教育施設の設置とその運営に関する事務(例:規則の策定、各種事業の実施、職員の任命、審議会等の設置・委員の委嘱、運営状況の評価・情報提供等)が含まれることになるものと考えられる。

ソフト部分については、引き続き教育委員会で行うが、ハードなどの部分については、地域によっては、社会教育施設と他の公共施設との複合化が進んでいるというのもあり、首長部局でやることも容認するという趣旨となっています。

また、「地方公共団体において特例措置を活用する場合に留意が求められる点」として、

(教育行政としての一体性・専門性の確保)
○ 公立社会教育施設における事務は、地方の社会教育行政の重要な柱となるものであり、地方公共団体の判断により地方公共団体の長がこれを所管することとなる場合においても、社会教育施設としての専門性を発揮することはもちろん、公立社会教育施設に関する事務以外の社会教育に関する事務との一体性を保ち、さらには、学校教育とも強固に連携しながら進めることが重要である。このため、本件特例を活用する場合においても、教育委員会には、総合教育会議等を積極的に活用しながら、首長部局やNPO等の多様な主体との連携・調整を行い、社会教育の振興のけん引役としての積極的な役割を果たしていくことが求められる。さらに、地方公共団体の長の策定する、当該地方公共団体の地域活性化プランや観光振興計画等においては、公立社会教育施設に関する事項はもとより、広く社会教育、学校教育との連携等についても留意した記載を行うなど、相互の連携に基づく総合的な行政が進められることが重要と考える。

引き続き、教育委員会の関与など一定の担保措置は求められたところです。

これらを受け、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和元年法律第26号)(第9次地方分権一括法)が令和元年5月31日に成立し、令和元年6月7日に公布されました。

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第9次地方分権一括法)の概要
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/09ikkatsu-gaiyoukouhu.pdf

これだと、細かいところまでは記載されていないので、文部科学省関係のものを見てみましょう。

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(社会教育関係抜粋)(概要)https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/07/1417790_1.pdf

ここで、一定の担保措置として、次の事項が定められました。

・地方公共団体の長がその所管する公立社会教育機関の管理運営に関する規則の制定を行う際には、教育委員会に協議するものとする。(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第3項関係)
・移管される公立社会教育機関に関する事務のうち、教育委員会が所管する学校、公立社会教育機関等における教育活動と密接な関連を有するものとして、規則で定めるものの実施に当たっては、あらかじめ地方公共団体の長が教育委員会の意見を聴く。(社会教育法第8条の2関係)
・教育委員会は、必要と認めるときは、公立社会教育機関に関する事務について地方公共団体の長に対して意見を述べられることとする。(社会教育法第8条の3関係)

例としては、
松江市教育委員会会議議案件一覧
http://www1.city.matsue.shimane.jp/kyouiku/kyouikuiinkai/r01kaiginaiyou.data/R01kaiginaiyou19.pdf
の、令和2年2月19日の議第40号に、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第3項の規定に基づく特定社会教育機関に係る規則を定めることについて」という案件が出ています。

では今までのスポーツ、文化では、教育委員会の関与はないのか、という話ですが、

スポーツ基本法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC1000000078

 (地方スポーツ推進計画)
第十条 都道府県及び市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十三条第一項の条例の定めるところによりその長がスポーツに関する事務(学校における体育に関する事務を除く。)を管理し、及び執行することとされた地方公共団体(以下「特定地方公共団体」という。)にあっては、その長)は、スポーツ基本計画を参酌して、その地方の実情に即したスポーツの推進に関する計画(以下「地方スポーツ推進計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 特定地方公共団体の長が地方スポーツ推進計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該特定地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならない。

スポーツ推進計画を定める際には、教育委員会会議の議案となります。また、

文化芸術基本法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413AC1000000148

 (地方文化芸術推進基本計画)
第七条の二 都道府県及び市(特別区を含む。第三十七条において同じ。)町村の教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十三条第一項の条例の定めるところによりその長が同項第三号に掲げる事務を管理し、及び執行することとされた地方公共団体(次項において「特定地方公共団体」という。)にあっては、その長)は、文化芸術推進基本計画を参酌して、その地方の実情に即した文化芸術の推進に関する計画(次項及び第三十七条において「地方文化芸術推進基本計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 特定地方公共団体の長が地方文化芸術推進基本計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該特定地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならない。

地方文化芸術推進基本計画を定める際には、教育委員会会議の議案となります。

次回は、教育委員会と首長部局の手続きについて書きたいと思います。
ご意見、ご感想お待ちしています。

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